福祉用具は、介護を必要とする方にとっては欠かせない存在ですが、介護の経験がない方にとってはあまり馴染みのないもの。
そんな福祉用具のエキスパート「福祉用具専門相談員」ですが、実際にどのような仕事をしているのか知らないという方も多いと思います。
そこで今回の記事では福祉用具専門相談員の仕事内容について紹介していきます。
他にも福祉用具専門相談員になるために必要な資格や、将来性についても説明していますので、福祉用具専門相談員を目指しているという方の参考になれたらと思います。
また「訪問介護の仕事内容」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員とは、車椅子や歩行器といった福祉用具の選び方や使い方の相談に乗り、要介護者やその家族などのサポートを行う福祉用具の専門家です。
介護保険制度の指定を受けている福祉用具のレンタル・販売事業所には、必ず2名以上の福祉用具専門相談員を配置することが義務付けられています。
日本の高齢化社会に伴い、福祉用具も進化・多様化が進んでおり、どの福祉用具が適切なのか、自分たちでは判断することは難しいもの。
そんな中で、利用者へ福祉用具のアドバイスをしてくれる福祉用具専門相談員は必要不可欠な職と言えるでしょう。
福祉用具専門相談員の主な勤務先
福祉用具専門相談員の主な勤務先は介護保険の指定を受けた福祉用具のレンタル・販売事業所です。
また、介護関連の法人以外でも、ホームセンターやスーパーなどの介護用品売り場や、バリアフリー工事を行うリフォーム業者など、福祉用具専門相談員の活躍の場が広がっています。
これは、福祉用具の需要増加につき、介護関連の事業所でなくても介護保険の指定を受けて福祉用具を取り扱っている場所が増えたためです。
他にも、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの福祉施設でも福祉用具専門相談員は活躍しています。
採用自体は介護職になりますが、入居者が使用する車椅子や歩行器の管理や、使いやすい食器の導入などで福祉用具の専門知識を活かすことができます。
福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員が行うメインの仕事は、利用者やその家族に福祉用具の選び方・使い方についてのアドバイスをし、サポートすることです。
その他にも福祉用具の点検・メンテナンスなどの仕事もあり、その内容は様々。
福祉用具専門相談員の仕事内容を大きく分けて5つ紹介します。
①福祉用具の選定をサポート
福祉用具専門相談員の最も重要な仕事は、福祉用具を実際に使用する方の心や体の状態、生活環境を考慮して福祉用具の選定をサポートすることです。
利用者ができる動作を実際に確認しながら、利用者の能力をできるだけ活用する方法を考え、どの福祉用具が適切なのかを考えて用具の選定を行います。
また、2018年10月から福祉用具のレンタル額に上限が設定され、利用者に対して福祉用具の全国平均貸与価格と、今回提案する用具のレンタル価格の説明が義務付けられています。
この説明も福祉用具専門相談員の仕事です。
②福祉用具の利用計画書を作成
福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーのケアプランと利用者・その家族の相談内容を考慮しながら福祉用具を利用した今後の生活プランをを考えた「福祉用具のサービス計画書」を作成します。
この計画書には、「福祉用具を利用して今後の生活をどのように変えたいのか」ということに基づいて、どの福祉用具をレンタル・販売し、その用具でどういった効果が期待されるのかということが記載していきます。
この計画書に利用者が同意することで、初めて福祉用具のレンタル・販売が行われます。
③福祉用具の納品・取り扱い説明
福祉用具の納品を行い、用具の正しく有効に使用してもらうための取り扱い説明も福祉用具専門相談員の仕事です。
利用者の身体の衰えによる使用状態なども考えて、福祉用具の仕様による事故を防ぐため、丁寧な説明・アドバイスをすることが大切です。
他にも、使用する福祉用具を利用者の体の状態や、生活環境に合わせて調整を行い、より快適に使用してもらうためのサポートも行っています。
④福祉用具の利用状況を確認・メンテナンス
福祉用具を貸し出し・販売した後、利用者の自宅を定期訪問することも福祉用具専門相談員の仕事内容の一つ。
この定期訪問は年に2回と義務付けられており、利用者や家族が福祉用具を正しく、安全に使用できているかの確認を行います。
また、福祉用具の使用状況から、レンタル販売時に立てた利用計画書の目的がどのくらい達成されているかも合わせて確認し、必要に応じて今後の利用計画書の方針を再考したり、サービスの見直しをしています。
定期訪問では利用状況の確認だけでなく、車椅子のタイヤの劣化具合や電動ベッドの挙動など、福祉用具の状態を細かく点検し、これからも安全に快適に使用できるようにメンテナンスも行っています。
⑤福祉用具の営業活動
福祉用具のレンタル・販売事業所に配属された場合では、上述したような業務だけでなく、新しい利用者の獲得を目指す営業としての仕事を兼任する場合も。
新規顧客を開拓する他にも、カタログやパンフレットの配布や、新しい商品の紹介などの営業活動を行います。
レンタル販売の予約がないときなどには、近くの居宅介護サービス事業所や介護施設を訪れて情報を収集し、地域のニーズに合わせた福祉用具を紹介できるような情報収集力・対応力が求められます。
福祉用具専門相談員として働くには
福祉用具専門相談員は介護を必要としている方や、その家族にとってなくてはならない福祉用具専門相談員という仕事。
実際に福祉用具専門相談員として働くにはどうすればよいのかについて説明していきます。
福祉用具専門相談員の資格を取得している
福祉用具専門相談員は福祉用具の適切な使い方や選び方をアドバイスする専門職なため、介護や福祉用具に関する専門的な知識が求められます。
そのため、福祉用具専門相談員として働くには資格が必要となります。
福祉用具専門相談員の資格は、各都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、受講後に実施される筆記による終了評価試験に合格することで取得することができます。
福祉用具専門相談員指定講習とは
福祉用具専門相談員指定講習の受講に特別な資格は必要なく、各都道府県が指定した研修機関で誰でも受けることができます。
受講費用は受講する都道府県によって異なりますが、4~6万円程度となっています。
福祉用具専門相談員指定講習の内容は
- 福祉用具と福祉用具専門相談員の役割(2時間)
- 介護保険制度等に関する基礎知識(4時間)
- 高齢者と介護・医療に関する基礎知識(16時間)
- 個別の福祉用具に関する知識・技術(16時間)
- 福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識(7時間)
- 福祉用具の利用の支援に関する総合演習(5時間)
以上の合計50時間のカリキュラムと筆記による修了評価試験あり、一週間程度での修了が目安です。
福祉用具専門相談員の知識を持つ国家資格を取得している
以下の介護・福祉に関する国家資格を保有している人は福祉用具についての知識を有しているとみなされ、福祉用具専門相談員として働くことができます。
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 義肢装具士
これら国家資格を持っている場合は福祉用具専門相談員指定講習を受けなくても福祉用具専門相談員の業務を行うことができます。
また、2015年の介護保険制度変更により、
- ホームヘルパー1級・2級
- 介護職員基礎研修修了者
- 介護職員初任者研修修了者
これらの資格では福祉用具専門相談員として業務を行うことができなくなっているので注意が必要です。
福祉用具専門相談員の将来性
日本の高齢化が進行するに伴い、福祉用具の需要は確実に増加しています。
今後、車椅子や電動ベッドのような福祉用具だけでなく、もっと進化した用具が登場する可能性も高く、福祉用具専門相談員の知識が必要となる場面も増えていくと考えられるでしょう。
福祉用具のレンタル・販売事業所に2名以上の福祉用具専門相談員を配置することが義務付けられていることと、ホームセンターやスーパーなどにも介護用品売り場が増えていることから、福祉用具専門相談員の活躍の場は広がっています。
老人ホームや介護保険施設等の福祉施設でも福祉用具の知識を役立てる場面は出てくるので、介護関係の仕事を目指している方は取るべき資格と言えます。
また、2015年の介護保険制度の改正によって福祉用具専門相談員の業務を行える資格が限定されたため、福祉用具専門相談員の資格保有者の価値が高まる事も考えられます。
福祉用具専門相談員に活かせる資格
福祉用具専門相談員としてさらにスキルアップするため、また将来の選択肢を増やすために、福祉用具専門相談員の資格と合わせて持っておくと役立つ資格について紹介していきます。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や障害を持つ人の住居環境を考えて、より住みやすい住居づくりをサポートするアドバイザーです。
福祉用具のレンタル販売事業所では、利用者の自宅に手すりやスロープを設置するなどのバリアフリー工事も行っていることが多く、合わせて持っておくと仕事の幅が広がるでしょう。
福祉住環境コーディネーターの資格には1級・2級・3級とありますが、スキルアップとして取得するのであれば、2級以上は目指しましょう。
○福祉住環境コーディネーターの資格を得るには
受験資格は無く、3級も持っていなくても2級の試験を受講可能となっています。
講習などもないので自分で勉強し、検定試験に合格することで資格を得ることができます。
福祉用具鑑定士
福祉用具鑑定士とは、福祉用具専門相談員の資質向上を目的に、一般社団法人日本福祉供給協会が独自に創設した資格です。
この資格を所有していることで、利用者やケアマネジャーに対して、福祉用具の適切な選び方・使い方の情報を与えることができる、より専門性の高い福祉用具専門相談員として認められることになります。
○福祉用具鑑定士の資格を得るには
日本福祉供給協会独自のカリキュラムによる「福祉用具選定士認定研修会(A研修・B研修)」を受講し、研修後の筆記試験に合格することで取得可能です。
また、福祉用具鑑定士認定研修の受講には、福祉用具専門相談員の資格を持ち、2年以上の実務経験が必要となるので、注意しましょう。
福祉用具プランナー
福祉用具プランナーとは、公益財団法人テクノエイド協会が認定する民間資格です。
業務内容は適切な福祉用具にの選定・使用計画書の作成・実際の使用状況をモニタリングなど、福祉用具専門相談員と同じですが、利用者がオーダーメイドの福祉用具を必要とするときの判定や、オーダーのプラン作成を行うなど、福祉用具に関してより詳しい知識と技術が求められてきます。
福祉用具プランナーは民間資格ですが、介護の現場でも役立てることができる実用性のある資格なので、福祉用具専門相談員として働いていて、さらなるスキルアップを目指している方はぜひ取得をおすすめします。
○福祉用具プランナーの資格を得るには
福祉用具プランナーは福祉用具専門相談員よりも上位の資格と位置づけられており、受講するには福祉用具専門相談員業務に2年以上従事していることが条件です。
eラーニングでの座学48時間と、集合演習による実技演習を51時間、認定試験1.5時間の合計100.5時間のカリキュラムを履修し、試験に合格することで資格を得ることができます。
まとめ
今回は福祉用具専門相談員という職業についての基本的な説明や仕事内容、資格の取得方法などについて紹介してきました。
高齢化社会が進む日本では福祉用具の需要が減ることは無く、今後も福祉用具専門相談員という仕事の必要性は高まっていくと予測されます。
また、技術の進歩で新たな福祉用具が生まれ、多様化していくと福祉用具専門相談員の価値は増えていくことでしょう。
「介護が必要な身体になっても、人の力を借りずにできるだけ一人で生活できるようになりたい」「病院や施設よりも自分の家で暮らしたい」
このような利用者の方々の自立を手助けするのが福祉用具専門相談員という仕事。
この記事がそんな福祉用具専門相談員を目指す方の手助けとなれば幸いです。