「訪問介護員(ホームヘルパー)ってなに?」
「無資格で訪問介護員になれる?」
結論、無資格で訪問介護員になるのは不可能です。
ただし無資格者向けの求人があり、働きながら資格取得を目指せるのをご存知でしょうか?
上記は一例ですが、他にも訪問介護員について正しく知られていないことが多く、ホームヘルパー志望者や有資格者が年々減少しています。
そこで本記事では、以下の内容について解説します。
- 訪問介護員の仕事内容や給料
- 訪問介護員のできること・できないこと
- 資格取得のための方法・最短ルートの紹介
ぜひこの記事を読んで、訪問介護員について理解を深めていきましょう。
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容は?
訪問介護員(ホームヘルパー)は、高齢者や障がい者の自宅に出向いて利用者の手伝いをします。
主に家事や買い物、入浴や排せつの介助などが仕事内容です。
しかしサポート内容は定義されているものの、実際には現場で臨機応変対応することがホームヘルパーの役割。
利用者のなかには気難しい性格の方もいるため、コミュニケーション力が求められる仕事といえるでしょう。
訪問介護員にできることは限られていますが、現場では積極的で自主性のある方が重宝されます。
ちなみによく訪問介護員のことを「ホームヘルパー」と呼びますが、これは正式な名前ではないので覚えておきましょう。
訪問介護員という仕事の魅力や向いている人とは?
訪問介護員にとって、利用者のサポートが1番大切な仕事です。
そのため幼いころから世話好きだったような、心優しい人に向いているといえるでしょう。
「昔は自分でできていたのに」と落ち込んでいる利用者もいるため、親身になれる人でなければ訪問介護員は務まりません。
また気配りができたり、笑顔を褒められたりしたことがある人にも訪問介護員が向いています。
訪問介護員の仕事における魅力は利用者に感謝されたり、助かっていると声をかけられたりすること。
これらをやりがいとして感じられれば、訪問介護員の素質があるでしょう。
訪問介護員には2種類の働き方がある
訪問介護員には、以下のように2種類の働き方があります。
- 常勤ヘルパー
- 登録ヘルパー
ここからは、それぞれの働き方とメリットやデメリットについて解説します。
常勤ヘルパーの場合
常勤ヘルパーとは、正社員としてフルタイムの時間で働く雇用形態のこと。
シフト制をとっていることが多いため、同じ時間ではなくても基本的に毎日出勤します。
給与は月給制であることが多く、一般的な会社員と大差ないでしょう。
毎日の仕事で訪問介護の仕事内容に詳しくなれたり、月給制なので安定していたりすることがメリット。
しかしデメリットとしては、後述する登録ヘルパーのシフトに穴があればカバーしなくてはいけないところです。
また訪問介護の仕事内容に差はありませんが、責任や見えないところでの業務が大きい可能性もあります。
登録ヘルパーの場合
登録ヘルパーとは、働きたい時間や日にちを自分で決める雇用形態のこと。
短時間勤務が可能なので、家庭の都合を優先できるというメリットがあります。
一方、デメリットとしては時給制という点。
正社員ではないため、保証などは最低限しかありません。
さらに体調を崩し出勤できない日が続けば、その分給料は下がります。
長期的に訪問介護員をするのであれば、常勤ヘルパーのほうが安心感はあるでしょう。
訪問介護員ができること
ここからは、訪問介護の仕事内容に組み込まれている範囲を説明します。
- 身体介助
- 生活援助
1つずつ解説するので、参考にしてみてください。
身体介助:食事・入浴・排泄
身体介助とは、訪問介護員が直接身体に触れて行うものを指します。
訪問介護の仕事内容としてできるのは「着替え」「食事」「入浴」「排泄」のお手伝いや「体位変換」。
これらは特に身体の不自由な方に行うもので、基本的には自主的に行うよう促します。
体位変換とは?
体位変換とは、床部分と面する場所に床ずれができないように体制を変えること。
主に寝たきりや、車椅子に長時間座っている利用者に行う。
生活援助:買い物代行・掃除・家事
生活介助とは、訪問介護の利用者が日常生活で行うものを指します。
訪問介護の仕事内容としてできるのは「洗濯」「掃除」「調理」「買い物」など。
高齢者にとって重労働であるものは、ケガにつながる危険性があります。
サポートするというよりも、生活介助については訪問介護員が行うことが多いです。
訪問介護員ができないこと
ここからは、訪問介護の仕事内容に組み込まれていない範囲を説明します。
- 医療行為
- 日常生活の範囲外における代行
特に医療行為に関しては、犯罪になるので気を付けましょう。
医療行為
医療行為とは、簡単にいうと医者や看護師が行う処置などのこと。
たとえばインスリン注射を自分で打っている利用者から頼まれて、代行するのは医療行為になります。
ただし本人が注射をしやすいように、サポートするのは可能。
原則として医療行為でないと考えられるものは、以下のものになります。
- 体温測定
- 血圧測定
- 動脈血酸素飽和度の測定
- 切り傷、擦り傷、やけどの簡易処置
- 医薬品使用の介助
つまり生命の維持に直接かかわらないものであれば、サポートが可能です。
動脈血酸素飽和度の測定とは?
心臓から全身へ運ばれる、血液中のヘモグロビン数値を調べること。
人差し指の先に小さな測定器(パルスオキシメーター)を挟むだけで、動脈血酸素飽和度が測れる。
日常生活の範囲外における代行
日常生活の範囲外というのは、毎日の生活に必須ではないものということ。
たとえばお墓参りなど、一時的な行事やイベントなどを指します。
訪問介護員の仕事内容に組み込まれているのは、あくまでも「日常生活内の介助」なので上記は行いません。
注意:平成24年から痰の吸引ができるようになった
平成24年4月に「社会福祉士および介護福祉士法」の一部改正により、痰の吸引や経管栄養などの医療行為ができるようになりました。
これらが当てはまるのは「喀痰吸引等研修を修了している人」のみであり、該当しない介護職員はこれらを行うことができません。
訪問介護員でも緊急時には仕事内容に組み込まれるため、まだ「喀痰吸引等研修」を受けていない人は早めに修了することをおすすめします。
訪問介護員(ホームヘルパー)に関する罰則
近年、訪問介護員によって利用者が虐待を受けるという事件が増加中。
こういったことを避けるため「医師法」「介護保険法」「老人福祉法」「個人情報保護法」「高齢者虐待防止法」など、法律でしてはいけないことが定められています。
このなかでも「高齢者虐待防止法で定義する虐待はすべて犯罪になる」ということを、介護に携わる全ての人が認識すべきです。
もし利用者の身体に傷をつけた場合は、虐待として「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されることになります。
責任感を持って、慎重に行う必要のある業務だと再認識しておきましょう。
訪問介護員になるための資格
訪問介護員の仕事内容を理解し、それでも目指したい場合は資格を取得する必要があります。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- 国家資格:介護福祉士
まずは「介護職員初任者研修」を取得し、次のステージとして「実務者研修」の資格がおすすめです。
もし本格的に介護を学びたいのであれば、学校へ通い「介護福祉士」の国家資格を受けると良いでしょう。
ではここから、1つずつ資格について解説していきます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは、以前にあったヘルパー2級のこと。
名称変更されただけではなく、ヘルパー2級とは異なる点があるので軽く紹介します。
修了試験の実施
ヘルパー2級ではカリキュラムを修了することで資格付与されましたが、介護職員初任者研修では修了試験があります。
しかし授業を理解できていれば、特に難しいものではありません。
最終テストのように受けることで、介護職員初任者研修の資格をとりましょう。
30時間の実習が廃止
ヘルパー2級では訪問介護やデイサービスなどで、約5日(30時間以上)の実習がありました。
しかし完全になくなったわけではなく、任意で実習を受けることができます。
スクリーング時間の増加
介護職員初任者研修では、30時間の実習がなくなる代わりにスクリーング時間が増加します。
約15日ほどスクールに通い、自宅学習と並行して勉強しましょう。
理解が難しい点をすぐに聞ける環境なので、ヘルパー2級のころと比べれば学習しやすいといえます。
認知症ケアについての科目追加
介護職員初任者研修では、認知症ケアについての科目が追加されています。
これは訪問介護で認知症の方と会う際に役立ったり、認知症ケア専門の施設で働く際に有効です。
高齢者が増加するとともに認知度患者の人数も増えているため、こういった対応が追加されました。
これにより、より多くの介護士が認知症ケアへの理解を深められるでしょう。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の一段階上の資格。
介護職員初任者研修が「介護士への入門者向け」だとすると、実務者研修は「高度な介護を求める人向け」です。
介護福祉士実務者研修は、以下のような人に向いています。
- 介護職員初任者研修を取得した人がさらに介護について知識を深めたい
- 国家資格の介護福祉士を取得する前段階
介護福祉士実務者研修の平均的な学習時間は、1.5~6ヵ月。
介護職員初任者研修と同じく、スクーリングと自宅学習の2つを同時並行して行います。
ここからは介護福祉士実務者研修を受けるメリットを紹介します。
サービス提供責任者になれる
介護福祉士実務者研修に合格すると「サ責」と呼ばれる、サービス提供責任者になることができます。
これは訪問介護事業所にかならずサービス提供責任者を配置するという、2019年4月から必須になったもの。
サービス提供責任者になれれば、資格手当がもらえるため報酬アップも望めます。
痰吸引と経管栄養が学べる
先述しましたが、介護士が痰吸引と経管栄養ができるようになりました。
しかしこれは全員が該当するわけではなく、この介護福祉士実務者研修を修了している人のみとなります。
医療行為に当たる痰吸引と経管栄養ですが、介護福祉士実務者研修を受験し別途研修を受けることでサービス提供可能です。
国家資格:介護福祉士
介護福祉士は、今回紹介した3種類のうち唯一の国家資格です。
より深い介護の知識を身につけるため専門性が高く、身体上・精神上のケアや現場職員の指導・育成を行います。
簡単に取得できる資格ではないため、就職や転職にも有利でしょう。
ここからは介護福祉士の資格を取得することで得られるメリットを、解説していきます。
報酬が高くなる
介護福祉士は国家資格なので、資格手当がもらえます。
さらに1か月の基本給も高くなり、無資格者と比較して毎月約52,000円ほど上乗せされることに。
ボーナスのもらえる額も増えるため、国家資格のメリットといえるのではないでしょうか?
できることの幅が広がる
介護福祉士の資格を取得していると、サービス提供責任者や生活相談員、チームリーダーなどの役職に就くことができます。
介護の世界では深刻な人材不足に陥っているため、こういった資格者は重宝されるでしょう。
就職の際に役立ったり、よりよい事業所への転職の際に有利に働いたりします。
生活援助従事者研修とは?
今回は触れていなかったのですが、生活援助従事者研修というものも存在しています。
これは2018年4月に創設された資格で、まだ歴史の浅いもの。
主に訪問介護における生活援助者を育成するための資格で、誰でも受かりやすいような資格となっています。
介護超初心者入門として取得する資格なので、あまり実務には活かせません。
しかし介護職員初任者研修よりもはるかに簡単な資格なので、不安な方は「生活援助従事者研修」を受けることをおすすめします。
まとめ|訪問介護員になるなら初任者研修がおすすめ
今回は訪問介護員の仕事内容や資格、覚えておきたい罰則まで徹底的に紹介しました。
実際には医療行為などをしないように注意しながら、現場で学べるというのも介護の特徴です。
年々、介護資格者が減少しているので興味を持つ人が1人でも多くなるように、当サイトでは介護職について発信していきます。
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