喀痰吸引等研修は対象者、実施可能行為によって受ける研修が変ってくることを知っていますか?
この記事では、「喀痰吸引等研修」について徹底解説していきます。
結論、あなたの勤務先の仕事内容によって喀痰吸引等研修を選ぶことが重要です。
喀痰吸引等研修を受講するか検討している方に向けて、研修内容や身に付くスキル、知識、メリットなどを調査しまとめましたので、是非見て頂ければと思います。
その他にも、研修を受ける際の申込方法、費用、注意点についても説明していきたいと思いますので、ぜひ喀痰吸引等研修を受講する際の参考にしていただければ幸いです。
また「他の介護資格」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
喀痰吸引等研修とは?
喀痰吸引研修とはどんな資格で、資格を持っていることで介護職の中でどのように役立つのでしょうか。身に着く知識やスキル、資格を取得するメリットをご紹介します。
- 喀痰吸引とは
- 喀痰吸引の資格保有者が身に着く知識・スキル
- 喀痰吸引資格を取得するメリット
喀痰吸引とは
喀痰吸引とはたんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)及び経管栄養(胃ろう、腸ろう、警備経管栄養)などの医療行為をすることです。
たんの吸引 | たん、唾液、鼻汁を機械で吸引すること。 |
経管栄養 | チューブやカテーテルを使って胃や腸に栄養を直接注入すること。 |
こちらの2つは医療的ケアに含まれます。
喀痰吸引は医師法により医師・看護師のみが行うことができるようになっていましたが、2015年に社会福祉士及び介護福祉士法が改正されたため、介護職員が喀痰吸引等研修を修了し実施できるようになりました。介護職員が喀痰吸引を行うには利用者、その家族の同意、医師や看護師、医療者の監督の基でしか行う必要があります。
現代において、介護現場で痰の吸引などの治療が必要な要介護者が増加しているため、医療行為の知識がある喀痰吸引等研修修了者の需要が高まっています。
喀痰吸引の資格保有者が身に着く知識・スキル
喀痰吸引等研修を受け資格を持つと、自力で痰を出すことができなくて職員による痰吸引が必要な人、口から食事ができず経管栄養により栄養をとる必要がある人を支えるスキルを修得します。
喀痰吸引等研修は医療行為を行う対象者によって研修内容が変わり、受ける研修も変わってきます。そのため、対象者に合わせて必要な研修を受けるということを覚えておきましょう。
喀痰吸引資格を取得するメリット
喀痰吸引は介護の域を超えて、医療の分野のスキルです。介護職員としてスキルアップしたい人、介護の域を超えて仕事ができるようになりたい人におすすめです。研修が修了すると、喀痰吸引や経管栄養が必要な利用者を対応することができるようになるため、多くの職場や場面で必要とされています。職場によっては資格手当を支給している所もあるため給料アップにも繋がります。
取得するメリットとしては以下6つあります。
- 活躍の場が広がる
- 現場から求められる介護職員になれる
- 実践的な技術が身に付く
- 職場によっては特別手当がある
- 医療的ケアができるようになる
- 介護福祉士からのキャリアアップになる
「痰の吸引」や「経管栄養」は医療行為です。喀痰吸引等研修では講義・演習・実地研修で「痰の吸引」、「経管栄養」の知識・技術を学びます。そして、現場で実際に使われる機材を使用した演習や施設での実地研修を受けることで実践的な技術を身に付けることができます。これにより幅広い利用者に対応できるようになり、現場で必要とされる存在になったり、介護職員としてのスキルアップにも繋がります。
活躍の場が広がる
喀痰吸引研修の修了認定を受けると、施設や居宅などで喀痰吸引や経管栄養を行うことができるようになります。介護士としてできることが増えるため、より必要とされます。
活躍フィールドとして、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・障害者福祉施設・訪問介護事業所があります。
高齢者介護に携わる際に取得しておきたい資格についてはこちらに詳しく解説しています。
実践的な技術が身に付く
喀痰吸引等研修では、講義・演習・実地研修でたんの吸引、経管栄養の知識や技術を学びます。現場で実際に使用される機材を使用した演習や施設での実地研修を行うため、実践的な技術が身に付きます。
介護資格のおすすめの資格、難易度についてこちらで詳しく解説しています。
資格手当がある場合がある
職場の制度によって変わってきますが、修了認定を受けていると資格手当として給料アップする可能性があります。喀痰吸引研修は一般的にも認知されている資格の1つだから、資格の重要性は今後上がっていくと言えます。
勤務先によって異なりますが、平均で5千円から1万円くらいの資格手当が期待できるでしょう。
医療的ケアができるようになる
喀痰吸引研修を受けると、介護業務だけでなく医療ケアも対応できるようになります。介護士として介護の仕事だけでなく医療の仕事もできるため、貴重な存在です。
介護福祉士からのキャリアアップになる
介護福祉士を取得すると、キャリアアップできる資格が少ないため、勉強や介護の仕事に対してのモチベーションが上がりにくい傾向があります。
それに対し、喀痰吸引等研修は介護現場の中でも実践的で役に立つ資格だから、今後の介護業界でも必要になる資格といえるでしょう。
介護職の給料についてはこちらで詳しく解説しています。
喀痰吸引資格を取得するには?
喀痰吸引資格は、研修を受けかつ研修を修了したという認定申請をしなければ喀痰吸引等研修を修了したと言えません。
- 研修内容
- 申請方法
についてご紹介します。
研修を受ける
喀痰吸引の資格を取得するためには喀痰吸引研修を修了しなければいけません。喀痰吸引研修とは喀痰吸引を行うことができる介護職員を養成するための研修です。この研修は基本研修と実施研修がセットで1号から3号の3つに分けられており、実施する行為や行う対象者によって受講する研修の種類が変わってきます。
各研修を受けると、以下のことができます。
研修 | できること |
第1号研修 | 不特定多数の人に対し、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)を実施できる |
第2号研修 | 不特定多数の人に対し、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内)と経管栄養(胃ろう・腸ろう)を実施できる |
第3号研修 | 特定の人に対して喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)から必要なケアを学び、実施できる |
第1号研修は1回受けていれば、全ての利用者や対象者に処置をすることができます。
第2号研修は処置が限定されますが、不特定多数の人に処置をする機会がある人は受講をおすすめします。
第3号研修は不特定多数の人に処置をする必要がなく、特定の人に喀痰吸引や経管栄養をする人におすすめです。
介護福祉士の資格は2015年から取得するのに医療ケアを学ぶことが必須条件になりました。その時に喀痰吸引についても学ぶため、2015年以降に介護福祉士の資格を取得した人は、実施研修を受講することで喀痰吸引を行うことができるようになります。
認定申請方法事
喀痰吸引研修を修了し、認定申請をしなければ喀痰吸引や経管栄養をすることはできません。認定特定行為業務従事者の申請を、住民票を置いている地域の公益財団法人等で行う必要があります。
申請に必要な書類として、
- 新規で登録する場合
- 登録情報を変更する場合
- 再交付申請をする場合
の3つに分けてご紹介します。
必要書類 | |
新規で登録申請をする場合 | ・交付申請書 ・住民票の写し(コピー不可) ・研修修了証明書 ・申請者が法附則第4条の第3号に該当しないことを誓約する書面 |
登録情報を変更する場合 | ・変更届出書 ・住民票など住所がわかる書類 ・認定特定行為業務従業者認定証(原本) |
再交付申請をする場合 | ・再交付申請書 ・認定特定行為業務従事者認定証の原本(紛失時は不要) |
喀痰吸引等研修について
喀痰吸引等研修について以下に分けて解説していきます。喀痰吸引研修は受講条件はありません。また、第1∼3号に分けられており対象者や実施可能行為によって受ける研修が異なります。他受講する前に知っておいた方が良いことを解説するので、参考にしてみてください。
- 資格取得条件・受験資格
- 基本研修(講義)
- 基本研修(演習)
- 実地研修
- 喀痰吸引等研修1号
- 喀痰吸引等研修2号
- 喀痰吸引等研修3号
- 申込方法
- 費用
- 注意点
喀痰吸引等研修の取得条件・受験資格
喀痰吸引研修の資格取得において学歴や経験などの受講資格はありません。そのため未経験でも受講可能です。しかし、研修実施期間によって特定の資格を取得していれば、一部研修が免除になることもあるため、詳細については各実施機関に問い合わせてみましょう。
基本研修(講義)
喀痰吸引等研修は基本研修と実地研修に分かれています。基本研修でも講義と演習に分けられています。基本研修の講義について以下にまとめました。
【基本研修(講義)】
講義項目 | 講義時間数 |
人間と社会 | 1.5 |
保健医療制度とチーム医療 | 2 |
安全な療養生活 | 4 |
清潔保持と感染予防 | 2.5 |
健康状態の把握 | 3 |
高齢者及び障害児・障害者の喀痰吸引概論 | 11 |
高齢者及び障害児・障害者の喀痰吸引概論実施手順解説 | 8 |
高齢者及び障害児・障害者の経管栄養概論 | 10 |
高齢者及び障害児・障害者の経管栄養概論実施手順解説 | 8 |
筆記試験 | 1 |
合計 | 50 |
基本研修(演習)
演習の項目、演習実施回数は以下の通りです。
演習項目 | 演習実施回数 |
喀痰吸引・口腔内 | 5回以上 |
喀痰吸引・鼻腔内 | 5回以上 |
喀痰吸引・気管カニューレ内部 | 5回以上 |
経管栄養・胃ろう又は腸ろう | 5回以上 |
経管栄養・経鼻経管栄養 | 5回以上 |
救急蘇生法 | 1回以上 |
演習回数の上限は決められておらず、指導員の許可がでたらクリアという形になっています。
実地研修
「たんの吸引等」の処置をするためには実地研修の修了が必要です。内容は以下5項目となっており各項目で最低回数も決められています。
- 口腔内の喀痰吸引
- 鼻腔内の喀痰吸引
- 気管カニューレの喀痰吸引
- 胃ろう又は腸ろうの経管栄養
- 経鼻の経管栄養
実施回数は以下にまとめました。
研修項目 | 研修実施回数 |
喀痰吸引・口腔内 | 10回以上 |
喀痰吸引・鼻腔内 | 20回以上 |
喀痰吸引・気管カニューレ内部 | 20回以上 |
経管栄養・胃ろう又は腸ろう | 20回以上 |
経管栄養・経鼻 | 20回以上 |
喀痰吸引等研修1号
研修内容は、基本研修として講義50時間、各行為のシミュレーター演習があり、基本研修を終えると実地研修を行います。
喀痰吸引等第1号で実施可能な行為は以下2つです。
- 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)
- 経管栄養(胃ろう又は腸ろう・経鼻)
対象者は不特定多数の利用者と幅が広いです。
第1号で学習する内容や受講時間数などについては以下にまとめました。
学習内容 | 時間数あるいは回数 | |||
基本研修 | 講義 | 人間と社会 | 1.5時間 | 50時間 |
保健医療制度とチーム医療 | 2時間 | |||
安全な療養生活 | 4時間 | |||
清潔保持と感染予防 | 2.5時間 | |||
健康状態の把握 | 3時間 | |||
高齢者及び障害児・障害者の喀痰吸引概論 | 11時間 | |||
高齢者及び障害児・障害者の喀痰吸引実施手順解説 | 8時間 | |||
高齢者及び障害児・障害者の経管栄養概論 | 10時間 | |||
高齢者及び障害児・障害者の経管栄養実施手順解説 | 8時間 | |||
演習 | 口腔内の喀痰吸引 | 5回以上 | ||
鼻腔内の喀痰吸引 | 5回以上 | |||
気管カニューレ内部の喀痰吸引 | 5回以上 | |||
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養 | 5回以上 | |||
経緯経管栄養 | 5回以上 | |||
救急蘇生法 | 1回以上 | |||
実地研修 | 口腔内の喀痰吸引 | 10回以上 | ||
鼻腔内の喀痰吸引 | 20回以上 | |||
気管カニューレ内部の喀痰吸引 | 20回以上 | |||
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養 | 20回以上 | |||
経鼻経管栄養 | 20回以上 |
喀痰吸引等研修2号
研修内容は、基本研修として講義50時間、各行為のシミュレーター演習があり、基本研修を終えると実地研修を行います。
喀痰吸引等研修第2号で実地可能な行為は以下2つです。
- 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内)
- 経管栄養(胃ろう又は腸ろう)
第2号研修で学習する内容や時間は第1号とほとんど同じで、「気管カニューレ内部の喀痰吸引」と「経鼻経管栄養」を学習しないという違いがあります。
対象者は不特定多数の利用者と幅広いです。第1号とは実地内容に少し違いがあるので、当てはまるものを受けると良いでしょう。
しかし今後気管カニューレ内部の処置をする可能性があるのであれば、第1号研修を受けることをおすすめします。
喀痰吸引等研修3号
第3号研修では、講義と演習の区別がなく合計9時間の内容です。
第1号、第2号と違い重度障害者など特定の人にのみ治療を行うことができます。そのため第3号は少し内容も変わってきます。
演習内容としては、以下の4つです。
- 重要障害児、重要障害者等の地域生活等に関する講義
- 喀痰吸引等を必要とする重度障害児・重度障害者等の障害及び支援に関する講義
- 緊急時の対応及び危険防止に関する講義
- 喀痰吸引等に関する演習
学習内容 | 時間数あるいは回数 | |||
基本研修 | 講義 | 重度障害児・障害者の地域生活等に関する講義 | 2時間 | 9時間 |
喀痰吸引等を必要とする重度障害児・障害者等の障害及び支援に関する講義 | 6時間 | |||
緊急時の対応及び危険防止に関する講義 | ||||
演習 | 喀痰吸引等に関する演習 | 1時間 | ||
実地研修 | 口腔内の喀痰吸引 | 回数に限りはなく、医師などが十分知識や技術を修得した受講者と認めるまで実施 | ||
鼻腔内の喀痰吸引 | ||||
気管カニューレ内部の喀痰吸引 | ||||
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養 | ||||
経鼻経管栄養 |
実地研修に関して回数制限は決められてなく、医師等の指導の下処理ができると認められるまで研修をします。
第3号研修は特定の人だけの対応になるため、受講時間も少なくすぐに処置を行うことができるようになります。
※特定の人:筋萎縮性側索硬化症またはこれに類似する神経・筋疾患、筋ジストロフィー、高位頚髄損傷、遷延性意識障害、重症の心身障害を患っている療養患者・障害者
申込方法
喀痰吸引研修は都道府県知事から指定された事業所で研修を受けます。早めに申し込みを行うと受講費用が割引される事業所もあるため資料請求などをして情報収集をしっかりしてから、受講の申し込みを行いましょう。
費用
喀痰吸引等研修の費用は以下のようになっています。
- 喀痰吸引等研修1号:215,000円(税込236,500円)
- 喀痰吸引等研修2号:168,000円(税込184,800円)
- 喀痰吸引等研修3号:36,800円〜(税込40,480円〜)
注意点
受ける前に把握しておくと良いポイントが3点あります。
- 介護福祉士になるだけでは、喀痰吸引の処置はできない
- 研修を受けた後に申請が必要
- 職場が喀痰吸引の処置ができる申請を行っていないといけない
介護福祉士についてはこちらに詳しく解説しております。
介護福祉士になるだけでは、喀痰吸引の処置はできない
介護福祉士の試験の範囲に喀痰吸引などの医療的ケアの分野が含まれていますが、介護福祉士になるだけでは処置することはできません。講義や演習はありますが、実施研修まではしないだけです。
介護福祉士でも、喀痰吸引等研修を受けて実施研修まで受講する必要があります。
研修を受けた後に申請が必要
喀痰吸引等研修の全ての研修を修了しただけでは、喀痰吸引や経管栄養の処置はできません。
自分が住民票を置いている都道府県に申請をし、承認されることで処置ができるようになります。
研修を修了したらすぐに申請をしておくと良いでしょう。
申請内容が第1号、2号、3号で異なるため、事前に確認しておきましょう。
職場が喀痰吸引の処置ができる申請を行っていないといけない
喀痰吸引等研修を受講し、認定申請を済ませ承認をもらえたとしても、勤務先が喀痰吸引等の申請をしていなければ介護士が喀痰吸引等行為を行うことができません。
喀痰吸引等研修を修了し、申請したとしても勤務先で使うことができないという場合もあるため、事前に確認するのを忘れないようにしましょう。
まとめ
喀痰吸引は、きちんと知識やスキルを認められた人のみが行うことができる医療行為です。自力で食事をしたり、痰や唾液を排出したりする力のない人は介護施設にも多くいます。そんな人たちのために助けとなるスキルを得ることができるのが喀痰吸引研修です。介護職員としてスキルアップしたい方、給料アップしたい方はぜひ取得してみましょう。
介護職で役立つ資格一覧はこちらで詳しく解説しています。