介護関連の資格の一つである社会福祉士。国家資格なので「資格を取得して社会福祉士に転職すれば安泰」と考えている人も多いのではないでしょうか。
たしかに介護業界は慢性的な人手不足ですから、社会福祉士の資格があれば他業界からの転職であっても大変有利です。
とはいえ、みんながみんな社会福祉士として働けているかというと…残念ながらそうではありません。
そこでこの記事では、社会福祉士の資格取得方法、求人、年収などをご紹介しつつ、どのようにその資格を生かすべきなのかという点をご説明します。
また、「介護業界における各資格の難易度や取得方法」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますので併せて確認してみてくださいね。
社会福祉士とは
社会福祉士は福祉関連の国家資格で、俗に「ソーシャルワーカー」とも呼ばれています。
身体的・精神的・経済的にハンディキャップを背負っている人からの相談にのるのが主な仕事。快適な日常生活をおくれるように支援したり、困っていることを解決してあげたりします。
行政や医療機関などの専門職と連携して支援を進めることになるので、物事を包括的に調整する能力が必要。
また、社会福祉施設、社会福祉協議会、医療機関、行政機関、独立型社会福祉士事務所など、多くの場所で働けるというのも特徴的です。
社会福祉士になるには
社会福祉士の資格を取得するには、「決められたルートを経て受験資格を満たすこと」と「国家試験に合格すること」という二つのハードルがあります。
この受験資格を満たすのに数年かかりますし、試験の合格率は30%程度しかありません。
そのため覚悟を決めて挑戦することが大事。年単位でしっかり計画を立てて取り組まなければなりません。
受験資格を得るには
受験資格を得るには
- 福祉系大学・短期大学ルート
- 短期養成施設ルート
- 一般養成施設ルール
という3つのルートがあります。
<福祉系大学・短大等(指定科目履修)ルート>
- 福祉系大学等(4年)+指定科目履修
- 福祉系短大等(3年)+指定科目履修+相談援助実務(1年以上)
- 福祉系短大等(2年)+指定科目履修+相談援助実務(2年以上)
<短期養成施設等ルート>
- 福祉系大学等(4年)+基礎科目履修+短期養成施設等
- 福祉系短大等(3年)+基礎科目履修+相談援助実務(1年以上)+短期養成施設等
- 福祉系短大等(2年)+基礎科目履修+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設等
- 社会福祉主事養成機関(2年以上)+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設等
- 児童福祉士や身体障害者福祉士などの実務経験4年+短期養成施設等
<一般養成施設等ルート>
- 一般大学等(4年)+一般養成施設等
- 一般短大等(3年)+相談援助実務(1年以上)+一般養成施設等
- 一般短大等(2年)+相談援助実務(2年以上)+一般養成施設等
- 相談援助実務(4年)+一般養成施設等
上記のなかで他業界からの転職組におすすめなのは、一般養成施設等ルートの相談援助実務(4年)+一般養成施設等。
先に介護又はそれに関連する業界に転職し、働きながら必要な知識を身につけていくというプランになります。
国家試験について
社会福祉士の試験は毎年2月に実施されます。試験科目は全部で19科目あり、すべて5択形式の筆記試験。
大学や短大で学んだ場合は試験対策はバッチリでしょうが、そうじゃなければ自分で問題集や参考書を購入しないと合格はほぼ無理。
介護系の国家資格は比較的難易度が低いのですが、社会福祉士に関してはしっかりと勉強しないといけないのです。
<試験科目>
- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 社会調査の基礎
- 相談援助の基盤と専門職
- 相談援助の理論と方法
- 福祉サービスの組織と経営
- 高齢者に対する支援と介護保険制度
- 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
- 就労支援サービス
- 更生保護制度
社会福祉士の年収
社会福祉士の年収は平均で400万円前後です。
ただしこれは新卒からベテラン、管理職まですべてを対象者として計算されたもの。社会福祉士1年目だけで考えれば300万円くらいが相場です。
複数の資格を取得すれば資格手当がつきますが、長年勤めても昇給しにくい傾向があります。
地方公務員を目指すのがベスト
社会福祉士の資格を取得したら福利厚生の厚い地方公務員を目指すのがベスト。
各自治体の役所にある福祉課や保健所、公立学校などがそれにあたります。こうしたところに就職・転職できればたとえ給料の額面は低くとも福利厚生や退職金、賞与などで大きな恩恵を被ります。
なにより地方公務員なわけですから安定感は抜群なので、狭き門ではありますが求人を見つけたときは積極的に応募してみると良いでしょう。
社会福祉士のやりがい
社会福祉士のやりがいは対象者の生活レベルを改善するお手伝いができること。
対象者とその家族は大きな悩みを持っていますが、それに対して専門的な知見から具体的な改善案を提示してあげられます。どんなに良い制度やサービスがあってもそれが認知されていなければ意味がありません。
社会福祉士はあらゆる分野の制度やサービスを駆使できるわけですから、「相談して良かった」と実感する人が非常に多いのです。
困っている人を助ける仕事はいくつかありますが、社会福祉士もその一つでありそれこそがやりがいといえます。
社会福祉士の資格が生かせる就職先
社会福祉士の仕事は相談員であり、スキルさえあれば無資格でも業務をこなすことが可能です。
とはいえ、社会福祉士という肩書きがあるのとないのとでは大違い。
社会福祉士の肩書きがあれば以下のようなところへ専門職として転職するのに大変有利です。
- 高齢者向け施設
- 子供向け施設
- 障害者向け施設
- 生活困窮者向け施設
- 地域住民向け施設
社会福祉士という肩書きで働くことは稀で、これらの施設ではそれぞれ肩書きが異なります。なので転職サイトで就職先を検索するときは間違えないようにしましょう。
高齢者向け施設
就労場所は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービスセンター、地域包括支援センターなどの施設。
そこで暮らす高齢者、施設や機関を利用する高齢者、およびその家族を対象として相談にのります。転職サイト上の職種はソーシャルワーカーや生活相談員、生活指導員などと表記されます。
現場では介護職を兼ねることも多く、介護業務と相談業務という二つの実務経験が積めます。
子供向け施設
就労場所は児童相談所、児童養護施設、障害児入所施設、母子生活支援施設、母子福祉センター、児童自立支援施設など。
精神的・肉体的ハンディキャップのある子ども、虐待や生活上の理由などで保護者の養育を受けられない子ども、非行・不良行為に関わる子ども、およびその家族の相談にのるのが仕事です。
児童福祉司、児童指導員、母子相談員、少年指導員、児童自立支援専門員などの職名で呼ばれます。
様々な理由で心を閉ざしてしまった児童も多く、コミュニケーション能力が問わる仕事です。
障害者向け施設
主に障害者支援施設で働きます。対象は身体障害者と知的障害者、およびその家族。生活相談員や生活指導員、作業指導員などと呼ばれます。
障害者を相手にしたときに難しいのが気持ちを理解すること。
相手の立場になって考えれば本当に良いアドバイスはできませんから、障害者の生活にどんな苦労があるのかをイメージする力が必要です。
生活困窮者向け施設
都道府県にある福祉事務所が主な就労場所です。
母子家庭、障害者、高齢者、失業者、貧困者、身体・知的障害者など対象は様々。ケースワーカーや査察指導員、スーパーバイザーなどと呼ばれ、対象者の経済的自立を支えることになります。
社会保障制度から各種職業まで、幅広い分野での知識と関連組織との調整力が問われます。
地域住民向け施設
主に社会福祉協議会で働き、地域社会における個人、家族、各種の住民団体や住民組織などの相談にのります。
コミュニティワーカーやコーディネーターなどと呼ばれるのが一般的です。
地域社会の生活環境改善を主な目的としているので、社会福祉士の仕事のなかではもっとも介護色の薄い職場といえるでしょう。
社会福祉士として働くのは難しい?
すでにご紹介したとおり、社会福祉士の資格を生かせる施設・事業所はたくさんあります。ただし、その求人数は決して多くはありません。というのも、社会福祉士のニーズそのものが低いから。
仮に介護職員が20~30人ほどいる施設だったとして、そこに必要な社会福祉士は2~3人。なかには社会福祉士の資格を持たずに相談業務を担当している人もいます。
したがって、社会福祉士の専門職として採用されるのはかなり稀なこと。
実際には社会福祉士の資格を持った介護職として採用され、現場で介護業務を担いながらチャンスを待つことになります。
社会福祉士の資格を生かすには
「社会福祉士の専門職として働けないのならなぜ取得する必要があるの?」と思う人も多いことでしょう。
そのご指摘はごもっともですが、介護業界では保有資格の多さが評価の対象となります。
同じ介護職でも社会福祉士の資格があれば資格手当がつきますし、昇格もはやくなりがち。所有する資格が多くなおかつ長く務めていれば管理職への道が開けてくるのです。
さらに介護業界内で転職するときも「社会福祉士の資格があると尚良し」という求人が多く、就職・転職活動する際には強力なアピール材料となります。
このように、社会福祉士の資格は専門職として働くためだけでなく、転職やキャリアアップのための道具としても活用できるのです。
おすすめの転職サイト
他業界から介護業界へ転職するとき、及び介護業界内で転職するときに便利なのが転職サイトです。
登録から転職後にいたるまで料金は一切かかりません。それでいて数千~数万の求人を閲覧できるわけですから、利用しない手はないでしょう。そこでおすすめの就活サイトを3つご紹介しておきます。
<おすすめの転職サイト>
- きらケア
- 介護レポ
- マイナビ介護
きらケア:レバレジーズメディカルケア株式会
きらケアは職場の雰囲気をつかみたいときに有効な転職サイトです。
職場の雰囲気が自分に合っていないと転職後に後悔しがちで、仕事が長続きしないケースもしばしば。そんなことがないように、きらケアでは応募先のあらゆる情報を細かく提供してくれます。
また、きらケアは事前に面接対策を実施し面接にも同行してくれます。
ここまできめ細かいサービスを提供する転職サイトは非常に珍しく、転職に不慣れな人にとっては大変心強く感じられることでしょう。
介護レポ:株式会社repo
介護レポも職場の雰囲気や人間関係などの内部情報に精通している転職サイトです。
きらケアとの違いは情報がより深いということ。そこには「相性が悪ければ応募すべきではない」というスタンスが感じられ、合格率よりも転職後の満足度が重視されています。
なお、各企業の教育体制や資格取得支援制度などについても詳しく教えてくれるので、「働きながら資格を」と考えている転職組にとっては利用しやすい転職サイトです。
*引用元:https://www.repo.co.jp/kaigolp/
マイナビ介護:株式会社マイナビ
マイナビ介護は求人数の多さに定評があります。
専門職として社会福祉士を募集している事業所は少ないのですが、マイナビ介護ほどの規模があれば良い求人がみつかる可能性は大。
また、「最初は介護職からでもいい」という人であれば、給料や休日、勤務先などにこだわって探すこともできます。
さらにマイナビ介護には将来をイメージしやすいという特徴も。
専門のキャリアアドバイザーが「給与アップ」「将来のキャリアプラン」「家庭や子育てとの両立」などについて説明してくれるので、転職後に自分をどう伸ばしていくべきかがはっきり分かります。
*引用元:https://kaigoshoku.mynavi.jp/
社会福祉士を取得してキャリアアップ
この記事では社会福祉士についてご紹介しました。相談窓口として機能する社会福祉士は体力的な負担が少なく、定年まで働き続けられる仕事です。その安定性に魅力を感じて他業界から転職を目指す人が大勢います。
しかしながら、専門職としての社会福祉士の求人は少ないので、若いうちは介護職のような現場スタッフを経験しながらチャンスを待つことに。
「これでは資格を取得した意味がない」と思うかもしれませんが、業界内で転職する際にはその資格と現場経験がものをいいます。その時になって「社会福祉士を取得しておいてよかった」と思うはず。
社会福祉士を取得するまでには数年かかりますから、希望するキャリアまでの計画をしっかり立てて途中で挫折することのないようにしましょう。