安定したニーズがあることから多くの人が目指すようになったのが介護業界です。
比較的簡単に就職できるほか、実務経験を積んで資格を取得すればキャリアアップできるというメリットも。
そんな介護業界ですが、実際にやってみるとかなりの重労働です。とくに訪問入浴介護職員は見た目以上にハードであり、その内容を知った上で目指すべきです。
そこでこの記事では、訪問入浴とはどんなサービスで、訪問入浴介護職員はどんな点に苦労するのかということをご説明していきます。
また「そのほかの介護士の仕事」について詳しく知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
訪問入浴とは
訪問入浴とは、要介護者本人が自力での入浴が困難であったり、家族のサポートだけでは入浴が難しい場合に、看護師1名を含めた3名(または2名)の訪問入浴介護職員が自宅に訪問し、専用の浴槽を使って入浴をサポートする介護サービスです。
一般的な入浴に近いものを「全身浴」といい、全身浴ができない人を対象にシャワーなどで体の一部をお湯につけることを「部分浴」といいます。
*主治医が要介護者の状態が安定していると判断した場合は介護士のみで訪問する場合もあります。
具体的な対象者としては要介護(1〜5)認定を受けていてなおかつ医師から入浴を許可されている人。
たとえば、
- 寝たきりで自力での入浴が困難な人
- 家族のサポートだけでは入浴が困難な人
- 体調の変化が激しい人
などが訪問入浴のサービスを受けます。
なお、訪問入浴とは別に要支援(1〜2)の人を対象とした「介護予防訪問入浴介護」というものもあります。
訪問入浴担当の1日のスケジュール
事業所において訪問入浴を担当する訪問入浴介護職員は以下のようなスケジュールで業務を行います。
08:30 | 出勤:事務所にて1日の予定を確認。ミーティングを行った後、装備を整えて訪問入浴車で出発 |
09:00 | 1件目の訪問先に到着 |
10:00 | 1件目の訪問入浴を終えて2件目へ移動 |
10:30 | 2件目の訪問先に到着 |
11:30 | 2件目の訪問を終えて3件目へ移動 |
12:00 | 3件目の訪問先に到着 |
13:00 | 3件目の訪問を終えて昼食 |
14:30 | 4件目の訪問先に到着 |
15:30 | 4件目の訪問を終えて5件目へ移動 |
16:00 | 5件目の訪問先に到着 |
17:00 | 5件目の訪問を終えて6件目へ移動 |
18:00 | 6件目の訪問を終えて事業所へ |
18:30 | 業務日報を提出して業務終了 |
予約状況や訪問先までの距離によりますが、1日に6件前後の訪問を行うのが一般的です。
受けた予約はきっちりこなさなければなりませんから、一箇所でモタモタしている余裕はありません。かと言って手抜きをするわけにはいかず、手早さが求められる仕事といえます。
訪問入浴介護職員の待遇
訪問入浴介護職員の雇用形態は正社員からアルバイト、派遣社員と様々です。とはいえ、一番多いのはアルバイト契約の訪問入浴介護職員。
その場合、日給制となることがほとんどで1日あたり9,000~10,000円ほどの収入です。
また、「1訪問1,200円」といったように、訪問単価と件数で収入が決まる事業所もあります。
休みに関してはアルバイトならある程度自由に設定できます。ただし、繫忙期は通常の1.5倍ほどの訪問入浴をこなすこともあり残業も発生。
日給制だと残業手当が付かないこともあるので、入社時にはこの点をしっかり確認しなければなりません。
訪問入浴介護職員の求人
訪問入浴介護職員の求人はわりとたくさん出ています。
どの事業所も人手不足なので採用のハードルは低いのが実情。就業に必要な書類が揃っていれば面接の翌日から研修スタートとなることも珍しくはありません。
このように簡単に入社できる訪問入浴介護職員ですが、ほとんどの事業所が社会保険に加入しており、正社員じゃなくても希望すれば社会保険証がもらえます。
国民健康保険と違って社会保険は保険料の半額を事業所が負担してくれますから、それによる金銭的なメリットは大きいといえるでしょう。
訪問入浴業務の内容
訪問入浴の手順は以下の通りです。
- 要介護者の家族がケアマネジャーに相談し、作成されたケアプランをもとに訪問入浴サービスの契約を行う
- 訪問入浴当日、看護師1名・訪問入浴介護職員2名の計3名が訪問入浴専用の浴槽を乗せた訪問入浴車で訪問する
- 浴槽を利用者宅に運び入れ訪問入浴の準備をする
- 看護師が健康チェック(血圧・脈拍・体温など)を行い要介護者が入浴可能な状態かどうかを確認する
- 要介護者の健康状態に問題がなければ訪問入浴介護職員がお湯の準備を行い同時に脱衣させる
- 要介護者をベッドから浴槽にうつし全身または一部分を洗う
- 入浴の仕上げとしてシャワーで汚れを落とす
- 要介護者の体を拭いて浴槽からベッドにうつす
- 着を着せた後、看護師が健康チェックを行う
- 使用した浴槽などを片付ける
*事業所によっては入浴後に「保湿ケア」「爪切り」「シーツ交換」などのサービスを行うことがあります。
上記の1~10までを40~60分ほどで終わらせるのが一般的。
予約状況によってはこの作業を1日中繰り返すことになるのでかなりの重労働といえます。
訪問入浴で苦労する点
訪問入浴とはいわばお風呂にいれてあげる作業。
看護師1人と訪問入浴介護職員2人で行うため楽な作業だと思われるかもしれませんが、実際にやってみると非常に骨が折れます。
具体的に何が大変なのか、以下でそのポイントを示します。
大変な点1:脱衣と着衣
要介護者のほとんどは自力での起き上がりが不可能。
つまり寝たきりか車椅子の状態なわけで、衣服の着脱に際しては要介護者の体重を支えたり抱きかかえたりしなければなりません。
ここで問題なのは要介護者側は体に力が入らず、捕まったり自らの姿勢を維持したりできないこと。
この状態の人間を持ち上げるのは実際の体重以上に重く感じられ、支える場所を間違うと力自慢の男性の訪問入浴介護職員であっても苦労します。
なおかつ本来の目的である脱衣・着衣を行うわけで、3人で作業を行っても人手が足りないくらいです。
実務をこなしていくなかで徐々に要介護者の体を支えるコツが分かってきますが、それでもかなりの力が必要なことは間違いありません。
大変な点2:体を洗う
要介護者の体を洗うのも大変な作業です。
衣服の着脱ほど力は要りませんが、体を洗っている間訪問入浴介護職員は中腰の姿勢になることが多く、それが1日に複数人ともなると夕方にはかなりの疲労感が。
翌日には背中と腰に強いハリを感じるほどで、慢性的な腰痛に悩まされる訪問入浴介護職員は大勢います。
また、部分浴だったり要介護者の体に床擦れがあったりすると濡らしてはいけない部分が発生するため、無理な体勢で体を洗うことになります。
これも疲労感を増やす原因であり、最初のうちは体の様々な部分が筋肉痛になることでしょう。
大変な点3:嫌な顔を見せてはいけない
サービスを提供する者として要介護者やその家族の前で嫌を顔を見せてはいけません。
とくに要介護者本人は「色々とやってもらって申し訳ない」と感じていますから、訪問入浴介護職員が嫌な顔をしていたら大変傷つきます。
なのでどんな状態であっても「大丈夫ですよ」と明るい表情を保たなければならないのですが…
実際には排泄物の臭いがしたり汚物の処理を任されたりすることも。
また、要介護者の機嫌が悪く文句を言われることもあるので、「常に笑顔」という強い気持ちを持っていないと萎えてしまいます。
訪問入浴介護職員のやりがい
業務として疲労度の高い訪問入浴ですが、それに見合うだけのやりがいもあります。
「やりがいを感じられることが何より幸せ」という人は多く、そこに価値を見出せる人であれば訪問入浴介護職員として立派に勤め上げることができるはず。
以下でそのやりがいをご紹介します。
要介護者の気持ち良さそうな顔を見られる
入浴するというのは年齢性別を問わず大変気持ちの良いものです。要介護者も本来であれば毎日入浴したいのでしょうが、金銭的な事情もあり数日に1回しか訪問入浴サービスを受けられない人も。
そんな要介護者にとって訪問入浴は至福の時間といえます。
なかには「食事と入浴が楽しみ」という要介護者もいるくらいで、訪問入浴中の表情はとても気持ち良さそう。赤ちゃんの笑顔にも似た愛らしさがあり、お世話をする側としては何よりの励みとなります。
介護業界を目指す人は福祉の精神に溢れているはずなので、その気持ち良さそうな表情をみれば「やって良かった」と思えることでしょう。
家族から感謝される
訪問入浴の申し込みがあるということは家族による入浴介助が上手に出来ていないということです。人間、自分ができないことを他人にやってもらえると感謝の気持ちが強く表れるもの。
訪問入浴が終わったときには同居家族から「助かりました。ありがとうございました」と大変感謝されます。
「ありがとう」という言葉自体は日常生活でよく耳にしますが、この時の「ありがとう」は重みが違います。明らかに心がこもっており、「頼りにされている」と実感できるのです。
これほど心のこもった「ありがとう」を聞ける職業はそうはありませんから、「訪問入浴介護職員になって良かった」と感じられることでしょう。
毎日の労働に充実感がある
お伝えした通り、訪問入浴とは自らの体を使って行う作業です。
1日の業務を終えたときはクタクタなわけですが、体を動かす労働にはデスクワークにはない爽快感があります。
「今日も一日頑張った」と毎晩実感できますし、頑張っているからこそ次の休日が楽しみにもなります。帰宅後に「充実感のなかで飲むビールは最高」と晩酌を満喫する人もいることでしょう。
この感覚こそ自らが精一杯生きている証といえます。
訪問入浴介護職員におすすめの就活サイト
訪問入浴介護職員の求人を探すには介護業界専門の就活・転職サイトを使うのがおすすめです。
ご紹介した通り求人の案件数は豊富にありますから後は条件の良い事業所を探すだけ。そのため情報量の多い就活・転職サイトを使うべきです。
以下でその代表的なものを紹介するので、どこに登録するか迷ったときはぜひ登録してみてください。
きらケア:レバレジーズメディカルケア株式会
いくら受かりやすい訪問入浴介護職員とはいえ、条件の良い事業所は競争倍率が高くなります。そのため面接対策をきっちりやることが肝心。
そんな面接対策をしっかり行ってくれるのがきらケアです。
きらケアでは実際の面接に立ち会ってくれるので事業所が行う質問の傾向を把握しています。そのため面接対策が非常に的確で予習はバッチリ。
少々競争倍率が高くてもきらケア経由なら十分に受かることでしょう。
介護レポ:株式会社repo
介護レポは応募先の情報を詳しく教えてくれる転職サイトです。
職場の雰囲気や人間関係、教育体制、資格取得支援制度など、面接の場では聞きにくいことが事前に分かります。
就活・転職に不慣れな人だと入社してから「こんなはずじゃなかった」「これを聞いてなかった」などという状況になりがち。
その点、介護レポは雇用者と労働者の関係性を重視しているので、良い情報も悪い情報も正直に教えてくれますよ。
*引用元:https://www.repo.co.jp/kaigolp/
マイナビ介護:株式会社マイナビ
就活・転職サイトの大手といえばマイナビです。
その系列であるマイナビ介護には5万件以上もの求人案件が常時掲載されており、応募先に困ることはありません。
応募側は給料や勤務形態、勤務地などを見比べながら自分にとってベストな事業所を選べます。また、キャリアアドバイザーにキャリアプランや給料のことを相談できるので、介護業界に詳しくなくても安心して活動できます。
*引用元:https://kaigoshoku.mynavi.jp/
重労働だがやりがいのある訪問入浴介護職員
この記事では、訪問入浴介護職員の仕事内容とやりがいについてご紹介しました。訪問入浴とは辛い仕事でありくじけそうになることも多いでしょう。
しかしながら、要介護者やその家族から発せられる感謝の言葉・表情は大きなやりがいといえます。
また、ご紹介した就活・転職サイトを使えば比較的待遇の良い事業所を見つけることも可能ですので、「介護業界の最前線でやりがいを感じながら働きたい」という人は目指してみてはいかがでしょうか。