介護を行う人や要介護者にとって福祉用具は欠かせませんが、そんな福祉用具に関するプロフェッショナルといえるのが福祉用具専門相談員です。
今後ますますニーズが高まる介護業界ですから、「福祉用具専門相談員の資格をとって就職に役立てよう」とお考えの人もいることでしょう。
そこでこの記事では、福祉用具専門相談員の資格取得の方法と就職先を探すのにおすすめの転職サイトをご紹介します。
また「介護の仕事の内容」について詳しく知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員とは、福祉用具を使用する方やその家族、担当のケアマネジャーなどへ福祉用具に関するアドバイスを行う専門家のことをいいます。(国家資格ではありません)
介護保険制度における福祉用具貸与事業を行う各事業所に2名以上の配置が義務付けられているため、常に一定のニーズがある職業です。
主な就職先としては、
- 福祉用具貸与事業所
- 福祉用具販売店
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 福祉用具を製造している民間企業
などがあります。
福祉用具専門相談員の求人
福祉用具貸与事業を行う各事業所には必ず必要な福祉用具専門相談員ですが、求人の数はさほど多くはありません。
その理由は介護士が福祉用具専門相談員の資格を持っていることが多いから。そのため専門職として福祉用具専門相談員を配置している企業が少ないのです。
つまり「専門職として福祉用具専門相談員になりたい」と考えるより、「福祉用具専門相談員の資格を持っているから面接に合格しやすい」と考える方が妥当です。
福祉用具専門相談員と併せて所得しておきたい資格
福祉用具のレンタル業を行う企業に就職する場合は、福祉住環境コーディネーターも併せて取得しておくとキャリアアップの道が大きく開けます。
というのも、福祉用具のレンタル業を行う企業は住宅の改修も行っているケースが多いから。2級を取得しておけば人事評価で優遇されるのは間違いありません。(福祉住環境コーディネーターは1級から3級まであります)
なお、車で移動しながら福祉用具サービスの営業を行うことが多いので「普通自動車免許」は必須です。
福祉用具専門相談員になるには
福祉用具専門相談員になるには二つの方法があります。
一つ目は福祉用具に関する知識を有している国家資格保持者を取得すること。
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 義肢装具士
上記を取得すれば各事業所において福祉用具専門相談員の業務をこなすことができます。とはいえ、どの資格もそれなりにハードルが高く取得までに時間がかかってしまうのがネック。
そこでおすすめなのが二つ目の方法である「都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する福祉用具専門相談員指定講習を受講すること」です。
この方法であれば50時間のカリキュラムと修了評価(筆記試験のようなもの)をクリアするだけ。カリキュラムは1週間ほどで終了しますし、費用は4~6万円と他の方法と比べてかなり安くて済みます。
ご紹介した通り、福祉用具専門相談員だけでは有力な資格とはいえず、他の資格も必要になります。実務をこなしながら勉強する人もいるでしょうから、福祉用具専門相談員の資格は短期の講習で終わらせるほうが有意義ですよ。
福祉用具専門相談員指定講習のカリキュラム
福祉用具専門相談員の資格取得方法としておすすめの講習ですが、勉強が苦手な人にとってはどんなカリキュラムなのかが気になるところでしょう。
そこで福祉用具専門相談員指定講習のカリキュラム全50時間について詳しくご紹介していきます。
<カリキュラム1:福祉用具と福祉用具専門相談員の役割>
科目 | 内容 |
福祉用具の役割 (1時間) |
福祉用具の定義と種類 ・介護保険制度や障害者総合支援制度等における福祉用具の定義と種類 福祉用具の役割 ・利用者の日常生活動作(ADL)等の改善 ・介護負担の軽減 福祉用具の利用場面 |
福祉用具専門相談員の役割と職業倫理 (1時間) |
介護保険制度における福祉用具専門相談員の位置付けと役割 福祉用具専門相談員の仕事内容 ・福祉用具による支援(利用目標や選定の援助、使用方法の指導、機能等の点検等) 職業倫理 ・福祉用具専門相談員の倫理(法令順守、守秘義務、利用者本位、専門性の向上等) |
<カリキュラム2:介護保険制度等に関する基礎知識>
科目 | 内容 |
介護保険制度等の考え方と仕組み (2時間) |
介護保険制度等の目的と仕組み ・介護保険法の理念(尊厳の保持、自立支援、利用者選択と自己決定等) ・介護保険制度の仕組み(要介護認定、サービス提供、費用負担等) ・介護サービスの種類と内容 ・高齢者・障害者の保健・福祉に関連した制度(障害者総合支援法等)の概要 地域包括ケアの考え方 ・地域包括ケアの理念(住み慣れた地域での生活の継続、包括的な支援等) ・構成要素(医療・介護・予防・住まい・生活支援)と多様な支え方(自助・互助) ・地域包括ケアを担う各専門職の役割・責務について理解する ・地域包括ケアを担う各専門職の役割・責務を列挙できる。 ・地域ケア会議の役割・機能 ・医療・介護に関わる各専門職の役割 |
介護サービスにおける視点 (2時間) |
人権と尊厳の保持 ・プライバシー保護、身体拘束禁止、虐待防止、ノーマライゼーション、エンパワメント、クオリティオブライフ(QOL) ケアマネジメントの考え方 ・ケアマネジメントの意義・目的(人間の尊厳、自立支援及び自己決定・自己実現) ・ケアマネジメントの手順(アセスメント、ケアプラン作成、サービス担当者会議、説明と同意及びモニタリング) ・居宅サービス計画と福祉用具貸与計画等との関係性 ・介護予防の目的と視点 ・国際生活機能分類(ICF)の考え方 ・多職種連携の目的と方法(介護に関わる専門職の種類と専門性及びサービス担当者会議等での連携の具体例) |
<カリキュラム3:高齢者と介護・医療に関する基礎知識>
科目 | 内容 |
からだとこころの理解 (6時間) |
齢に伴う心身機能の変化の特徴 ・身体機能の変化の特徴(筋・骨・関節の変化、認知機能の変化、体温維持機能の変化、防衛反応の低下、廃用症候群等) ・心理機能の変化の特徴(喪失体験、環境への不適応等) 認知症の理解と対応 ・認知症の症状 ・認知症高齢者の心理・行動の特徴と対応 |
リハビリテーション (2時間) |
リハビリテーションの基礎知識 ・リハビリテーションの考え方と内容 ・リハビリテーションに関わる専門職の役割における福祉用具の関係性を理解する ・用具の関係性と、リハビリテーションに関わる専門職との連携におけるポイントを列挙できる リハビリテーションにおける福祉用具の役割 ・リハビリテーションで用いられる福祉用具の種類と内容 ・リハビリテーション専門職との連携 |
高齢者の日常生活の理解 (2時間) |
日常生活について ・生活リズム、生活歴、ライフスタイル、家族や地域の役割等 基本的動作や日常生活動作(ADL)の考え方 ・基本的動作の種類と内容(寝返り、起き上がり、座位、立上り、立位、着座、歩行、段差越え、階段昇降等) ・日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)の種類と内容 ・自宅や地域での日常生活を通じた介護予防 |
介護技術 (4時間) |
日常生活動作(ADL)における基本的な介護技術 ・介護を要する利用者の状態像 ・日常生活動作に関連する介護の意味と手順、その際に用いる福祉用具 |
住環境と住宅改修 (2時間) |
高齢者の住まい ・住宅構造・間取り・設備の種類等の高齢者の住まいにおける課題 住環境の整備 ・住環境整備の考え方 ・基本的な整備のポイント(トイレ、浴室、玄関、居室等の段差解消、床材選択、手すりの取付け等) 介護保険制度における住宅改修 ・住宅改修の目的、範囲、手続きの手順等 |
<カリキュラム4:個別の福祉用具に関する知識・技術>
科目 | 内容 |
福祉用具の特徴 (8時間) |
福祉用具の種類、機能及び構造 基本的動作と日常の生活場面に応じた福祉用具の特徴 |
福祉用具の活用 (8時間) |
各福祉用具の選定・適合技術 ・福祉用具の選定・適合の視点と実施方法 ・福祉用具の組み立て・使用方法と利用上の留意点(誤った使用方法や重大事故の例示を含む) 高齢者の状態像に応じた福祉用具の利用方法 |
<カリキュラム5:福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識>
科目 | 内容 |
福祉用具の供給の仕組み (2時間) |
福祉用具の供給の流れ ・福祉用具の製造、輸入、販売及び貸与の流れ ・介護保険法における福祉用具貸与事業の内容 福祉用具の整備方法 ・消毒、保守点検等 |
福祉用具貸与計画等の意義と活用 (5時間) |
福祉用具による支援の手順の考え方 ・居宅サービス計画と福祉用具貸与計画等の関係性 ・アセスメント、利用目標の設定、選定、福祉用具貸与計画等の作成、使用方法の説明、モニタリング等 ・状態像に応じた福祉用具の利用事例(福祉用具の組合せや利用上の留意点、見直しの頻度、医療・介護・地域資源との連携方法等) 福祉用具貸与計画等の意義と目的 ・記録の意義・目的(サービス内容の明確化、情報共有、エビデンス、リスクマネジメント) 活環境等を踏まえた利用目標の設定や選定の重要性を理解する。 ・モニタリングの意義や方法を理解する 用目標の設定や選定の重要性を概説できる ・モニタリングの意義や方法を概説できる 福祉用具貸与計画等の記載内容 ・利用者の基本情報、福祉用具が必要な理由、福祉用具の利用目標、具体的な福祉用具の機種と当該用具を選定した理由その他関係者間で共有すべき情報 福祉用具貸与計画等の活用方法 ・利用者・家族や多職種との情報共有とチームアプローチ モニタリングの意義と方法 ・モニタリングの意義・目的 ・モニタリング時の目標達成度の評価・計画変更 |
<カリキュラム6:福祉用具の利用の支援に関する総合演習>
科目 | 内容 |
福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成 (5時間) |
事例演習 ・事例に基づくアセスメント、利用目標の設定、福祉用具の選定及び福祉用具貸与計画等の作成の演習 ・利用者・家族やサービス担当者会議等での福祉用具貸与計画等の説明及びモニタリングに関するロールプレイング |
表にあらわすと随分と項目が多いようにみえますが、実際に受講してみるとさほど難しくはありません。
目的や考え方など概念に関することが多く、福祉の精神がある人なら一度聞けば分かる内容。膨大な丸暗記や複雑な計算があるわけではないので、真面目に50時間受講すればほぼ問題なく資格を取得できますよ。
福祉用具専門相談員希望者におすすめの就活サイト
福祉用具専門相談員の資格を取得すること自体はさほど難しくはありません。
あとはどうやって就職先を見つけるかですが、一番手っ取り早いのは就活・転職サイトに登録すること。
就活・転職サイトに登録すれば非常に多くの求人案件を閲覧し比較しながら応募先を決めることができます。また、各サイトが独自に提供している情報を活用し、仕事への理解や面接の有利な進め方を学ぶことも。
とくに以下の3サイトは内容が充実しているので大変おすすめですよ。
きらケア:レバレジーズメディカルケア株式会
「面接対策をしっかり行ってくれる」と評判なのがきらケアです。
面接時に想定される質問について予行演習ができるほか、実際の面接にも立ち会ってくれるので応募する側としては大変心強いはず。
当然、採用される確率が高くなるので「どうしてもこの会社に就職したい」というときはきらケアを使うと良いでしょう。
介護レポ:株式会社repo
介護レポは情報量が非常に多い転職サイトです。
普通の転職サイトであれば募集要項が記載されているだけですが、介護レポはその企業の職場の雰囲気や人間関係、教育体制、資格取得支援制度なども教えてくれます。
応募先に関する内部情報を知らないまま就職してしまうと入社後に後悔しがち。そうならないように介護レポでしっかり情報収集し、自分にあった職場かどうかを見極めるようにしましょう。
*引用元:https://www.repo.co.jp/kaigolp/
マイナビ介護:株式会社マイナビ
「たくさんの案件に目を通したい」という人にはマイナビ介護がおすすめです。
実に5万件以上もの求人案件が常時掲載されており、介護関連の就活・転職サイトとしては最大手。
給料や勤務形態、勤務地などにこだわりがある人でもマイナビ介護であればきっと納得できる求人案件が見つかることでしょう。
また、キャリアアドバイザーにキャリアプランや給料のことを相談できるので、介護業界に詳しくなくても安心して活動できます。
*引用元:https://kaigoshoku.mynavi.jp/
福祉用具専門相談員の資格を取得して就活に生かそう
この記事では、福祉用具専門相談員の資格取得の方法と就職先を探すのにおすすめの転職サイトをご紹介しました。
福祉用具専門相談員の資格があれば介護業界への就職・転職はかなり楽になります。
ご紹介した就活・転職サイトを使えばきっと満足のいく就職先が見つかることでしょう。ただし、福祉用具専門相談員としての求人は少なく、大抵の場合は介護士として採用されます。
なので、一般的な介護業務を行う可能性もあるということを覚えておきましょう。