居宅介護支援というワードをご存知でしょうか?
ケアマネジメントとも呼ばれ、様々な介護サービスを利用する上で最も基本的なサービスといえます。
本記事では、居宅介護支援がどういったサービスなのかを解説。
前半では『居宅介護支援について』や『仕事内容』、後半では『他サービスとの違い』や『必要な資格』についても触れています。
介護サービスの利用を検討している方はもちろん、これから介護業界で就職および転職を考えている方もぜひ参考にしてくださいね。
また、「介護サービスの種類」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
居宅介護支援とは?
居宅介護支援とは、利用者が適切な介護保険サービスを受けられるように、ケアプランを作成して提供者および事業者とつなぐことです。
主な業務は以下の2つとなっています。
- ケアプランの作成と運用
- モニタリングによるケアプランのチェック
また、業務は特定のサービスや事業者に偏ることがないよう、公正中立に行わなれなければなりません。
ケアプランの作成と運用
居宅介護支援で最も重要なのが、ケアプラン(介護保険サービス利用計画書)の作成です。
介護や支援の目標を利用者本人とその家族と相談しながら設定し、その目標を実現するために必要であると判断した介護保険サービスをプランに盛り込みます。
具体的なケアプラン作成の流れは、以下のようになります。
- ケアマネージャーが利用者宅を訪問し、心身状況や生活環境などを把握して課題を分析(アセスメント)
- ケアマネージャーと利用者およびその家族、それからサービス提供事業者で自立支援に必要なサービスの検討(サービス担当者会議)
- 課題や話し合いを基にサービスの種類や利用回数を決定
ケアプランの原案が作成できたら、利用者およびその家族と最終確認を行って正式なケアプランの完成となります。
ケアプランは原則として介護保険サービスを対象としたものですが、必要に応じでその他のサービスを盛り込むことも可能です。
モニタリングによるケアプランのチェック
ケアプランは作成して終わりというものではなく、問題がないかをチェックするモニタリングも必要です。
ケアマネージャーは月一回以上の頻度で利用者宅を訪問するなどして、中長期的なフォローを行います。
利用者の心身状況や周辺環境は時間経過とともに変化していきますから、ケアプランの内容とのズレを発見して修正しなければなりません。
もしも修正が必要な場合には、ケアプラン作成時と同じくサービス担当者会議が開かれ、修正すべき内容を関係者全員で共有します。
ケアプランに沿って提供されるサービス
ケアプランには以下の3つの介護保険サービスが盛り込まれています。
- 訪問系サービス
- 通所系サービス
- 短期入所系サービス
本項ではそれぞれについて解説します。
訪問系
まず1つめは、訪問介護や訪問看護、訪問入浴などの訪問系サービスです。
訪問介護はホームヘルパーが利用者宅へ訪問し、身体介護および生活援助を行います。
訪問看護は主に医療法人が提供するサービスで、看護師が在宅介護を受けている利用者の健康チェックを行います。
訪問入浴は簡易浴槽を搭載した専用車で利用者宅へ訪問し、寝たきりなどで自宅の浴槽を利用できない利用者の入浴をサポートします。
通所系
2つ目の通所系サービスには、デイケア(通所リハビリ)とデイサービス(通所介護)が該当します。
デイサービスは利用者が介護事業所へ通い、食事や入浴、健康チェック、レクリエーションが提供される介護サービスです。
一方のデイケアは、リハビリテーションや機能回復訓練に特化しか通所サービスで、利用者の心身状況に合わせたプログラムを基に指導が行われます。
なお、デイサービスは自宅から事業所までの送迎車が用意されているため、自家送迎の必要はありません。
短期入所系
短期入所介護(ショートステイ)は、集中的に機能回復訓練を実施したい場合や、介護者が数日家を空けるなどの事情あるときに利用できる介護サービスです。
特別養護老人ホームや有料老人ホームといった入所系施設が建物の一部を利用して運営しているケースが多く、最大で連続30日まで利用できます。
サービス利用中の生活形態は、施設に入所しているのと同様です。
ただし、施設によっては満室が続いており、早期の申し込みでないと利用できない場合があります。
居宅介護支援事業所の仕事内容
居宅介護支援事業所では、ケアプランの作成とモニタリングだけでなく、事務処理作業や地域包括支援センターに出向くなどの業務を行っています。
実際の仕事内容は以下の通りです。
介護保険サービス利用希望者との面談
介護保険サービスの利用を希望している方との面談を行い、要介護認定を受けた本人およびその家族から現在の生活状況について聞き取りを行います。
同時に介護保険制度の仕組みや介護保険サービスの種類と内容についても説明を行います。
この際にわかりやすい説明が必要であり、利用者側が理解不足だと後々のトラブルの種になるので気をつけましょう。
解決すべき生活課題の抽出
利用者本人およびその家族との面談をもとに、解決すべき課題を抽出します。
このタイミングでサービス利用希望者がまだ要介護度認定を受けていない場合には、申請手続きを代行することもあるようです。
その際は要介護度が決まってから改めて利用者宅を訪問し、再度面談を行って生活課題を抽出します。
ケアプランの作成
収集した情報と利用者およびその家族の意向から支援目標を設定したら、いよいよケアプラン(介護サービス利用計画書)の作成です。
また、ケアプランに沿った介護サービスを提供するため、介護サービスを提供する各事業所の担当者を招いてサービス担当者会議も行います。
各事業所の担当者や専門員の意見をとり入れながらケアプランの見直しを行い、同時に必要となる介護サービスの料金計算も行います。
居宅介護支援を利用するメリット・デメリット
ケアマネージャーが提供する居宅介護支援では、初めて介護サービスを利用する人であってもまず間違いのない選択ができます。
しかし、メリットばかりではなくデメリットもありますので、本項ではそれぞれについて解説します。
メリット
居宅介護支援は、介護サービスを必要とする人と介護サービスを提供している事業者の橋渡しをしてくれます。
専門家であるケアマネージャーの支援を受けてサービスを決定するので、初めての人でもスムーズに利用できるでしょう。
また、介護について困ったことがあれば、ケアマネージャーが相談窓口になってくれます。
きっと問題の解決につながるような介護サービスを提案してくれるでしょう。
デメリット
居宅介護支援は介護保険サービスの1つです。
介護保険サービスはできることとできないことがはっきり定められていますので、状況によっては残念ながら生活課題が解決されません。
居宅介護支援を利用する場合、サービスには限界があることを理解しており、足りない部分は家族介護で補うことが重要です。
他サービスとの違いについて
居宅介護支援を調べると、”訪問介護”や”地域包括支援センター”といったワードを目にすることがあるでしょう。
本項では、いくつかのサービスと居宅介護支援との違いについて解説します。
訪問介護との違い
訪問介護はホームヘルパーが利用者宅を訪れ、身体介護と生活援助を行う介護保険サービスです。
利用者が居宅にて自立した生活を送れるように支援しますが、利用時間や回数は介護保険制度で定められています。
一方の居宅介護支援は、前述の通り介護保険サービスを利用するための計画を立てたり、利用者がスムーズに介護を受けられるように事業所側との調整を行うサービスです。
つまり、訪問介護を利用するために居宅支援介護を利用するといった関係性にあります。
地域包括支援センターとの違い
地域包括支援センターは、地域内に住んでいる高齢者の生活をサポートするための公的機関です。
介護予防のケアをはじめとする高齢者に関する様々な相談に応じてくれます。
居宅介護支援は介護保険サービスなので利用には要介護認定が必要ですが、地域包括支援センターは地域内であれば高齢者本人および家族、その近隣住民からの相談が可能です。
相談できるという点では同じですが、業務内容と利用できる人の属性に違いがあります。
小規模多機能型居宅介護との違い
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所が通所・訪問・宿泊の3つのサービスを提供する地域密着型の介護保険サービスです。
名称に居宅介護と入っているサービスには、他にも”看護小規模多機能型居宅介護”が挙げられます。
こちらは小規模多機能型居宅介護に訪問看護がプラスされたものになります。
この通りサービス名称が同じというだけで居宅介護支援とは大きく異なり、ざっくり言うなら居宅介護支援は小規模多機能型居宅介護に含まれます。
そのため、単体の介護サービスから小規模多機能型居宅介護に移行する際は、ケアマネージャーも変更する必要があるということを覚えておきましょう。
働くために必要な資格・給与
居宅介護支援を行うために必要な資格はたった1つ、“ケアマネージャー”です。
国家資格でこそないものの取得難易度はかなり高めで、介護職のキャリアアップ資格としても人気なのでご存知の方は多いはず。
本項ではケアマネージャーについてと、ケアマネージャーの給与事情について解説します。
ケアマネージャー
ケアマネージャーの資格は、介護支援専門員実務研修受講試験に合格したあと、所定の研修を受講して各都道府県に登録すると取得できます。
取得難易度が高いと言われる理由は、介護支援専門員実務研修受講試験を受験するために、“指定業務を5年以上かつ900日以上経験すること”と定められているからです。
主な仕事内容は、以下の3つです。
- ケアプラン(介護保険サービス利用計画書)の作成
- サービス提供事業者との調整役
- 利用者本人およびその家族から介護に関する相談を受ける
主な職場は居宅介護支援事業所や特別養護老人ホーム、地域包括支援センター、介護用具のレンタルを展開している民間企業などです。
月収相場は20〜30万円
ケアマネージャーの給与は、ケアプランの作成などによる“居宅介護サービス計画費”として介護保険から支払われています。
平均月収は20~30万円ほどとなっていますが、勤務先や働き方によって大きく変動するのが特徴です。
他業種と比べて賃金が低いと言われる介護業界ですが、ケアマネージャーは看護師に次いで平均月収が高い傾向にあります。
居宅介護支援の利用方法
居宅介護支援の利用には、サービスを受けるための条件を満たし、所定の手順を踏む必要があります。
- 利用対象や
- サービス利用までの流れ
- 利用料金
本項では上記3点について解説します。
利用対象者
居宅介護支援の利用には、要介護認定を受ける必要があります。
まだ認定を受けていない場合には、お住いの市区町村役場の窓口や公式サイトで申請書を入手し、必要事項を記入して市区町村の介護保険課または地域包括支援センターに提出しましょう。
確認が済むと介護認定調査員が自宅を訪れ、要介護認定を取得する本人およびその家族の状況を調査します。
その後、かかりつけ医の意見書をもとにして要介護度が決定します。
サービス利用の流れ
居宅介護支援を利用するまでの流れは以下のようになっています。
- 要介護認定を受ける
- 居宅介護支援事業所を探す
- 契約
- ケアマネージャーの専任
- ケアプランの作成
- 介護保険サービスの利用開始
- モニタリング
これだけの手順がありますが、ケアマネージャーが決まればあとはスムーズに進むでしょう。
利用料金
居宅介護支援の利用を検討している方は料金が気になるかと思いますが、実は費用は一切かかりません。
一般的な介護保険サービスは、利用者の所得に応じて1〜3割を自己負担する必要があります。
しかし、居宅介護支援の場合は全額が介護保険から給付されるため、自己負担金が0円です。
実質無料は要介護者が自立した生活を送るために居宅介護支援が重要と考えられているからで、利用を促進するといった狙いもあります。
居宅介護支援事業所で働こう!
高齢者は今後も増え続け、在宅介護を希望する人の数も増加の一途を辿っています。
また、人生の最期を住み慣れた自宅で迎えたいと希望する方も増えていますから、今後は医療との連携がさらに求められるようになるでしょう。
大変ですがとてもやりがいのある仕事ですので、介護職としてさらに頑張りたい方や、キャリアアップやスキルアップをお考えの方にはとてもおすすめです。