介護業界で働こうと考えたとき、「無資格未経験で本当に大丈夫なの?」と不安を覚える方は少なくないはず。
本記事では、そんな皆様のために“入門的研修”について解説します。
前半では「入門的研修で学ぶ内容」や「受講時間」について、そして後半では「介護職員初任者研修との違い」について触れています。
無資格未経験でも介護業界が気になっている方や、これから介護業界で働こうと思っている方は必見です!
また、「初任者研修を無料で受講する方法」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
入門的研修とは?
入門的研修は、介護業界に関心がある介護未経験者の方のための講習で、基本的な知識やスキルの習得を目的としています。
開講場所や開講スケジュールは各都道府県によって異なり、カリキュラム時間数は21時間と短めです。
そのため、介護職員初任者研修と比べると手間と費用がかからず容易に取得できます。
入門的研修の目的
介護に関心を持つ介護未経験者に対して、介護の業務に携わる上での不安を払拭するため、基本的な知識を研修することにより、介護分野への参入を促進する。
介護未経験者が基本的な知識やスキルを身につけるための研修
入門的研修は前述のとおり、介護未経験・無資格者のためのものです。
カリキュラム時間数は21時間で、介護職員初任者研修の130時間と比べると大幅に短い設定となっています。
そのため、習得できる知識やスキルにも大きな差がありますが、研修を終了すると修了証明書が発行されます。
カリキュラム内容について
21時間で組まれているカリキュラムは、厚生労働省から以下のように発表されています。
学習科目 | 入門的研修の時間数(h) | ||
介護に関する基礎知識 | 1.5 | ||
介護の基本 | 1.5 | ||
基本的な介護の方法 | 10 | ||
認知症の理解 | 4 | ||
障害の理解 | 2 | ||
介護における安全確保 | 2 | ||
合計 | 21 |
約半分を「基本的な介護の方法」にあてているだけでなく、認知症や障害に関しても触れる内容となっています。
各科目の時間数が短いため、あらかじめ学習ポイントを抑えておくなどの準備をして臨みましょう。
各科目の学習目標について
時間数は短いですが、各科目ごとに項目があり、学習ポイントを抑えておけばより効率的に習得できます。
以下に各科目ごとの項目と学習目標をまとめたので、入門的研修を受講する方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
科目 | 項目 | 学習目標(ポイント) | ||||
介護に関する基礎知識
|
高齢社会の現状 | 高齢化率の急上昇に伴う介護の問題について | ||||
介護に関する相談先 | 介護についての相談窓口について | |||||
介護保険制度の概要 | 介護保険制度サービスの種類や利用までの手続きについて 介護保険制度サービスを利用した際の自己負担について |
|||||
仕事と介護の両立 | 介護休業制度について 仕事と介護の両立支援について |
|||||
介護の基本
|
介護における安全・安楽なからだの動かし方 | ボディメカニクスを活用した介護の方法 福祉用具の活用 |
||||
介護予防・認知症予防に使える体操 | 心身機能、活動、参加のバランスのとれた介護予防の考え方 手軽にできる介護予防体操および健康体操を知る |
|||||
基本的な介護の方法
|
生活援助技術の基本 | 身体介護の基本的な方法 生活援助の内容 |
||||
老化の理解 | 老化に伴うこころとからだの変化 老化に伴うこころとからだの変化が日常生活に与える影響 高齢者がかかりやすい病気と生活上の注意点 |
|||||
認知症の理解
|
認知症を取り巻く状況 | 認知症ケアの姿勢と理念 「パーソンセンタードケア」の理解 |
||||
医学的側面からみた認知症の基礎と健康 | 認知症の定義 認知症の原因となる病気と症状、その治療法 認知症の人の健康管理法 |
|||||
認知症に伴うこころとからだの変化と日常生活 | 認知症の中核症状と行動・心理症状と症状に適した対応 認知症を理解して対応するケア法、コミュニケーション法 |
|||||
家族への支援 | 家族が認知症の家族を受け入れる家庭の理解 介護職が家族を支援する「レスパイトケア」について |
|||||
障害の理解
|
障害の基礎的理解 | 障害者を支援するための分類方法「ICF」について 福祉の基本理念である「ノーマライゼーション」について |
||||
障害の医学的側面 | 身体障害、知的障害、精神障害の特徴と、行動・心理 障害者やその家族とのかかわり、支援の基本 |
|||||
家族の心理、かかわり支援の理解 | 障害者とその家族の心理について 障害者とその家族の支援方法 |
|||||
介護における安全確保
|
介護における安全の確保とリスクマネジメント | 介護の現場における安全確保の方法 事故を起こしてしまった際の対応について 原因や感染経路など、感染症について |
||||
介護職の安全 | 介護職自身の健康管理の意義 腰痛予防の大切さ 手洗い、うがいなど感染症対策 |
入門的研修を受講するには?
ここまで呼んで入門的研修を受講しようと思った方は、まずは最寄りの市町村役場へ行ってみましょう。
入門的研修は各都道府県および市区町村によって開講場所やスケジュールが異なるので、HPを確認するか直接問い合わせる必要があります。
実施主体は各都道府県および市区町村
介護職の入門資格である初任者研修とは異なり、入門的研修の実施主体は各都道府県および市区町村です。
そのため、お住まいの地域によってはすぐに受講できない、そもそも実施されていないといった事態が想定されます。
実施しているのであればスケジュールを、実施していない場合は近隣の市区町村で受講できないか調べましょう。
入門的研修の受講資格
入門的研修の対象となっているのが、「企業等で定年退職を予定している方や中高年齢者、子育てが一段落した方」です。
学歴や必要資格の要項はないため、実施されていれば誰でも受けられる研修となっています。
カリキュラム時間数が少なく3〜6日程度で終わるので、就業中の方でも負担が比較的少なく修了できるでしょう。
入門的研修の費用
介護業界での就労を希望しているのであれば、介護施設および事業所とのマッチング支援等により、ほとんどのケースで無料で受講できます。
介護業界で働くかは修了してから決めようと思っているという方は、各都道府県や市区町村へ問い合わせてみましょう。
入門的研修の修了に必要な日数
カリキュラム数が21時間と短い入門的研修には、3日程度で取得するコースと6日程度で取得するコースがあるようです。
厚生労働省のHPにそれぞれの実施例が掲載されていたので、以下に記載します。
入門的研修を受講するにあたっての注意点
カリキュラム時間数が少なく、無料で受講できるケースがほとんどの入門的研修ですが、受講するにあたっての注意点がいくつかあります。
時間と費用が確保できるのなら、初任者研修の受講を検討してみてもいいでしょう。
3日で取得する場合(1日7時間程度) | 6日で取得する場合(1日3〜4時間程度) | ||||
1日目
|
介護に関する基礎知識 | 1.5h |
1日目
|
介護に関する基礎知識 | 1.5h |
介護の基本 | 1.5h | 介護の基本 | 1.5h | ||
認知症の理解 | 4h | 2日目 | 基本的な介護の方法 | 3h | |
2日目 | 基本的な介護の方法 | 7h | 3日目 | 基本的な介護の方法 | 3h |
3日目
|
基本的な介護の方法 | 3h | 4日目 | 基本的な介護の方法 | 4h |
障害の理解 | 3h | 5日目 | 認知症の理解 | 3h | |
介護における安全確保 | 2h |
6日目
|
障害の理解 | 2h | |
合計
|
21h
|
介護における安全確保 | 2h | ||
合計 | 21h |
実施先および開講スケジュールが少ない
最大の問題といってもいいですが、入門的研修は実施されているケースが少ないです。
これにはいくつかの理由があるものの、入門的研修ではなく初任者研修を受講する方が多いというのが大きな要因と言えるでしょう。
また、研修先が増えない要因として考えられるのが、受講費用の妥当性や研修場所の確保が難しいといったことが挙げられます。
入門的研修を受講しても訪問介護員にはなれない
多くの方が容易に取得できる入門的研修ではなく、時間とお金がかかる初任者研修を受講するのには理由があります。
それは“入門的研修を修了しても訪問介護員として働けない”からです。
入門的研修は介護に関する最低限の知識とスキルを習得するための研修ですので、介護業界で長く働こうと考えているなら初任者研修の受講をおすすめします。
介護職員初任者研修との違い
入門的研修は初任者研修よりカリキュラム時間数が少ないと記載しましたが、本項ではより具体的な違いについて触れていきます。
入門的研修を受講するか悩んでいる方は、以下の内容を読んで参考にしてみてくださいね。
カリキュラム時間数
入門的研修のカリキュラム時間数が21時間(約3〜6日)なのに対して、初任者研修のカリキュラム時間数は130時間(1〜3ヶ月)と大幅に増えます。
当然ながら内容もより専門的になり、介護職として必要な知識やスキルの習得を時間をかけて目指します。
また、入門的研修はほとんどのケースで無料ですが、初任者研修は3〜10万円と費用面も負担増です。
学習項目 | 初任者研修の時間数(h) |
職務の理解 | 6 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9 |
介護の基本 | 6 |
介護・福祉サービスの理解と医療の連携 | 9 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6 |
老化の理解 | 6 |
認知症の理解 | 6 |
障害の理解 | 3 |
こころとからだのしくみと生活支援 | 75 |
講義の振り返り | 4 |
合計 | 130 |
※介護職員初任者研修は国家資格ではありません。
従事後の待遇面
介護業界の入門資格と言われる初任者研修より、さらに基礎的な入門的資格は、就業後の待遇面においてのメリットはほぼありません。
一方で初任者研修を修了していると、企業側が即戦力を必要としていることもあって採用率があがり、さらに給料面も無資格者と比較して数万円ほど高くなります。
これは介護サービスの種類に関わらず同様で、転職時にも有利になるなど、介護業界で働いていこうと考えているなら取得しておくべきは初任者研修以上の資格と言えるでしょう。
需要があるのは初任者研修
入門的研修は介護の基本を学ぶためのものですが、初任者研修は完全な上位互換の資格となるため、需要が高いのは圧倒的に初任者研修です。
このことから無料で受けられるからといって入門的研修を受講するのではなく、お金と時間を使ってでも初任者研修の取得を目指した方がいいでしょう。
スクールや企業によっては初任者研修を無料で取得することも可能なので、費用面が不安な方はそういった制度の利用をおすすめします。
いきなり実務者研修を受講するのもあり
初任者研修修了者ののステップアップ資格として、介護職員実務者研修が挙げられます。
カリキュラム時間数は130時間から450時間とこれまた一気に増え、受講費用も10万円以上かかるケースがほとんどです。
ただし、入門的研修と同様に受講資格などは特にないため、
- 即戦力として働きたい
- 少しでも良い待遇で働きたい
- 最終的に介護福祉士(国家資格)の取得を目指している
上記のような方は最初から実務者研修を受講した方が良いかもしれません。
科目 | 項目 | 実務者研修の時間数(h) |
『人間と社会』
|
人間の尊厳と自立 | 5 |
社会の理解Ⅰ | 5 | |
社会の理解Ⅱ | 30 | |
『介護』
|
介護の基本Ⅰ | 10 |
介護の基本Ⅱ | 20 | |
コミュニケーション技術 | 20 | |
生活支援技術Ⅰ | 20 | |
生活支援技術Ⅱ | 30 | |
介護過程Ⅰ | 20 | |
介護過程Ⅱ | 25 | |
介護過程Ⅲ | 45 | |
『こころとからだのしくみ』
|
発達と老化の理解Ⅰ | 10 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20 | |
認知症の理解Ⅰ | 10 | |
認知症の理解Ⅱ | 20 | |
障害の理解Ⅰ | 10 | |
障害の理解Ⅱ | 20 | |
こころとからだのしくみⅠ | 20 | |
こころとからだのしくみⅡ | 60 | |
『医療的ケア』 | 医療的ケア | 50 |
合計 | 450 |
※介護職員実務者研修は国家資格ではありません。
初任者講習と実務者講習を無料で受講する方法
ここまで読んで、入門的研修ではなく初任者講習や実務者講習を受講しようと思った方は、まずは大手スクールや転職サイトのHPをチェックしましょう。
実は初任者講習や実務者研修は、資格取得制度を利用することで無料で受講できます。
ただし、無料で受講するためには以下のような条件が付随するようです。
- 大手スクールの場合…研修を修了後、提携する事業所や施設に従事する
- 転職・求人サイトの場合…紹介された事業所や施設で介護職員として働きながら取得する
スクールや転職サイトによって完全無料だったりキャッシュバックだったりと形態は変わりますが、需要のある資格が無料で取得できるのですから利用しない手はありません。
費用と時間を確保できるなら“初任者研修”がおすすめ!
入門的資格はカリキュラム時間数が少なく、ほとんどのケースで費用もかからないため、受講しやすい資格ではあります。
しかし、介護業界で働くと決めたなら時間とお金をかけてでも初任者研修や実務者研修を取得した方がよさそうです。
これらの資格は働きながら取得することも可能なので、気になる方は転職サイトや求人の応募先に問い合わせるなど行動を起こしてみてはいかがでしょうか。