住み慣れた自宅でも、歳を取って身体が不自由になると、今まで気にならなかった段差や入浴などが不便に感じてくるもの。
さらに高齢化社会が進む日本では、自宅で介護を行うことも多く、福祉視点での住宅環境改善へのニーズは高まることが予想されます。
それに伴って需要が増えるのが安全で快適な住宅環境づくりをサポートする「福祉住環境コーディネーター」という仕事。
今回の記事では福祉住環境コーディネーターについて紹介していきます。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容や、資格・試験概要について詳しく説明していますので、福祉住環境コーディネーターに興味がある方は参考にしてください。
福祉住環境コーディネーターとは?
福祉住環境コーディネーターとは、高齢者や体が不自由な人にとって住みやすく、安全な住宅環境づくりを提案するアドバイザーです。
高齢や怪我で体が思うように動かなくなったり、介護が必要になったりすると、今までは問題なく暮らしていた自宅に不便さを感じるもの。
そのような人のために、福祉住環境コーディネーターは福祉や建築などの専門家と連携し、個人にあった住環境づくりのアドバイスや、福祉用具・会場用具についての情報提供、その人にあった福祉用具を選択する手助けを行います。
すぐに福祉住環境コーディネーターの資格については読みたい方はこちら
福祉住環境コーディネーターの活躍の場所
福祉住環境コーディネーターは、住宅環境を整備する際に、介護面・医療面・建築面の各専門家がそれぞれ担当して行っていることを理解し、全体的なアドバイスを行うことで、住宅環境整備を円滑化するために生まれました。
そのため、そのため住宅設備会などでバリアフリー住宅・介護施設の建築に関わったり、訪問介護や介護施設などで、住宅環境の改善にアドバイスを行ったりと、建築と福祉の2つにまたがる分野での活躍が期待されます。
まだ比較的新しい資格なため、福祉住環境コーディネーターとしての求人は少ないですが、知識を活かすことができる職場は建築分野・介護分野ともに多いと言えます。
福祉住環境コーディネーターの仕事内容について
福祉住環境コーディネーターが行うメインを仕事内容は、高齢者や体が不自由な人が生活しやすいように住宅環境・福祉用具を整え、快適に暮らせるようにアドバイスを行うことです。
福祉住環境コーディネーターの役割を大きく分けて3つ紹介します。
①福祉に関連する住環境づくりのアドバイス
福祉住環境コーディネーターの主な仕事は、担当のケアマネージャーなどの福祉の専門家や、建築士などと連携をとりつつ、個人に合った最適な住宅改修のアドバイスを行うことです。
例えば、足が不自由な人のための住宅環境を提案する場合、段差を無くしスロープに取り替えるのか、手すりを設置するのか、問題を解決する方法はいくつもあります。
いくつかの方法の中から、その人個人やその家の状況に応じて適切なプランを提案し、住宅のコーディネートを行うのが福祉住環境コーディネーターの仕事です。
個人宅の改修だけでなく、介護施設などの環境整備や、バリアフリー住宅の建築についてのアドバイスなども行うことがあります。
②福祉に関連する用具のアドバイス
福祉住環境コーディネーターは、住宅環境に関するアドバイスの他にも、車椅子や介護用ベットなどの福祉用具・介助用具の選び方や使い方のアドバイスを行います。
日本の高齢化社会に伴い、福祉用具も進化・多様化が進んでおり、どのような用具があり、どれが自分に合ったものなのか判断するのは難しいもの。
そのような人のために、利用者や介護者それぞれの状況に適した福祉用具の情報提供や、使用する用具の選択、使い方の説明も福祉住環境コーディネーターの役割です。
③住宅改修費支給申請の理由書を作成
後述する福祉住環境コーディネーターの資格を2級以上取得している場合だと、住宅改修費支給申請の理由書を作成する事ができます。
この申請に必要な理由書の作成は、福祉住環境コーディネーター2級以上保有者の他には、ケアマネージャーや作業療法士などの資格を持つ人にしかできず、介護業界において重要な仕事と言えます。
・住宅改修費支給申請制度とは?
在宅している要介護者や要支援者が日常生活を安全に過ごすために必要な自宅の改修工事対して、自治体が工事費用の一部を負担してくれる制度のことです。
改修工事前に申請の理由書を提出し、認められると工事費用が支給されます。
手すりの設置や段差の解消、扉の取り替えなど、対象となる工事の種類は決められています。
福祉住環境コーディネーターの資格について
福祉住環境コーディネーターとして認められるためには、東京商工会議所が認定を行っている民間資格「福祉住環境コーディネーター」を取得する必要があります。
この章では資格としての福祉住環境コーディネーターついて解説にしていきます。
資格の種類
福祉住環境コーディネーターの資格は1級・2級・3級の3つに分かれており、1級の受験には2級の取得が必要ですが、2級と3級に受験資格はなく、2級から受けることも可能です。
福祉住環境コーディネーター3級は、知識として福祉系の学生が受けている事が多く、仕事で活用する場合には2級以上の取得が必要でしょう。
資格取得までの流れ
- 申し込み
東京商工会議所の公式ホームページからインターネット申込みが可能です。 - 受験料の支払い
申込書が(払込取扱票)が届いたら郵便局やコンビニで受験料を支払います。 - 試験を受ける
2021年より2級・3級の試験はIBT(インターネット経由)となっています。
2級・3級の試験日は例年、7月~8月と11月~12月に行われています。1級は12月年1度行われることが多いです。 - 合格発表
WEBで成績表照会期間に合否が確認できます。
合格している場合、後日豪華表が郵送されます。
2021年度の福祉住環境コーディネーター2級・3級の検定試験要項はこちらをクリック
- 申込期間・試験期間(個人・団体共通)
申込期間 試験期間 第46回 6月28日(月)~7月30日(金) 7月14日(水)~8月6日(金) 第47回 11月1日(月)~12月6日(月) 11月15日(月)~12月13日(月) ※申込期限は希望受験日から7日前まで
- 試験開始時刻
10:30、11:00、13:30、14:00、15:30、16:00(集合は20分前) - 試験時間
90分 - 受験料
2級︰7,700円
3級︰5,500円 - 試験方式
IBT(インターネット経由での試験) - 持ち物
身分証明書(原則として氏名、生年月日、顔写真が揃って確認できるもの)
※電子媒体やコピーは不可。
2021年度の福祉住環境コーディネーター1級の検定試験要項はこちらをクリック
- 申込期間・試験期間
試験日:12月5日(日)集合時間10:00申込期間 払込締切日 受験票発送 個人 10月12日(火)10:00~
11月5日(金)18:0011月14日(日) 11月25日(木) 団体 10月12日(火)10:00~
11月2日(火)18:0011月12日(金) - 試験時間・方式
前半:マークシート方式 2時間 (集合時間10:00)
後半:記述式 2時間 (集合時間13:30) - 受験料
12,100円 - 受験資格
2級合格者のみ - 持ち物
受験票・筆記用具・身分証明書(氏名・生年月日・顔写真が揃って確認できるもの※電子媒体やコピーは不可)
出題範囲・合格基準(2021年時点)
3級
試験方式 | 多肢選択式 |
制限時間 | 90分(集合は20分前) |
合格基準点 | 100点満点中、70点以上 |
3級の出題範囲はこちら
- 少子高齢社会と共生社会への道
- 福祉住環境整備の重要性・必要性
- 在宅生活の維持とケアサービス
- 高齢者の健康と自立
- 障害者が生活の不自由を克服する道
- バリアフリーとユニバーサルデザインを考える
- 生活を支えるさまざまな用具
- 住まいの整備のための基本技術
- 生活行為別に見る安全・安心・快適な住まい
- ライフスタイルの多様化と住まい
- 安心できる住生活
- 安心して暮らせるまちづくり
2級
試験方式 | 多肢選択式 |
制限時間 | 90分(集合は20分前) |
合格基準点 | 100点満点中、70点以上 |
2級の出題範囲はこちら
- 高齢者・障害者を取り巻く社会状況と住環境
- 福祉住環境コーディネーターの役割と機能
- 障害のとらえ方
- リハビリテーションと自立支援
- 高齢者・障害者の心身の特性
- 在宅介護での自立支援のあり方
- 高齢者に多い疾患別にみた福祉住環境整備
- 障害別にみた福祉住環境整備
- 福祉住環境整備とケアマネジメント
- 福祉住環境整備の進め方
- 福祉住環境整備関連職への理解と連携
- 相談援助の実践的な進め方
- 福祉住環境整備の共通基本技術
- 生活行為別福祉住環境整備の手法
- 福祉住環境整備の実践に必要な基礎知識
- 福祉用具の意味と適用
- 生活行為別にみた福祉用具の活用
1級
試験方式 | 前半:マークシート式 後半:記述式 |
制限時間 | 前半:120分 後半:120分 |
合格基準点 | 各100点満点中、それぞれ70点以上 |
1級の出題範囲はこちら
前半:マークシート式試験
- これからの社会に求められる福祉住環境整備
- 福祉住環境コーディネーター1級の目標と役割
- 地域福祉の推進-福祉コミュニティづくり-
- 地域で支える高齢者ケア
- 地域で支える障害者ケア
- ユニバーサルデザインの概念および沿革
- ユニバーサルデザイン環境の整備手法
- 高齢者・要介護者向け住宅・施設の流れ
- 高齢者住宅・施設の種類と機能
- 障害者向け住宅および施設の種類と機能
- 福祉住環境のコーディネートの実際
後半:記述式試験
実務能力(課題に対する提案力)などの、実践力、応用力、総合的判断力を問う問題。
公式テキスト(改訂5版)に準拠するが、法令制度につきましては最新情報の理解を前提として出題。
福祉住環境コーディネーターの将来性
福祉住環境コーディネーターは、1999年に東京商工会議所によって認定が始まった比較的新しい資格なため、「福祉住環境コーディネーター」の資格のみの求人は非常に少ないのが現状です。
福祉住環境コーディネーターとして就職するというよりも、福祉関係の仕事についている人や、建築関係で働く人がスキルアップのために取得することが多くなっています。
介護における住宅環境という知識を増やすことで、訪問介護先や介護施設の問題点の発見につながることもあり、介護の仕事にも活かすことができるでしょう。
また、福祉用具の知識も身につくため、福祉用具販売店での仕事にも役立ちます。
高齢者や身体が不自由な人の自立を支援していくには安全で住みやすい住宅環境づくりが欠かせないので、高齢化の進む日本で福祉住環境コーディネーターは将来性の高い仕事と言えるでしょう。
福祉住環境コーディネーターに向いている人
そもそも前提として福祉関連の資格なので、福祉にある程度の理解や興味がある人が向いているといえます。
どんな設計をすれば、日常生活に補助が必要な人でもより生活がしやすくなるのかを、医療と建築の視点から判断して最適化できるように自分の頭で考える必要があります。
そのため、「建築に興味がある」「自宅の間取りや建築様式に興味がある」など、自分でアイデアを探ったり考えたりすることが好きだという方は、仕事でうまく活用できるでしょう。
また、福祉住環境コーディネーターは様々な職種との打ち合わせであったり、高齢者自身やその家族の相談を受ける機会が多々あります。
様々な人から相談を受けて、その悩みの原因だったりを理解し、悩みを解消へ向かわせるコミュニケーション技術も求められます。
そういった悩み相談などを受けてきたような経験、実際身内の介護を行った経験をしてきた方は職業特有の悩みなどをあまり感じずに仕事ができるでしょう。
まとめ
今回は福祉住環境コーディネーターについて、仕事内容や資格の概要などについて紹介してきました。
日本の社会高齢化は進み、介護が必要な人に対して、介護施設や介護職員も足りていないのが現状です。
そのため、自宅で介護を行うことも増え、高齢となり、自宅でも日常生活に不自由さを覚える人も増えていくでしょう。
これによって、福祉住環境コーディネーターの必要性は高まっていくことが予想されます。
「身体が不自由になっても、病院や介護施設よりやっぱり自分の家で暮らしたい」
そんな方々のために住みやすく快適な住宅環境づくりを手助けするのが福祉住環境コーディネーターの仕事です。
この記事がそんな福祉住環境コーディネーターを目指す方の手助けとなれば幸いです。