理学療法士として転職する際には、理学療法士の資格以外にも持っていた方が転職しやすくなっています。
この記事では「理学療法士の転職で役に立ち資格」について解説していきます。
結論、理学療法士と最終的にどうなりたいのか逆算した上で資格を選ぶことが重要です。
理学療法士としての転職を検討する際に、はわかりづらい「役に立つ資格」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
ぜひこの記事を読んで理学療法士の転職に役立つ資格を知っていただければ幸いです。
また、理学療法士として転職する際の最適な年齢などについてはこちらの記事で紹介しています。
理学療法士の転職で実現できる4つの方向性
転職をするなら、現職よりももっと達成感を感じられるキャリアアップを目指したいものです。
理学療法士の転職でも異なる方向のキャリアアップの可能性があります。
主に次の4つの方向性が挙げられます。
- 理学療法士としての専門性を高める
- リハビリを専門にする
- トレーニングを専門にする
- 複合的にサポートする
それぞれの分野についてさらに詳しく解説します。
理学療法士としての専門性を高める
理学療法の手法は奥が深いため、学校で勉強した知識だけに留まらず専門性を高め続けることで理学療法士としての可能性を広げることが可能です。
専門性を身につける方法としては、勉強や学会、研修会に参加するなどがあります。
理学療法の中でも一つの分野を極め、専門性を高めるならキャリアアップの機会が大きく広がるのが特徴です。
例えば、臨床現場で治療を行うだけでなく、専門分野のスペシャリストとして教員や研修の指導者になることもできるでしょう。
リハビリを専門にする
理学療法士がリハビリを専門にする場合には病院や福祉施設が職場になる場合が多いです。
怪我や病気、加齢が原因で体に障害がある人に対し、基本動作能力の回復や維持、悪化の予防をサポートします。
これらの知識を加え、資格を取ることで理学療法士としてより多角的なサポートを行えるようになるでしょう。
トレーニングを専門にする
理学療法士は病院や福祉施設だけではなく、スポーツの分野でも活躍の場面があります。
怪我をしてから復帰を目指すプロのアスリートや、健康や美容目的でスポーツを行う一般の人のトレーニングをサポートする仕事です。
主な働き方はスポーツジムやフリーランスでの勤務。
スポーツトレーナーは無資格でも働くことができますが、多くの人の健康意識が高まっていることもあり、近年ではますます専門的な知識を求められるようになっています。
そこで医学的な知識を持つ理学療法士は多くの職場で歓迎される傾向にあるのです。
複合的にサポートをする
理学療法士は多くの場合病院や施設などで勤務しますが、他の資格を取得することでさらに広い分野に進出することができるでしょう。
医療介護分野の人材派遣業やコンサル会社、医療機器の開発会社、保険会社などが医学の知見を持つ理学療法士を求めている場合も多いです。
また理学療法士以外の資格を取得することで、自身で開業する道も開かれます。
他の分野で開業する場合、理学療法士の資格と知識を持っていることで差別化を図ることができ、より多くの顧客から信用を受けられるかもしれません。
理学療法士×専門性で役に立つ資格
理学療法士としての特定の分野の専門性を深めるなら、スペシャリストとして重宝される人材になることができます。
ここでは理学療法士が専門性を深めるために役立つ次の資格6つをご紹介します。
- 心臓リハビリテーション指導士
- 専門理学療法士
- 学会合同呼吸療法認定士
- 認知症ケア専門士
- 認定理学療法士
- 日本糖尿病療養指導士
それぞれの資格の内容を詳しく見ていきましょう。
心臓リハビリテーション指導士
心臓リハビリテーション指導士は、心臓疾患などの循環器疾患の再発を予防するサポートする専門職です。
医師との協力のもと、運動療法だけではなく、禁煙指導や食事指導も行います。
資格を取得していることにより、PTとしての具体的な生活指導が行うことが可能です。
心臓リハビリテーション指導士の資格を取得するには、特定営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会主催の試験を受験しなければなりません。
受験資格の条件は次の通りです。
- 理学療法士の資格を有している(理学療法士を含む10資格いずれかの保有者が対象)
- 2年以上継続して本学会の会員であること
- 学会主催の講習会を当該年度に受講済みであること
- 心臓リハビリの実務経験1年以上または研修制度を受講済みであること
受験前に書類審査もあり、レポートの作成が鍵となるため、受験の計画は早めに立てるのがベストです。
専門理学療法士
専門理学療法士は7つの分野から1つ以上を選んだ専門分野を登録し、高い学術的知識を身につけたスペシャリストになるための資格。
選択できる分野は次の7つです。
- 基礎
- 神経
- 運動器
- 内部障害
- 生活環境支援
- 物理療法
- 教育
- 管理理学療法
専門理学療法士は試験ではなく研修で単位を取得することによって資格取得をします。
踏むステップは次の4つです。
- 新人教育プログラム15単位を修了する
- 7専門分野から1つ以上を登録
- 研修活動により履修ポイント計560ポイントを習得する
- 認定審査に申請、合格すれば資格取得となる。
認定審査に申請するためには専門分野の登録から5年以上経っている必要があります。
取得には長い年月を要する資格のため希少価値も高い資格と言えるかもしれません。
学会合同呼吸療法認定士
呼吸療法のスペシャリストとして医療チームに入るための資格です。
資格を取得すると、PTとして吸入療法、酸素療法などの呼吸療法及び機器の管理が可能になります。
資格を取得するためには理学療法士として2年以上の実務資格が求められ、認定講習会に出席し12.5点以上を取得すると資格が取得可能です。
呼吸療法士の認定証は5年毎の更新が必要になります。
学会や講習会への出席や論文発表で総合50点以上を取得していることが更新条件です。
認知症ケア専門士
認知症に対する専門的な知識を身につけることを目指した資格です。
認知症ケア専門士の資格を取得するには、施設や団体、機関等において3年以上の実務経験があることが条件とされています。
筆記試験の1次試験と論述と面接の2次試験を通過することで、資格を取得可能です。
認定理学療法士
認定理学療法士は専門理学療法士に似ている資格です。
7つの分野23領域の中から1つ以上を登録し、ポイントを貯めることで資格取得ができます。
専門性の深い知識を身につけることを目的とした資格です。
7分野は次の通りです。
- 基礎理学療法専門分野
- 神経理学療法専門分野
- 運動器理学療法専門分野
- 内部障害理学療法専門分野
- 生活環境支援理学療法専門分野
- 物理療法専門分野
- 教育管理理学療法専門分野
それぞれの分野がさらに領域によって分けられ、認定は領域ごとに行われます。
資格取得のためには次の5つのステップを踏むことが必要です。
- 新人教育プログラムの修了
- 専門分野の登録
- 研修会・講習会等の参加によりポイントを貯める
- 症例報告の作成と提出
- 認定試験の申請、合格
認定試験の申請には専門分野の登録から2年以上経っている必要があります。
また取得後は5年ごとの更新が必要です。
専門理学療法士よりは短い期間での取得が可能ですが、やはり取得までに時間がかかるため希少性の高い資格と言えるでしょう。
日本糖尿病療養指導士
糖尿病のための食事や運動の管理を指導する専門員になるための資格です。
認定のためには次の条件があります。
- 理学療法士を含む資格所有者
- 定められた医療施設で過去10年以内に継続2年以上糖尿病療養指導の経験
- 携わった自験例が10件以上あること
- 日本糖尿病療養指導士認定機構の講習会を修了していること
まず講習会を受けてから、認定試験を受ける流れとなります。
試験の内容は筆記試験と、糖尿病療養指導自験例の記録の提出です。
糖尿病についての医学の知識は日々発展し続けているため、こちらの資格も5年毎の更新が必要となっています。
理学療法士×リハビリで役に立つ資格
リハビリに取得できる資格は数多くあります。
多方面の分野の知識を身につけることで、より一人ひとりの患者さんにあった質の高いサポートを提供できるようになるでしょう。
リハビリに役立つ資格は次の7つです。
- 義肢装具士
- 栄養サポートチーム専門療法士
- 福祉住環境コーディネーター
- シーティング・コンサルタント
- 健康運動指導士
- 呼吸療法認定士
- 介護支援専門員
1つずつ資格の特徴をご紹介します。
義肢装具士
義肢装具士は、装具部位の採型や作成、身体での適合を行う仕事です。
義肢装具士の知識を持っていれば、リハビリの際に義肢装具に関するアドバイスを行えます。
義肢装具士は国家資格で、養成学校を卒業後に認定試験の受験資格が与えられます。
栄養サポートチーム専門療法士
臨床栄養学に関する知識を身につけることを目的とした資格です。
資格取得すると栄養管理のアドバイスも与えられるようになり、リハビリの効果をより高められるようになるでしょう。
栄養サポートチーム専門療法士の認定試験を受験するためには次の条件があります。
- 理学療法士を含む資格所有者
- 上記資格で5年以上の栄養サポートに関する実務経験があること
- 日本静脈経腸栄養学会主催のセミナーや講習会で単位を取得していること
- 認定教育施設で合計40時間の実地修練を受けていること
単位を修得後の試験受験となるので、修得までには一定期間を要する資格です。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは、障害者や高齢者が住みやすい住環境のためのアドバイスを行う仕事です。
資格を修得することで、在宅復帰の際の適切な指導を行えます。
また、福祉用具のレンタルや設置も行うため、自宅環境を念頭に置いたリハビリのアドバイスができるでしょう。
資格取得に条件はなく、試験回数も多いため比較的気軽に取得を目指せる資格です。
シーティング・コンサルタント
シーティング・コンサルタントは椅子や車椅子の適切な座り方を指導する専門家です。
車椅子に長時間座っていることで起こる体の痛みなどに対し、正しい知識から適切なアドバイスを行えるようになります。
資格習得のためには研修を受けること必要です。
カリキュラムは数日で修了できるので、比較的取得しやすい資格と言えるでしょう。
健康運動指導士
運動健康プログラムと実践計画を作成及び調整を行う指導士になるための資格です。
資格を取得するためにはまず講習会もしくは養成講座を修了する必要があります。
こちらも数日の講習会の参加で単位が修得できる資格です。
呼吸療法認定士
呼吸に関する知識と技術を身につけるための資格です。
資格を取得することで、呼吸器疾患のある患者のリハビリの際に正しい知識のもとにサポートが行えます。
資格取得のための条件は次の通りです。
- 理学療法士を含む資格所有者であること
- 実務経験が2年以上あること
- 講習会や学会の参加により12.5点以上を修得していること
これらの条件に満たしていると試験を受れます。
試験内容は歴史や倫理的な事柄も出題されるため、実施経験による知識だけではなく座学による十分な準備が必要です。
介護支援専門員
介護支援専門員は一般的にケアマネージャーとも呼ばれる仕事です。
要介護者と介護支援者の相談に応じ、実情に応じて介護サービス計画の立案を担います。
介護支援専門員の資格を取得するには、理学療法士を含む資格所有者であることが必要です。
資格取得までのステップは次の通り。
- 該当する資格を保有し5年以上900日以上の実務経験を積む
- 実務研修受講試験を受ける
- 実務研修を受ける
- 資格修得
資格は5年毎更新で、満了日までに特定の研修を受けなければいけません。
理学療法士×トレーニングで役に立つ資格
トレーニングの知識を身につけ資格取得すれば、スポーツの分野で理学療法士として活躍することができます。
トレーニングに役立つ資格は次の6つです。
- JSPO-AT
- JATAC-ATC
- NESTA-PFT
- NSCA-CPT
- NASM-PES
- 日本体育施設協会トレーニング指導士
1つずつ詳しく見ていきましょう。
JSPO-AT
JSPO-ATは日本スポーツ協会公認のアスレティックトレーナーの略称です。
公認ドクターやコーチとの協力のもと、スポーツ選手のメディカルチェック、外傷予防、トレーニング指導、怪我からの復帰のサポート等を行います。
資格取得には、共通科目150時間、専科科目600時間のカリキュラムを修了し、筆記試験と実技試験に合格することが必要です。
JATAC-ATC
ジャパン・アスレティック・トレーナーの略称で、JSPO-ATよりも予防の側面が強い専門職です。
JATAC-ATCは資格というより、ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会の会員であることを示す称号と言えます。
JATAC-ATCを取得するための試験はありませんが、厳しい条件があります。それは以下の通りです。
- 理学療法士を含む資格所有者
- JATACの講習会で単位を取得していること
- NATA-ATC、日本体育協会公認アスレティック・トレーナーであること
- スポーツ学部のある専門学校、大学を卒業しており、JATAC認定の必要単位を取得していること
JATAC-ATCの期限は5年で、有効期限内に必要な単位を取得することが義務づけられています。
NESTA-PFT
PFTとはパーソナルフィットネストレーナーのことで、NESTA-PFTは国際的に信頼の高いトレーナーに与えられる資格です。
資格取得のためには、PET認定試験を受験する必要があります。
受験資格の中にはパーソナルトレーナーとしての実務1年以上などがあり、実務経験がない場合はNESTAの養成講座を受けることで受験資格を満たすことが可能です。
NSCA-CPT
NSCA認定のパーソナルトレーナーの略称です。
アスリートに限らず、一般の人も含むあらゆる層の健康促進のための医学的なトレーニング指導を行います。
そのため、より幅広い知識が求められる資格です。
資格取得のためにはNSCAの会員である必要があります。
また、CPR(心肺蘇生法)とAED(自動体外式除細動器)の講習認定を受けていなければなりません。
NASM-PES
NASMは理学療法士によって設立された団体です。
NASM-PESはスポーツ医学に基づいた理論で怪我のリスクを抑えつつパフォーマンスを向上させるトレーナー資格。
身体の機能や動作性を深く理解することを目指します。
NASM-PESを受験するためには、次のどちらかに該当していることが必要です。
- 学部を問わず4年生大学もしくはスポーツトレーナー系・医療系専門学校卒業
- NCCA、NBFE、DETCが認定する団体の資格を持っていること
受験の前にオンラインコースを受講することも必須条件となっています。
日本体育施設協会トレーニング指導士
安全かつ効率的なトレーニング指導を行うための専門資格です。
ウェイトトレーニングやサーキットトレーニングの指導が中心となります。
受験資格は体育施設での実務経験か、体育系大学・専門学校生であることが必要です。
資格取得のためには講習会に参加した後筆記試験と実技試験に合格しなければいけません。
資格を維持するために4年毎に講習会を受講し更新手続きを行います。
理学療法士×専門資格で役に立つ資格
国家資格を取得すると、理学療法士の知識や経験を生かして開業することもできます。
理学療法士の資格を役立てつつ新たな道が広がる、という点でおすすめなのは次の3つの資格です。
- 鍼灸師
- あん摩マッサージ指圧師
- 柔道整復師
それぞれどんな資格かをご説明します。
鍼灸師
鍼灸師は東洋医学に基づいた「はり」や「きゅう」を使った治療を行う専門職です。
「はり師」と「きゅう師」は別の資格で、2つの試験を受ける必要がありますが、2つ同時に取得することを目指す人が多いです。
はり師ときゅう師の試験は厚生労働省が定めた養成課程を修了後に受験資格を得れます。
試験合格後、独立開業が認められている数少ない資格の1つです。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩・マッサージ・指圧の技法を使って東洋医学の知識をもとに施術する専門職です。
あん摩マッサージ指圧師の試験を受験するためには、文部科学大臣または厚生労働大臣の指定の学校や、養成施設に3年以上通う必要があります。
あん摩マッサージ指圧師も試験合格後は独立開業が認められている資格です。
柔道整復師
柔道整復師は「接骨院・整骨院の先生」として知られている専門職です。
整体師と異なるのは、柔道整復師は国家資格であり医療行為ができる点。
資格があれば開業することができますし、柔道整復師の施術は保険適用されます。
柔道整復師の受験資格には、文部科学大臣または厚生労働大臣の指定の学校や養成施設に3年以上通い専門科目の受講が必要です。
試験は筆記のみで、年に1回主要都市で行われています。
資格をとって理学療法士としてキャリアアップ転職をしよう
自分にとってどの資格が必要かは、今後進みたい方向性によって違います。
まずは明確な方向性を定め、その上で必要な資格を選択していきましょう。
資格を取ることで、キャリアアップの選択肢が大きく広がっていきます。
この記事があなたのキャリアアップ転職へ一歩踏み出す助けになれば幸いです。