介護業界は近年の高齢化に伴って注目されている業界の一つです。
なかでも理学療法士は以前と比べて待遇が改善されており目指す人が急増しています。
ただし、国家資格なので資格を取得するにはそれなりの勉強と経験が必要。
そこでこの記事では、理学療法士の資格取得方法と資格取得後の年収や求人状況についてご説明していきます。
なお「ケアマネージャーの資格取得と仕事内容」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますので併せて確認してみてくださいね。
理学療法士とは
理学療法士とは「理学療法士及び作業療法士法」に基づく国家資格であり、リハビリテーションチームを構成する医療従事者のことをいいます。
具体的な仕事内容には
- 身体機能障害をもつ要介護状態や高齢者に対して回復目的のトレーニングを行う
- 何らかの原因で後遺症が残った人に対して基本的動作能力の回復を図る
- 運動能力発達の遅れがみられる新生児や身体的な障害を持つ人に対して運動療法や物理療法を行う
などがあります。
対象者の症状が快方に向かうことがほとんどなので、日々の業務を通して手応えを感じられる仕事。そこにやりがいを見出せる人であれば長く続けることができるでしょう。
業界の動向
高齢化社会がすすむなか、理学療法士を取り巻く環境は急速に変化してきています。
総じていえば「待遇改善は進んだが競争倍率は上がった」というのが現状です。
その理由として以下の点が挙げられます。
- 養成校の急増
- 資格取得の難易度が低い
- 離職者が少ない
養成校の急増
理学療法士の資格取得に関しては平成11年に規制が緩和されました。その結果養成校が急増し、平成20年には入学定員数が以前より1万人もアップ。
養成校がある場所もかつては大都市近郊のみだったのに対して、現在では地方の小規模都市にまで広がっています。
それらに通うほぼすべての生徒が理学療法士の国家試験を受験するわけですから、競争倍率は以前よりはるかに高くなっているのです。
資格取得の難易度が低い
競争倍率が高くなった理学療法士ですが、それでも試験の難易度は低く狙い目の国家資格といます。
一般的に医療系の国家資格は難易度が高く、取得までに要する期間も長くなります。ところが理学療法士の場合は試験の難易度が低く、養成校を卒業した人のほとんどは一発合格。
令和3年を例にあげると全受験者の79%が合格しています。
そのため、学生はもちろんのこと、他業界から介護や医療業界への転職を考える人にとっても非常に挑戦しやすい資格なのです。
離職者が少ない
介護や医療の業界は重労働なので離職率が高い傾向にあります。
しかしながら、理学療法士に限っては離職率が低く、業界内での転職もあまりありません。
これは雇用が安定しているのと同時に、介護や医療業界にしては比較的楽な仕事だから。毎日ほぼ定時に仕事が終わり、週休二日制が徹底されています。
残業や夜勤が多い介護士や看護師と比べると労働環境が良いのは明らかです。
資格取得が昇給につながる介護・医療業界において余暇の時間が多いというのは非常に有意義なこと。他の資格取得に向けてしっかり勉強できるので、「若いうちは理学療法士として働きながら勉強したい」という人が多いのです。
理学療法士の資格取得方法
理学療法士になるには、養成校で学ぶことと国家試験に合格することという2つのハードルをクリアしなければなりません。
とはいえ、難易度はさほどでもなくそれぞれの過程で着実に勉強していけば資格取得できます。
また、外国の養成校を卒業した人や外国で理学療法士の免許を取得した人は、所定の手続きをして厚生労働大臣の認定を受ければ、新たに養成校に入る必要がないまたは不足している単位のみの取得で済む場合があります。
養成校について
理学療法士になるには養成校で3年以上学ぶ必要があります。(すでに作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学べば受験資格が得られます)
養成校には4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制、4年制)、特別支援学校(視覚障害者が対象)があり、どれを選択するかは自由です。
いずれの養成校を選択してもカリキュラムは一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類。
ただし、養成校ごとに実習先が異なる上、特殊な講義を用意していることもあるので、就職後の自分をイメージして必要な知識・技術が身につくところを選ぶようにしましょう。
国家試験について
理学療法士の国家試験は年1回のペースで行われます。
受験手数料は10,100円で筆記試験(一般問題と実地問題)が実施されます。
養成校で配布されたテキストをしっかり読み込んでおけば解ける問題ばかりなので、落ち着いて試験に臨みましょう。
受験の流れ
令和3年を例にとって理学療法士試験の流れをご説明します。
まず、受験に関する書類(願書)を令和2年12月14日(月曜日)から令和3年1月4日(月曜日)までに提出。
その後、受験票が郵送で送られてきます(令和3年1月下旬から順次発送)
筆記試験日は令和3年2月21日(日曜日)、合格発表は令和3年3月23日(火曜日)です。
厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページで合格者が発表されるので、試験会場まで結果を見に行く必要はありません。
試験内容
筆記試験の内容は以下の通りです。
<一般問題>
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 病理学概論
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法
<実地問題>
- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法
一般、実地ともに勉強のコツは苦手な科目を作らないこと。
苦手科目はつい後回しになりがちですが、過去問題などで自分の苦手科目を把握しそこでの失点を防ぐことが合格への近道となります。
なお、重度視力障害者は実地問題に代えて口述試験及び実技試験が実施され、
- 運動学
- 臨床心理学
- リハビリテーション医学
- 臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法
が出題範囲となります。(令和3年の場合、口述試験及び実技試験は筆記試験の翌日に行われました)
*参照サイト:https://www.japanpt.or.jp/about_pt/aim/
理学療法士の年収
理学療法士を目指す人は福祉の精神が強くお金よりもやりがいを求める傾向にあります。
とはいえ、自身の生活を考えればお金も大事なわけで、理学療法士としての年収が気になるところでしょう。
そこで厚生労働省が行った「平成29年 賃金構造基本統計調査」を見てみると、理学療法士の平均月収は男性で27.7万円(ボーナスは年間64.8万円)、女性は平均月収26.6万円(ボーナスが年間63.0万円)となっています。
これを年収に換算するとおよそ400万円。
サラリーマンの平均年収より低いのですが、労働時間が比較的短い(休みがしっかりとれて残業がほとんどない)ということを考慮すると、単位時間あたりの金額は決して悪くはありません。
どの業界で働くにせよ時間はとても貴重なもの。単に年収だけで比べるのではなく、どれほど余暇があってどれくらい効率的に稼げるのかという視点を持つようにしましょう。
経験年数に応じて年収があがる
他の業界と同じく、理学療法士も経験年数に応じて年収があがります。
初年度の月収は平均で23.4万円程度ですが、4年ほど経過すると25万円前後、10年目には30万円位になります。
この金額には管理職手当や資格手当も含まれるので、仕事後の空き時間を利用してコツコツ勉強し、自身をキャリアアップさせていくことが肝心です。
毎日1~2時間ずつでも勉強していけば2~3年でかなりの知識を習得できますよ。
キャリアアップの方向性
理学療法士のキャリアアップとしては以下の3つが考えられます。
- 専門性を高めて「専門理学療法士」や「認定理学療法士」になる
- 他の資格も取得してより高待遇の職場に転職する
- 海外で働く
「専門理学療法士」や「認定理学療法士」になる
「専門理学療法士」や「認定理学療法士」になると管理職への道が大きく開けてきます。
単に長く務めただけでは大幅な年収アップは望めないので、こうしたより専門性の高い資格の取得は必須。
将来に備えてしっかり準備していけば、いずれは職場内における理学療法士のリーダーになれることでしょう。
他の資格も取得してより高待遇の職場に転職する
理学療法士と相性の良い資格として日本心臓リハビリテーション指導士や3学会合同呼吸療法認定士などがあります。
また、ケアマネージャーや作業療法士なども理学療法士の経験を生かせる資格です。こうした資格を取得すればより高待遇の職場に転職することが可能。
後述する転職サイトを使って探せば年収ベースで50~100万円ほどのアップが期待できますから、実務経験と資格が揃ったところでどんどんチャレンジしてみるべきです。
海外で働く
海外(とくにアメリカ)では理学療法士の地位はとても高く、日本よりはるかに高級です。
また、海外の病院で働いたり青年海外協力隊に参加したりすることで経験を積めば、将来的に自分のクリニックを持つことも夢ではありません。
少なくとも日本で理学療法士としてキャリアを積むよりははるかに評価されます。語学力がネックにはなりますが、その部分で抵抗がない人には大きな可能性が待っているのです。
理学療法士の求人
理学療法士の国家資格を取得したらいよいよ就職です。
求人情報を集める方法はいくつかありますが、一番手っ取り早く多くの求人を閲覧できるのは就活・転職サイト。
以下でその代表的なものを紹介するので、どこに登録するか迷ったときはぜひ登録してみてください。
きらケア:レバレジーズメディカルケア株式会
きらケアは面接対策を行ってくれる転職サイトです。
年々競争倍率が高くなっている理学療法士なので待遇の良い施設をうける際の準備は必須。
その点、きらケアは実際の面接を想定した問答で練習することができます。また面接にも立ち会ってくれるので、応募者としては大変心強く落ち着いて面接に臨むことができるでしょう。
競争倍率が高くて就職が難しそうなところを受ける際はきらケアを使うと良いですよ。
介護レポ:株式会社repo
新卒や他業界からの転職では業界や応募先の情報に疎くなりがち。
そのままでは仮に採用されたとしても「思っていたのと違った」ということになりかねません。
そこでおすすめなのが介護レポです。
介護レポは応募先の情報(職場の雰囲気や人間関係、教育体制、資格取得支援制度など)を詳しく教えてくれます。
そのほとんどが面接の場では直接聞きにくいことなので、応募者としては大変ありがたいはず。
数ある介護・医療業界向け就活・転職サイトのなかでも介護レポは抜群に情報量が多いので、「詳しい情報を確認してから応募したい」という人におすすめです。
*引用元:https://www.repo.co.jp/kaigolp/
マイナビ介護:株式会社マイナビ
求人数を重視するなら大手就活・転職サイトのマイナビ介護がおすすめです。
掲載されている求人数は5万件以上。しかも日本全国のあらゆる地域をカバーしているので、Uターン・Iターンを検討している人でも簡単に応募先を探せます。
また、マイナビ介護のキャリアアドバイザーに相談すれば業界の常識(キャリアアップの仕方や給料の相場)をアドバイスしてくれます。
とくに他業界から転職してきた人は新卒よりもスタートが遅れているわけですから、キャリアプランをしっかり立てることが重要。
マイナビ介護のキャリアアドバイザーの話をよく聞き、転職後のことまでイメージしてから応募するようにしましょう。
*引用元:https://kaigoshoku.mynavi.jp/
理学療法士になろう!
この記事では、理学療法士の資格取得方法、年収、求人についてご紹介しました。
理学療法士は比較的簡単に取得できる国家資格です。その上定時で帰れることが多く週休二日制なので一度就職してしまえば無理なく長く務められます。
ただし、一般的なサラリーマンと比べると年収は低くなりがちなので、余暇を利用してキャリアアップの準備を行うべきです。
また、養成校の急増により希望者が増えており、条件の良い事業所はかなりの競争倍率に。
そのためご紹介した就活・転職サイトにて多くの求人情報を確保しつつ、的確な判断で自分にあった就職先を見つけてくださいね。