介護職は給料が低いと言われることが多いですが、国の方針や景気などで給料が上がることもあります
この記事では「介護職の給料が9000円アップすること」について解説していきます。
結論、介護職は今後も国策として給料が上がる傾向にあるでしょう。
介護職を検討する際、わかりづらい「なぜ9000円上がるのか」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「介護職員処遇改善加算」の説明や、「給料が上がる影響」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んで介護職で給料を上げる方法を知っていただければ幸いです。
また「介護職の給与をあげかた」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
2022年から介護職の給与は月9000円UP
2022年から介護職の給与は、月9000円アップすると言われています。
これは、厚労省の福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金が元です。
この制度では、障害福祉職員を対象に、令和4年2月から収入の3%程度(月額9000円相当)の引上げを行う事業者を支援します。
介護職員処遇改善加算とは?
介護職員処遇改善加算とは、人材不足で悩む介護業界の現状を改善し、離職率を下げるために国が定めたルールです。
介護職員処遇改善加算について詳しく知るための、以下の3つの要素を解説していきます。
- 介護職員処遇改善加算の加算金額
- 介護職員処遇改善加算の対象
- 介護職員処遇改善加算の実施期間
介護職員処遇改善加算の加算金額
介護職員処遇改善加算は、3つの区分に分けられます。
資格の取得状況や能力などによってスタッフを3つの区分にわけ、それぞれ異なる金額が給与に加算されます。
それぞれの区分の加算金額は以下の通りです。
- 月額3.7万円相当
- 月額2.7万円相当
- 月額1.5万円相当
介護職員処遇改善加算の対象
介護職員処遇改善加算の対象は、介護職に就く全てのスタッフです。
ただし、管理者やサービス管理責任者、ケアマネジャーは加算の対象外です。
また、事業者が、処遇改善加算を受けるための「キャリアパス要件」と呼ばれる以下の条件もあります。
- 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備
- 資質向上のための計画と研修の実施
- 経験もしくは資格等に応じた昇給の仕組み、定期に昇給を判定する仕組みを設けること
事業所内で処遇改善加算をどのように配分するかは、細かい規定がなく、各事業所に委ねられています。
介護職員処遇改善加算の実施期間
賃金改善の実施期間は年度ごとです。
4月から翌年3月までの12ヵ月間が一般的な実施期間となっています。
また、年度の途中で加算を申請した場合には、届出の2カ月後から年度末の3月までが実施期間となっています。
処遇改善加算の内容については、適宜変更も加えられています。
以前は区分が5つでしたが、2018年の介護報酬改定により、2022年3月の経過措置期間を設けた上で廃止することになりました。
介護職の給料アップはパート・アルバイトも対象?
介護職員処遇改善加算は、パートやアルバイトも含む全ての介護職員が対象となります。
対象となるかどうかは、雇用形態ではなく職種によって決まります。
介護職員処遇改善加算は、介護職を対象としたものなので、生活相談員や看護師、栄養士などの職種は基本的には対象外です。
しかし、これらの職種を介護職員と兼務している場合は対象の範囲になります。
介護職の給料が上がることでのプラスの影響とは?
介護職の給料を上げることは、介護職に就く本人だけでなく、施設経営者、介護サービス利用者、社会全体にもプラスの影響が期待されます。
介護職の給料が上がることで期待できるメリットは、以下の3つです。
- 介護職の志望者が増えて業務負担が小さくなる
- 介護職のイメージアップ
- 介護職からの離職者の減少
介護職の志望者が増えて業務負担が小さくなる
世間一般的に、介護職は激務の割に給料が低いというイメージがあります。
高齢化が進んでいく中で、介護職では常に若い人材を求めていますが、業界全体として人手不足の状態が慢性化しているのが現状です。
介護職員処遇改善加算は、そうした介護職の現状を改善するために取られた政策。
介護職に対する処遇が改善されることにより、介護職の志望者が増えれば、介護スタッフ一人当たりの業務負担を軽減できます。
介護スタッフが肉体的にも精神的にも余裕を持って働ける環境ができれば、介護利用者にとってもより質の高いサービスを受けられることにつながります。
そのため、給料を上げることにより、介護職志望者を増やすことが、介護職員処遇改善加算の狙いの1つです。
介護職のイメージアップ
介護職は「低賃金で給料が労働に見合わない」というイメージを多く持たれているのも現実です。
また、実際にスタッフにとって働きやすいとは言えない労働環境になってしまっている施設もあります。
事業所が介護職員処遇改善加算を申請する場合、まず労働環境の改善を図ることが求められます。
介護職員の職位を明確にし、役職に就くとどのくらい給与が上がるのかを明確にしなくてはいけません。
また、スキルアップのための研修の機会を作ったり、費用を補助することなども求められます。
さらに、賃金以外でも休憩室の設置、介護職の腰痛に対する対策など、職場改善の取り組みも申請のための要項です。
介護職員処遇改善加算は、事業所に対し職場環境の改善を求める制度でもあるため、介護職全体のイメージアップに貢献すると考えられます。
国としてこのような制度を取り決めることで、施設の運営者によって待遇が大きく変わるというのではなく、介護職全体として働きやすい環境になることを目指します。
介護職からの離職者の減少
介護職員処遇改善加算は、介護職に就く人にとって現在の給料が上がるだけではなく、将来のビジョンを描きやすくなるというメリットもあります。
キャリアアップを目指しやすい環境を作ることで、介護職からの離職者を減少させる狙いです。
介護職員処遇改善加算では、各事業所に対して、キャリアアップの仕組みや支援、具体的な昇給の計画を明確に示すことを求めています。
そのため、資格を取得したり、スキルアップして昇給していくことを目指す動機づけとなり長期的に介護職を続ける人が増えることが期待されるでしょう。
介護職は労働が給料に見合わないというイメージがあり、入職しても短期間でやめてしまう人も少なくないという現状を改善するための試みです。
離職率を下げることで、安定して質の高いサービスを提供することにつながり、介護業界全体にとってメリットとなります。
介護職の給料が上がることでのマイナスの影響とは?
介護職員処遇改善加算では、給料や職場環境が改善され、離職者を減らせるため、いいことづくめのようにも思えますが、一方で見逃せないマイナスの影響もあります。
ここでは、マイナスの影響になり得る次の3つの要素をご紹介します。
- 志望者が増えて介護士余りになる
- ピンハネする業者が出る可能性がある
- 昇進や昇給が難しくなる
志望者が増えて介護士余りになる
ある職種の待遇が良くなると、一時的にその職種に志望者が殺到してしまうという傾向があります。
今後、介護職の給与や職場環境の改善が広く認知されると、介護士志望者が急増し、今までの人材不足とは反対に人材が余ってしまう可能性も予想されます。
現在では介護業界では無資格者や未経験者も含め、人手があれば誰でも来てほしいという状況が見られますが、こうした求人状況に変化が現れるかもしれません。
求職者が増えると、より高い資格や技術を持つ人材が求められるようになり、業界全体のサービスの質が上がるのはメリットです。
しかし、求職者側から見ると、以前に比べハードルが上がってしまい職が見つけにくくなるという点はデメリットになるかもしれません。
ピンハネする業者が出る可能性がある
介護職員処遇改善加算の制度は、事業者が収益を得るためのものではなく、介護職につくスタッフの給与を向上させるためのものです。
現状では、この制度により得た利益を事業所がピンハネできないような仕組みになっており、国としての監視システムは用意されています。
仮に支給された金額がスタッフに支払われず事業所に残るとルール違反となり、返還対象になります。
また、加算分も含めた給与を何人の職員にいくら、どのような形式で支払ったのかといった詳細を国や自治体に報告する義務もあります。
そのため、現在ピンハネをする業者は恐らくいないと考えられますが、抜け穴を考える業者が現れる可能性は否定できません。
また、介護職員処遇改善加算の制度は常に改正されており、今後の制度変更によっては、事業者に有利になるルールが加えらえる可能性もあります。
介護職員処遇改善加算は本来、介護職で働く人のための制度なので、本来の目的を逸しない運用が継続されることを願いたいところです。
昇進や昇給が難しくなる
事業所が介護職員処遇改善加算の制度を利用する場合、給与の加算額はそのルールに則って算出することが求められます。
元々精緻な賃金テーブルが作成されている事業所の場合、介護職員処遇改善加算の財源配分のルールを当てはめようとすることで、かえって賃金バランスが崩れてしまうというケースもあります。
介護職員処遇改善加算では、加算額や割合などが定められているため、事業所内での柔軟な評価査定や昇給が難しくなる場合も考えられます。
事業所の状況によっては、ルールに縛られてしまい、かえって昇進や昇給が難しくなるというデメリットが生じるかもしれません。
介護職の平均給料の推移
介護職の平均給料の推移を見てみると、介護職員処遇改善加算により給与改善の成果が見られていることがわかります。
介護職員処遇改善加算制度を利用している事業所・施設における介護職員(月給・常勤)の平均給与は、2019年2月から2020年2月にかけて、15730円(5.2%)増加しています。
また、以前の介護職では勤続年数が上がるにつれて、給与アップの度合いが低くなるという状況が見られました。
しかし、同調査では10年以上勤務者の給与改善幅は1万6840円(5.0%増)となっており、この状況が改善されています。
介護職で自ら給料を上げるには?
介護職全体の給料向上とは別に、個人として給料を上げる努力をすることもできます。
自ら給料を上げる方法には、次の3つがあります。
- 介護系の上級資格を取得する
- 現場ではなく管理職になる
- 手当がつきやすい職場に転職する
介護系の上級資格を取得する
介護系の資格にはレベルに応じたものがあります。
取得の難易度が高い資格であればあるほど、事業所では求められる人材となります。
そのため、介護職の資格取得は給与アップに直結するといっても過言ではないでしょう。
職場によっては、資格取得を援助する取り組みを行なっているところもあるので、積極的に利用しましょう。
現場ではなく管理職になる
管理職につくと、基本給の他に役職手当を設けている事業所も少なくありません。
現場の介護職である程度経験を積んだら、管理職を目指すのも給料アップのための良い方法です。
管理職は、介護士としての知識や技術はもちろん、マネージメント力や、利用者家族、他のスタッフたちの繋ぎ役になるコミュニケーション能力が求められます。
責任は大きくなりますが、その分給与ややりがいも増えることが期待できるでしょう。
手当がつきやすい職場に転職する
介護職は職場によって同じ内容の仕事をこなしていても、待遇が異なるという現状があります。
そのため、給与アップのための仕組みが細かく制定されており、手当がつきやすい職場に転職するのも1つの方法です。
手当の例としては、資格手当や役職手当、特定の業務に関する手当などがあります。
こうした手当が充実しているかどうかも、職場選びの基準の1つとしたいポイントです。
岸田総理は介護職の給与アップを明言
岸田内閣が掲げている政策の1つに公的価格の抜本的見直しがあります。
この賃金引き上げの対象には介護士も含まれています。
岸田総理は2021年12月21日の臨時国会閉幕後の記者会見で、賃金引き上げの対象について、2022年10月から賃金を3%程度(9000円程度)引き上げると話しています。
国の意向としてこのような流れがあることから、今後介護職の給料はますます上がっていくことが期待できるでしょう。
介護職のなかでも給料が高い職種とは?
介護職の中でも給料が高い職種を目指すなら、同じ勤務時間でも給料アップを目指すことができます。
介護職の中で給料が高い職種は以下の3つです。
- リハビリ職員
- ケアマネジャー
- 生活相談員・支援相談員
リハビリ職員
リハビリ職員の資格として、国家資格の理学療法士があります。
理学療法士は、介護職というより医療業界の分野となり、医師や看護師に准する職種となるため、給料も介護職より高めです。
ケアマネジャー
ケアマネジャーの資格を取得するためには、国家資格を取得してから5年以上の業務経験、もしくは相談業務に5年以上従事していることが求められます。
取得までに年月を要する職種ですが、その分有資格者はニーズが高く、給料も一般の介護職よりも高くなる傾向があるでしょう。
生活相談員・支援相談員
生活相談員になるには、基本的には社会福祉士という資格を取得する必要があります。
介護現場ではなく、相談業務や地域との連携、助成金の理解など範囲が多岐に渡る業務でもあり、給与も一般介護職より高い傾向です。
また、肉体労働が少なく、相談業務や事務業務が多いため、介護職を長く続けて行く上で体力に不安がある人にもおすすめの職種でしょう。
介護職の給料は今後も上がる可能性が高い
この記事のポイントは次のとおりです。
- 介護職員処遇改善加算は介護職の待遇改善のための制度
- 介護職員処遇改善加算により、介護志望者が増えることが見込まれる
- 資格取得でさらに給料アップが狙える
介護職員処遇改善加算は、介護職の給与待遇を改善し、離職率を下げるために国が設けた制度です。
この制度の導入により、今後も介護職の給料は上がっていき、志望者も増えていくと見込まれます。
介護職全体だけではなく、個人の給料アップを狙うなら資格の取得やキャリアアップがおすすめです。
この記事で介護職に関心を持たれましたら、キャリアプランの見直しから始めてみてくださいね。