介護職について

介護職は給料が低い理由は?これから給料が上がる可能性が高い理由について解説!

介護職は現在の日本にとって重要な職業といえます。

その理由としては、現在の日本最大の課題が高齢化社会である事が挙げられます。

しかし、そんな介護職ですが給料が低いと言われていることをご存知でしょうか。

なぜ、重要な職業と位置づけられている介護職の給料が低いのか、今後この給料が上がる可能性はあるのか。

本記事では介護関連の職種における給料の現状と今後について解説していきます。

介護職の種類と現在の平均年収

介護職の種類と現在の平均年収

まず現状の介護職における給料事情について説明していきます。

まず日本全体における主な産業と比較すると、介護職の給料は平均して約11万円も低いことが明らかになっています。

なぜこのような結果になってしまったのかについては後述しますので、まずは介護に関連する職種の給料事情について見てみましょう。

一般介護職

一般的な介護職員は、介護保険サービスを担う方で、要介護者(※)に対してその方がいきいきとした日常生活が遅れるように日常生活の援助を行います

※日常生活に対して介助が必要とされている方

高齢化が進んでいる日本の場合、高齢者の数から逆算すると2025年度末には約243万人の介護職が必要になるという厚生労働省の調査結果(※)もあります。

※第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について(2021年7月9日公表)

訪問介護など様々な場所で働く一般の介護職員ですが、給与状況は下記のとおりになっています。

一般介護職の場合
平均給与額(円) 315,850
平均基本総額(円) 182,260
平均手当額(円) 78,440
平均一時金額(円) 55,150

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 引用 厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査より

看護職員

介護施設で働く看護職員の主な業務内容は、利用者の健康・投薬管理です。

日常活動をサポートする介護職員に対して、看護職員は医療に関してのサポートを行います

介護施設によっては医師が常駐していない場合もあるので、医療処置が行える看護職員は重要です。

病院と介護施設では業務内容が異なる点もある看護職員ですが、介護施設で働く場合の給与状況は以下のようになっています。

看護職員の場合
平均給与額(円) 379,610
平均基本総額(円) 235,460
平均手当額(円) 74,520
平均一時金額(円) 69,630

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 引用 厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査より

生活相談員・支援相談員

生活相談員・支援相談員とは、介護施設を利用しようと考えてる方や、その家族の相談にのり、サポートを行う職種です。

施設利用にあたって、活用できる制度の提案や手続き、関係機関との調整など、豊富な知識が必要となる仕事であるため、生活相談員や支援相談員になるには、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事のいずれかの資格が必要です。

事務作業が主な業務ですが、介護職員との兼務している場合もあります。そんな生活相談員・支援相談員の給与状況は以下のとおりです。

生活相談員・支援相談員の場合
平均給与額(円) 343,310
平均基本総額(円) 213,000
平均手当額(円) 69,250
平均一時金額(円) 61,060

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 引用 厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査より

理学療法士

国家資格でもある理学療法士の業務内容は、利用者の立つ・座る・歩くなどの基本動作能力の回復・維持の支援です。

介護施設においては、対象が高齢者なため、身体機能の著しい改善は難しく、主に現状維持・悪化の予防が重要となります。

その他にも福祉用具の選定や調整、自宅のバリアフリーリフォームののアドバイスなども行います。

国家資格が必要となり、難易度の高い理学療法士ですが、給与状況は以下のようになっています。

理学療法士の場合
平均給与額(円) 358,560
平均基本総額(円) 228,040
平均手当額(円) 65,050
平均一時金額(円) 65,470

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 引用 厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査より

介護支援専門員

ケアマネジャーとも呼ばれる介護支援専門員は、介護サービス計画の立案が仕事です。

利用者一人一人の状況に応じて適切な介護サービスを提供できるようなケアプランを作成する重要な役割を担っています。

介護サービス計画を立てるだけでなく、その後の実施状況を確認したり、利用者の心身の変化によってはプランを変更したりなど、柔軟な対応が必要となる仕事です。

難易度の高い介護支援専門員資格の取得が必要な介護支援専門員の給与状況は以下のようになっています。

介護支援専門員の場合
平均給与額(円) 357,850
平均基本総額(円) 216,780
平均手当額(円) 77,410
平均一時金額(円) 63,660

令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 引用 厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査より

介護職はなぜ給料が低いのか

ここまで介護関連の職種における給料面を紹介しました。

月額の平均給与額だけで判別すると、「そこまで低くないのでは?」と思うかもしれませんが、前述の通り他産業と比較すると、介護職の給料は平均して約11万円も低いということが明らかになっています。

そもそもなぜ介護職の給料は低いのでしょうか。

その理由は大きく分けると下記の4つが考えられます。

  • 日本の介護報酬自体が少ない
  • 就職までの難易度が低い
  • 職種自体の需要が高い
  • 離職率が高い

様々な理由が合わさることで、介護職の給料は現在少なくなっているようです。

この章では、介護職の給料が少ない理由について解説していきます。

介護報酬が少ない

介護報酬とは、事業者が利用者(※)に対して介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に対して支払われる報酬のことを言います。

※要介護者または要支援者を指します。

この介護報酬は、介護サービスの種類ごとに定められ、特にサービス内容または利用者の要介護度、事業所や施設の所在地に応じて平均的な費用が決まる仕組みになっています。

介護報酬の基準額については最終的に厚生労働大臣が審議会の意見を聞いた上で最終決定されるため、このタイトルにもあるように「介護報酬が少ない」の意味合いは「国が承認している介護報酬の基準額が少ない」という意味になります。

介護報酬が決められているので、各々の事業所にて勝手に引き上げることもできないことから、職員の給与額も自ずとある程度定まります。

つまり、事業者ごとに給与を売上に応じて自由に設定する、といった行為がし辛いことから、介護関連の職員の給料が全体的に低い状況を生んでしまうのです。

就職までの難易度が低い

介護職は、要介護または要支援状態にある方に対して介護サービスを提供する職種です。介護に関連する職業は前述のように多くありますが、無資格であっても介護士として働くことが可能です。

現代の給与水準はある程度資格や業種によって決まることが多いです。

つまり、介護職は無資格でも就職できるという点は働き手にとってはメリットとなりますが、反対に資格や経験が必須となる職種と比較すると専門性がないという評価となってしまうのです。

結果として、他の業界と比較すると平均給料が低くなってしまうことにつながっていると考えられます。

職種自体の需要が高い

日本は圧倒的に高齢化社会が進行しており、今後日本の人口は減少しても高齢者人口割合のみは増加し続けることがわかっています

これにより、介護関連の仕事の需要は確実に今後も伸びます。実際現時点で介護という職種はずっと需要が上昇傾向なのは間違いありません。

ここからの判断は政府次第となるため、一概には言えませんが、「需要が増え続けるとわかっている職種」、「無資格でも就職できるチャンスが多い職種」という介護職を給料をこれから長期的に見ると引き上げなくてもいいのではないかと判断されているのが現状でしょう。

実際、給料が低いことにより「需要が多いのに人手が足りない」という状況を作り出してしまっているので、悪循環であることは間違いありません。

離職率が高い

介護関連の仕事は3K(※)とよく表現されています。

※3K─きつい・汚い・危険

様々なネガティブイメージが積み重なることにより、実際離職率が高いという事業所の悩みが多いのが現状です。

離職率が高いと、その事業所では提供できるサービスに制限がかかることになるため、先程紹介した介護報酬の仕組みによって職員に回せる給料も影響を受けてしまうことに繋がります。

今後の介護職は給料が上がると言い切れる理由

今後の介護職は給料が上がると言い切れる理由

高齢化社会が進む中で、介護職員を確保して高齢化社会を乗り切る体制をつくることは国の課題です。

これまで、なぜ介護職員の給料が少ないのかという問題について紹介しましたが、これらの課題を根本から解決させることが国に求められます

問題点を多く抱えている介護の給料事情ですが、今後の介護職は給料が必ず上がると言い切ることができます

その理由についてこの章では解説していきます。

政府が介護職の給料アップを明言

自民党の岸田文雄首相は、新政権の経済対策の一環として、介護職の賃金上昇に注力することを明言

これまでの賃上げや促進税制が十分でないことに触れ、介護報酬の支払われ方と単価について高齢労働省と分析して再度徹底的に見直し、最終的には上昇させることを発表しています。

「これまでの賃上げ」と表現しましたが、これまでに実際どのような待遇の改善が行われてきたのでしょうか。

まず2009年~2012年にかけて介護職員処遇改善交付金という政策が実行されました

そして2012年には介護職員処遇改善加算が導入され、介護職員の賃金改善を目的として施設に賃金が支給される仕組みづくりが考えられていました。

これらの取り組みも現在の課題と同様に、介護職員の賃金を向上させることによって、2025年までに介護関連の人材を確保することを目的として実施されていました。

これらが「これまでの賃上げ」に該当すると考えると、国は介護職員に対する給料において真面目に検討していること、実際に行動に移している背景があることから、これからの給料はまた見直されることに期待ができるのです。

介護報酬の改定

もう一つの大きな理由は、令和3年度に実施された介護報酬の改定です。

令和3年1月に、厚生労働省より「令和3年度介護報酬の改定の主な事項について」が公表されました。その内容は以下のとおりです。

新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を測るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図る。

改定率:+0.70%

令和3年度介護報酬改定の主な事項について より引用

この中で、「介護人材の確保・介護現場の革新」が掲げられています。その内容は以下のとおりです。

  1. 介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進
    • 処遇改善加算や特定処遇改善加算の職場環境等要件について、職場環境改善の取組をより実効性が高いものとする観点からの見直しを行う。
    • 特定処遇改善加算について、制度の趣旨は維持しつつより活用しやすい仕組みとする観点から、平均の賃金改善額の配分ルールにおける
      「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」について、「より高くすること」と見直す。
    • サービス提供体制強化加算において、サービスの質の向上や職員のキャリアアップを推進する観点から、より介護福祉士割合や勤続年数の長い
      介護福祉士の割合が高い事業者を評価する新たな区分を設ける。訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護の特定事業所加算、サービス提供
      体制強化加算において、勤続年数が一定以上の職員の割合を要件とする新たな区分を設ける。
    • 仕事と育児や介護との両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、各サービスの人員配置基準や報酬算定に
      おいて、育児・介護休業取得の際の非常勤職員による代替職員の確保や、短時間勤務等を行う場合にも「常勤」として取扱うことを可能とする。
    • ハラスメント対策を強化する観点から、全ての介護サービス事業者に、適切なハラスメント対策を求める。
  2. テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進
    • テクノロジーの活用により介護サービスの質の向上及び業務効率化を推進していく観点から、実証研究の結果等も踏まえ、以下の見直しを行う。
      • 特養等における見守り機器を導入した場合の夜勤職員配置加算について、見守り機器の導入割合の緩和(15%→10%)を行う。見守り機器100%の導入やインカム等のICTの使用、安全体制の確保や職員の負担軽減等を要件に、基準を緩和(0.9人→0.6人)した新たな区分を設ける。
      • 見守り機器100%の導入やインカム等のICTの使用、安全体制の確保や職員の負担軽減等を要件に、特養(従来型)の夜間の人員配置基準を緩和する。
      • 職員体制等を要件とする加算(日常生活継続支援加算やサービス提供体制強化加算等)において、テクノロジー活用を考慮した要件を導入する。
    • 運営基準や加算の要件等における各種会議等の実施について、感染防止や多職種連携促進の観点から、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
    • 薬剤師による居宅療養管理指導について、診療報酬の例も踏まえて、情報通信機器を用いた服薬指導を新たに評価する。
    • 夜間対応型訪問介護について、定期巡回と同様に、オペレーターの併設施設等の職員や随時訪問の訪問介護員等との兼務、複数の事業所間での
      通報の受付の集約化、他の訪問介護事業所等への事業の一部委託を可能とする。
    • 認知症GHの夜勤職員体制(現行1ユニット1人以上)について、利用者の安全確保や職員の負担にも留意しつつ、人材の有効活用を図る観点から、
      3ユニットの場合に一定の要件の下、例外的に夜勤2人以上の配置を選択することを可能とする。
    • 特養等の人員配置基準について、人材確保や職員定着の観点から、入所者の処遇や職員の負担に配慮しつつ、従来型とユニット型併設の場合の
      介護・看護職員の兼務、小多機と併設する場合の管理者・介護職員の兼務等の見直しを行う。
    • 認知症GHの「第三者による外部評価」について、自己評価を運営推進会議に報告し、評価を受けた上で公表する仕組みを制度的に位置付け、
      当該仕組みと既存の外部評価によるいずれかから受けることとする。
  3. 文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進
    • 利用者等への説明・同意について、電磁的な対応を原則認める。署名・押印を求めないことが可能であることや代替手段を明示する。
    • 諸記録の保存・交付等について、電磁的な対応を原則認める。
    • 運営規程等の重要事項の掲示について、事業所の掲示だけでなく、閲覧可能な形でファイル等で備え置くこと等を可能とする。

こういった取り組みから、喫緊・重要な課題として「介護人材の確保・介護現場の革新」に対応しているという姿勢が見て取ることができます。

まとめ

まとめ

今回の記事では、介護現場の給料がなぜ少ないのか、今後は給料が上がる見込みがあるのかについて解説しました。

結果として、国が重要な問題として介護の給料事情について取り組んでおり、様々な見直しがまさに今行われていることが分かりました

介護職は間違いなくこれから必要な人材です。これからの政策に期待したいですね。

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