作業療法士になるためにはどのような資格が必要か知っていますか?
この記事では「理学療法士の資格」について解説していきます。
結論、理学療法士になるためには国家資格の「理学療法士国家試験」への合格が必要です。
その他にも「理学療法士」の説明や、「理学療法士の将来性」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んで理学療法士の資格を手にいれていただければ幸いです。
理学療法士の資格「理学療法士国家試験」とは?
「理学療法士国家試験」は、理学療法士になるための国家試験です。この試験に合格すれば、理学療法士の免許を取得できます。
しかし誰もが理学療法士国家試験を受験できるわけではなく、文部科学大臣に指定されている養成校で3年以上学び、必要な知識と技術を身につけなければなりません。
養成校には4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制、4年制)、特別支援学校(視覚障害者が対象)があり、さらに研究したい場合は大学院もあるので、自身にあった養成校を選ぶといいでしょう。
ただし例外もあります。たとえば、すでに作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学べば受験資格を得られます。
また、外国の養成校を卒業した場合や外国で理学療法士の資格を取得した人は、厚生労働大臣の認定を受けると、養成校の免除や一部カリキュラムのみを取得すれば、試験を受けられることもあるので、事前に確認するといいでしょう。
試験日程
理学療法士国家試験の試験日程は、毎年2月に行われます。
試験日程は、筆記試験と口述試験及び実技試験の2日間です。
受験料
理学療法士国家試験の受験料は、10,100円です。
受験手数料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼るって納付してください。
なお、受験に関する書類が受理されると、受験手数料は返還されないので注意しましょう。
難易度
理学療法士国家試験の平均合格率は、約80%です。
年度によっては90%を超える合格者を出すこともあり、高い水準を維持していると見ていいでしょう。
合格率の数字だけ見れば簡単な試験ではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。
合格率が高い理由は、養成校に通い、理学療法の専門的知識のある人だけが受験できる試験という背景があります。
そのため、養成校で学習した内容をしっかりと身につけておかなければ、国家試験に合格できない難易度と考えていいでしょう。
理学療法士の資格「理学療法士国家試験」は通信でも取得可能?
「理学療法士国家試験を通信教育で学び受験したい」という人もいるでしょう。
残念ながら理学療法士試験は、通信教育だけで受験することはできません。
これは養成校に通学し、必要な知識と技術を身につけなければ受験資格を得られないからです。
また、理学療法士になりたい場合、病院や施設などで一定期間の臨床実習を行わなければなりません。
そこで、「実習は通学で、座学は通信でできないだろうか」と考える人がいるでしょう。
しかし、通学と通信の併用も認められておらず、3年以上は養成校に通わなくてはならないので、通信を用いての受験はできないので注意しましょう。
また、Webで「理学療法士 通信」と検索すると通信過程を紹介するサイトにヒットするかもしれません。
しかし、これは国家試験そのものを対策する講座です。
そのため、通信講座で勉強しただけでは、受験資格はないので、理学療法士になりたい人は必ず養成校に通ってください。
理学療法士はやめとけと言われる3つの理由
「理学療法士はやめたほうがいい」といわれたことがある人もいるのではないでしょうか。決して楽な仕事ではありませんし、否定的な声が聞こえてくるのも不思議ではありません。
理学療法士は、いいことばかりではありませんので、やめた方がいいと言う声も認識しておくといいです。
その上で理学療法士になるかを検討するといいでしょう。
そこで、ここでは理学療法士をやめた方がいいと言われる3つの理由を紹介します。
- 人間関係が閉鎖的になりやすい
- 給与が高くない
- 忍耐力が必要になる
それぞれ詳しくみてみましょう。
人間関係が閉鎖的になりやすい
理学療法士は、病院や施設での勤務になるため、人間関係が閉鎖的になりやすいです。
もしスタッフ同士の人間関係が悪いと、いつも同じ人しか会わないため、精神的にストレスも溜まってしまうでしょう。
リハビリ中は患者と向き合わなければならず、「どんな治療をすればいいか」を1人で考えなくてはなりません。
その分、やりがいも大きい仕事といえますが、孤独を感じる人もいます。
また、研究や学会・講習会の資料作りをしなければならず、休日も自宅でやらなければならない業務もあります。
そのため、プライベートの時間が削られ、仕事外の人と会う機会が減り、さらに閉鎖的な状況になるかもしれません。
孤独を感じるたときば、施設内外の理学療法士とディスカッションをして、1人でストレスを抱え込まないようにするといいでしょう。
給与が高くない
給料が安いことも理学療法士をやめとけと言われる大きな理由です。
理学療法士(作業療法士含む)の平均年収は、平均年齢33.3歳で約409.6万円。男女別だと男性が422.2万円、女性が394.3万円となっています。
新人の場合はさらに安く、平均初任給額は約23万円、初年度の平均年収額は約303万円です。(参考:令和元年賃金構造基本統計調査 )
一般的なサラリーマンの平均年収は約440万円前後といわれているので、比較すると理学療法士の給料は高くないことがわかります。
上記より、給料を理由に理学療法士をやめた方がいい声もありますが、原則年1回、年齢と勤続年数に応じて昇給がある施設が多いので、毎年少しでも給料が上がると前向きに考えることもできるでしょう。
理学療法士でも他の施設へ転職はできるため、スキルを磨き、求められる人材としてより給与の高い先へ移ることも可能です。
忍耐力が必要になる
理学療法士は、患者と信頼関係を築くためにも、どんな相手でもしっかりコミュニケーションを取らねばならず、忍耐力が必要です。
たとえば、リハビリの効果がすぐに効果が出ない場合、患者がやる気をなくすことも少なくありません。そんなとき、理学療法士は我慢強く対応しなければならず、相手をどうにかリハビリさせなければなりません。
このためには、根気よく患者と向き合い、距離を縮めないとリハビリを根気よく続けられないでしょう。
しかし人間なので、どうしても気が合わない人や好きになれない患者もいます。それでも理学療法士は逃げ出せません。
たとえば認知症の患者への対応は、何度も同じことを聞かれ、応えなければならず苦痛に感じてしまう人もいるでしょう。
ただ、それでは理学療法士は務まらないため、どんなに同じことの繰り返しでも対応しなければなりません。
これを苦痛と感じてしまうと、理学療法士として続けていくのが厳しいでしょう。
理学療法士の将来性は?
理学療法士の将来性はどうでしょうか。
資格取得者が年々増えており、需要と供給のバランスが今後崩れていく声を聞いた人もいるでしょう。
しかし、高齢化社会がさらに加速するため、将来的に無くなることもありません。
そこで、理学療法士を取り巻く現状と将来の双方を理解することが重要です。
ここでは、理学療法士の現状と将来的に必要な理由を詳しく解説します。
理学療法士の現状
まず理学療法士の現状を3つ見てみましょう。
- 理学療法士の人数推移
- 理学療法士の平均年齢
- 理学療法士の需要供給バランスの推移と予想
理学療法士の人数推移
理学療法士は、毎年1万人前後で理学療法士が増えています。
2021年の合格者は、9,434人でした。(参考:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について)
毎年9,000人から1万人程の合格者を出しているため、この10年で見てもざっくり9万人の理学療法士が増えていると考えられます。
理学療法士の人数が増えると希望する施設への入職は、競争率が上がるので難しくなるでしょう。
20代で就業した理学療法士は、90%を超えているので雇用状況は安定していますが、人が増えれば質の低下も懸念されます。
そのため、もし理学療法士になったら、就業で満足せずに知識と技術を磨けば、給与アップを狙った転職なども可能でしょう。
理学療法士の平均年齢
理学療法士の平均年齢は、男性が34.8歳、女性は33.8歳です。
参考:日本理学療法士協会
全体的な割合では、20代、30代が占めています。全体的に若年層の多い専門職といえるでしょう。
これは、経験や年齢加算による昇給を得ていない人が多いため、給料が低い要因ともいえます。
理学療法士の需要供給バランスの推移と予想
理学療法士の有資格者が増加しており、理学療法士の供給数は、2040年には需要数の約1.5倍になると推測されています。(参考:医療従事者の需給に関する検討会・理学療法士・作業療法士受給分科会)
理学療法士の数が増えても、施設に限りはあるため今後需要が減っていくかもしれません。
今はまだ働き口が見つかりますが、近い将来には需要と供給のバランスが崩れて、なかなか就職できない可能性もあるでしょう。
そのため、理学療法士は個人のスキルを磨かなければ、生き残りが難しいと考えられます。
理学療法士が将来的にも必要な理由
それでは、今後も理学療法士が必要である理由についても見てみましょう。
大きな理由は次の3つです。
- 国家資格である
- 高齢化の影響で理学療法士の需要も拡大する
- 臨床行為はAIに代替できない
①国家資格である
理学療法士は、医療の国家資格なので社会的にも地位の確立されている職業です。
介護業界でも注目されているリハビリテーションの専門職ということもあり、将来的にも無くなると考えられません。
活躍できる場も病院や介護施設だけでなく、訪問リハビリテーションやスポーツ関係などがあります。
国家資格を有した職業であり、活躍できる場も無くならないため、まだまだ必要といえるでしょう。
②高齢化の影響で理学療法士の需要も拡大する
日本はこれからさらに高齢化が進みます。高齢者が増えることは、理学療法士を必要とする人が増えるともいえるので、将来的にも活躍できることは間違いありません。
すでに老人福祉施設や特別養護老人ホームなどの施設では理学療法士のニーズは高く、利用者のリハビリサポートや、施設の介護スタッフに対するアドバイスを行っています。
この流れは今後もさらに進むと考えられるので、理学療法士は将来的に必要です。
③臨床行為はAIに代替できない
理学療法士の仕事は、直接コミュニケーションを取って、患者と触れ合わなければできない仕事なので、AIに代替できません。
リハビリのプログラム作成は、AIでもできるかもしれませんが、手のぬくもりや会話を完全にAIに置き換えることはできないでしょう。
そのため、今後も必要とされることは間違いありません。
理学療法士になるにはいくらかかる?
それでは最後に理学療法士になる費用はいくらか解説しましょう。
通学する養成校によって費用が変わるため、以下3つのケースを準備しました。
- 4年生大学の場合
- 昼間専門学校の場合
- 夜間専門学校の場合
これから理学療法士になりたい人は、費用と自身のライフスタイルを見極めて、通学する養成校を決めるといいでしょう。
4年生大学の場合
4年生大学で理学療法士の資格取得を目指す場合、国公立大学と私立大学があります。
費用はそれぞれ以下です
- 国公立大学:220万円程度
- 私立大学:620万円程度
4年生大学の費用詳細は、初年度納入金と入学費用、そして年間授業料になります。
国公立大学に比べて私立大学の方が高いため、少しでも安く抑えたい人は国公立大学への進学を検討するといいでしょう。
ただし、国公立大学への入学は難易度が高いため、入試対策を万全にしなくてはなりません。
昼間専門学校の場合
専門学校は、3年制と4年制があります。
費用はそれぞれ以下になります。
- 3年制専門学校:420万円程度
- 4年制専門学校:570万円程度
4年制私立大学に比べると安く抑えられますし、3年間で学べる点はメリットです。
ただ、通常4年掛けて学ぶものを3年間でまとめなくてはならないため、授業の進行などは厳しく設定されていることは事前に知っておくといいでしょう。
夜間学校の場合
専門学校ならば、夜間部を設置しているところもあります。
この場合の費用はそれぞれ以下です。
- 3年制専門学校:310万円程度
- 4年制専門学校:420万円程度
夜間の場合、昼間働きながら通学できる点は大きなメリットです。
社会人がキャリアアップのために入学する場合は特別支援金などの援助もあるため、金銭的にも大学よりも通いやすく設定されています。
理学療法士の資格をとって理学療法士として活躍しよう
理学療法士に必要な資格や将来性、資格取得に必要な費用について解説しました。
理学療法士になるためには、国家試験を合格しなければなりませんがその分将来的にも需要の見込むことができる職業です。
今後、理学療法士になりたい方は、ぜひ参考にしてください。