訪問介護員は通常の介護施設と異なり、高齢者の自宅に訪れて介護サービスを提供します。「介護サービス」とひとくくりにしても、介護施設と高齢者の自宅ではできること・できないことはまるで違い、具体的にどのような仕事をやっているのかしらないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、訪問介護員の仕事内容について紹介していきます。
訪問介護員の仕事内容と合わせて、実際の口コミを紹介しながら仕事のメリット・デメリット、どんな人に訪問介護員が向いているのかという点について紹介していきますので、ぜひ将来介護員として働こうと思ってる人は参考にしてみてください。
訪問介護員とは?
冒頭でも説明した通り訪問介護員とは、介護施設に入っている高齢者ではなく高齢者の自宅に訪れて介護サービスを提供する介護のことを指します。
別名ホームヘルパーとも呼ばれていますが、介護保険法では訪問介護員という名称が正式となりますが、実際の現場では訪問介護員よりもホームヘルパーを略してヘルパーと呼ばれることが多いです。
訪問介護員のメリット・デメリット
「訪問介護員という職種に憧れている」、「将来訪問介護員になりたい」と考えている人が一番気になるであろう、訪問介護員のメリットとデメリットについてこの章では解説していきます。
実際にネット上で書かれている口コミも合わせてメリットデメリットを紹介していきますので、実際に訪問介護員として働いている方のリアルな声と共に参考にしてみてください。
訪問介護員のメリット
利用者様が自分らしさを出せて、元気にしたいことができている姿を見られる瞬間です。 私は高齢者の方から『人の世話になりたくない、自分でもできる!』という気持ちを聞くことが多いのですが、その思いを尊重し、 入居者様がしたいことをできる関わり方が、できた時に喜びを感じます。 それとスタッフの成長を感じられた時に喜びを感じるようになりました。 介護の仕事は、人間力がすごく身につく仕事です。その反面、人との関わりで悩むことが多くあります。 その悩みを聞いて、解決に向けて一緒に考え、乗り越えた時の成長を見ることが出来た時はすごく嬉しいです!
私は訪問介護が好きで、ずっと訪問介護事業所で働いてきました。ですが、一般的には、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、グループホームなど入居施設の介護職として働くケースも多いと思います。
入居施設で介護職として働くメリットは、何より先輩の横で仕事が覚えられること。最初は戸惑うことが多いので、困ったときにすぐにアドバイスをしてくれる人が横にいるのは、とても心強いです。施設で働く仲間との友人関係も築くことができるでしょう。
けれど、人間関係が煩わしいものに思えたり、ボスのような人が采配を振りすぎているというケースもよく聞きます。一方、訪問介護は基本的に一人で介護を行うことになるので、臨機応変な対応が求められます。困ったときには事業所に連絡をすることになりますが、時間は限られている、利用者さんは「今すぐの対応」を求める、といったところで、悩みもあります。
けれど、利用者さんひとりひとりのご意思に合わせ、尊厳を大事にして介護ができるという点が、訪問介護のすばらしさだと思っています。介護はそもそも、「ひとりひとりのニーズに合わせたもの」のはずです。自分の技術や経験から、その方への最良の介護を求め、行動していけるのが、訪問介護です。
上記の口コミにあるように、訪問介護員のメリットは人間性が向上するという点が挙げられます。
また介護施設のように、高齢者との関わりだけでなくスタッフ同士の関わりというものが、訪問介護員の場合少ないことから、職員同士の人間関係というストレスが少ないという点もメリットとして挙げられるでしょう。
訪問介護員のデメリット
10年間ずっと同じ特別養護老人ホームに勤務し、リーダーも務めたんですが、夜勤がつらくなって登録制の訪問ヘルパーに転職。仕事の手際や介護技術には自信があったのに、訪問介護ではケースバイケースの対応を求められ、これまでのスキルが通用しないんです。要介護度が低い利用者様が多いから、特養での身体介護の経験もあまり発揮できません。
私は訪問介護には向いていないのかも…。でも今さら夜勤のある特養に戻るのもキツイし…。悩んでます。
老人ホームから訪問介護のヘルパーに転職し、仕事にはやりがいを感じています。しかし、訪問先のご家族が利用者に対してきつい言葉をかけている場面を何度か目撃してしまい、胸を痛めています。
自分に何かできないかと上司に相談したところ、プライベートに立ち入りすぎるのはよくないと言われました。今後もこういう場面を目にするのかと思うと、続けていく自信がなくなってきます…。
訪問介護員のデメリットとしてよく挙げられるのが、施設での介護職経験が通用しない部分があるという点です。というのも、介護施設では介護内容がある程度定まっており、食事なども基本的には共通のものを提供しますが、訪問ヘルパーの場合は介護を受ける高齢者からの様々な要望を受けることがあります。
これが介護の範疇を超えることもしばしばあり、「これって家事代行では?」と悩んでしまうケースもあるのがデメリットとして挙げられます。
訪問介護員になるための資格
ホームヘルパーになるために必要な資格というのは特にありません。 資格ではなく特定の研修を受けることで訪問介護員になることができます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、昔でいうホームヘルパー2級と同等の資格であり、全130時間の講義を受講後、約60分官の試験に合格することで本研修の修了者として認定されます。
この介護職員初任者研修に受講する資格は特になく、この研修を修了している方はホームヘルパーだけでなく介護職全般にも適用される研修となりますので介護関連で働いていくと決めた方は必ず必要となる資格です。
介護職員実務者研修
介護職員実務者研修とは、昔で言うホームヘルパー一級と同等の資格であり、全450時間の講義を受講することで修了者として認定されます。
こちらは介護職員初任者研修と違い試験は義務付けられていませんが、受講を行ったスクールによってはテストの受験や課題提出を求めることもありますが、この研修を修了していることにより介護福祉士試験の受験資格の一つをクリアしたことになりますので、介護関係でさらにキャリアアップを目指したいという方は取得しておくことをお勧めします。
訪問介護員はどんな人に向いている?
訪問介護員の仕事に興味はあるけど、自分は向いているのかと心配している方もいるでしょう。基本的に訪問介護員に向いているという人は、責任感が強く一人一人としっかり向き合うことができて臨機応変に適切な判断を下せる人が向いていると言われています。
訪問介護員は基本的に一人での仕事です。訪問介護中に高齢者の身に 異常事態が発生する可能性、高齢者から過剰なサービスの提供を求められる可能性、高齢者に満足していただけるサービスの提供など、無意識のうちに様々な判断を求められる場面に遭遇します。
助けてくれる人が基本的にはいない状況で、上記のような場面に遭遇してもどうぞ立ち向かえる自信があるという方におすすめの仕事となります。
「何かの世話をするのが好き」という方も介護向きとは言えますが、そういう気持ちだけでは乗り切れないというのが現状と言えますので、これから紹介する仕事内容などをよく確認して判断しましょう。
訪問介護員の仕事内容
これまでは訪問介護員に関する基本的な情報や、訪問介護員になりたいという方向けの情報をお伝えしてきました。ここからは具体的に、訪問介護員がどういった仕事を行うのかという点について紹介していきます。
特に、訪問介護員では基本的に一人での作業となることからして良い仕事としてはいけない仕事というのが明確に分かれていますので、その辺りをよく確認しておくことをお勧めします。
訪問介護員ができる仕事内容
訪問介護員ができることは主に、「基本的な介護」と、「生活の援助」というくくりに分けられます。この章ではそれぞれの仕事内容とについて紹介していきます。
身体介護
身体介護とは、高齢者の体に触れるような介護を基本的には意味します。例えば排泄や入浴、食事の介助、 移動などの歩行介助、車椅子への乗降、着替えや洗面などが主に挙げられるでしょう。
生活の援助
生活の援助は、日常の家事全般のサポートを意味します。身体介護と違い、直接高齢者の身体に触れませんが、高齢者の日常生活に必要となる火事の援助を行います。
具体的には、掃除や洗濯、食事の調理・用意、 食事のための買い出しや薬の受け取りなどが挙げられ、何らかの理由で高齢者の家族が高齢者にしてあげられないような生活の援助を実施します。
訪問介護員ができない仕事内容
訪問介護員が特に気をつける必要がある点がこの、訪問介護員ができない仕事内容となります。ここでは医療行為と家事の代行、というくくりに分けて紹介しますが特に医療行為についてはきちんと確認しておきましょう。
医療行為
医療行為は医師免許を持った医師にのみ行為として許されている物。しかし、高齢化が進んだことによって医療行為の内容というものが見直され、一部が「医療的ケア」という名目に分類されて、訪問介護員でも実施が許可される行為がいくつかあります。
この医療的ケアに位置づけられるものは、基本的に医師の診断や専門知識を必要としない医療行為を指します。例えば軽い傷に薬や軟膏を塗ること、湿布薬を貼ること、市販の浣腸を行うこと、病院などで医師や薬剤師より処方された薬を飲ませること、人工肛門の管理、導尿の補助、座薬を入れるという行為が医療的ケアに位置付けられます。
反対に、訪問介護員には認められていない医療行為というものは具体的に、インシュリン注射、血糖値の測定、医師の診断なく傷の消毒いや薬を塗布するような行為があげられます。血圧に関しては、測定するだけなら医療行為にはなりませんが、数値を基に何かしらの判断を下して、処置を行えば医療行為に該当します。
この医療行為と、医療的ケアに位置づけられるものは知識がない方にとっては判別が難しいため、予めよく理解しておきましょう。
家事の代行
訪問介護は基本的に、高齢者の家族では賄えない部分の保証というのが目的。 家事代行サービスとは全く別のサービスとなるため、高齢者の日常生活に関係ない家事の代行は基本的に行ってはいけません。
例えば、高齢者が立ち入ることがない部屋の掃除、高齢者の年金など金銭の管理、ペットのお世話などといった、対象となる高齢者の日常生活から外れた部分の援助というのは訪問介護員が行うべき生活援助にはなりませんので注意が必要です。
訪問介護員が働く場所について
訪問介護員は個人で行うのではなく、基本的には介護保険法で指定されている訪問介護事業所というところに所属して働くのが一般的です。この事業所には社会福祉法人や NPO を始め、民間の企業もあります。近年では民間の訪問介護事業所という、いわゆるヘルパーステーションというものも一般的になっています。
訪問介護員は上記で紹介した事業所に所属する以外にも、これから紹介する老人ホーム、介護サービス付き高齢者住宅、高齢者専用住宅という場所でも活躍しています。
この章では、訪問介護員用の事業所以外で働いている訪問介護員の働き方について紹介していきます。
老人ホーム
老人ホーム自体が大きく二種類に分けられ、介護付き老人ホームと介護サービスが含まれない住宅型有料老人ホームに分かれます。今回紹介するのが、公社の住宅型有料老人ホームで、この老人ホームには介護サービスを行う資格を持ったスタッフは常駐しません。
こういった時に、訪問介護員が老人ホームに呼ばれ適切な介護を提供するという働き方もあります。
介護サービス付高齢者住宅
この介護サービス付き高齢者住宅というのは、民間の企業が運営しているバリアフリーに特化した賃貸住宅です。この高齢者住宅はバリアフリーに特化していることから、日常生活が送りやすいと言うメリットだけでなく、訪問介護員が定期的に介護を行うことをセットにしてサービスとして提供されていることが多く、この場合でも事業所に所属した訪問介護員が活躍しています。
まとめ
今回は訪問介護員という職種についての基本的な説明と、 具体的な仕事内容について紹介しました。高齢化社会が進む日本という国では、このような介護職が常に求められている状態。
記事内で紹介したような、なにかの世話をするのが好きで、責任感が強く一人一人としっかり向き合うことができて臨機応変に適切な判断を下せる人というのはこの訪問介護員に適任です。そうでなくても、必要となる研修を終えるためのスクールで心を打たれ、高齢者の最期を見届けるためのサポートをしたいと思う方もいるようです。
そういった方は、本記事で紹介したようなメリットやデメリット、そして何より実際に訪問介護員として働いている方のリアルな声というのを参考にしてみてはいかがでしょうか。