この記事では「作業療法士の資格」について解説していきます。
結論、作業療法士になるためには国家資格の「作業療法士国家試験」への合格が必要です。
その他にも「作業療法士」の説明や、「作業療法士と理学療法士の違い」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んで作業療法士の資格を手にいれていただければ幸いです。
また、理学療法士についてはこちらの記事で紹介しています。
作業療法士の資格「作業療法士国家試験」とは?
「作業療法士国家試験とは、作業療法士の免許を取得するための国家試験です。
作業療法士になるには、この国家試験に合格しなくてはなりません。
国家試験ですが、誰もが受験できるわけではなく、作業療法士養成校に3年以上通わなければ資格がないので注意してください。
それでは、作業療法士国家試験について、試験日程、受験料、難易度について詳しく紹介しましょう。
試験日程
作業療法士国家試験は、毎年2月に実施されます。
試験日程は、筆記試験と口述試験及び実技試験の2日間です。
受験料
作業療法士国家試験の受験料は、10,100円です。
申し込みは、受験手数料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼って納付してください。
なお、受験に関する書類を受理した後は、受験手数料は返還されないので注意しましょう。
難易度
作業療法士国家試験の合格率は、ここ10年70%〜80%と決して低い数字ではありません。
2021年の場合、受験者5,549名、合格者は4,510名で、合格率は81.3%でした。(参考:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について)
合格率だけ見ると試験が簡単なのかと勘違いする人もいるかもしれませんが、決してそんなことはないので注意しましょう。
養成校で試験に突破できる実力があると認めた学生だけに受験資格が与えられるため、しっかり学校で知識をつけなければ合格しません。
日々の予習や復習、個別の国家試験対策に取り組まなければ、合格できないと考えた方がいいでしょう。
また、難易度は毎年ほぼ変わりませんが、ここ数年は合格率が下がってきているといわれます。
これは、作業療法士が充足しているので、資格取得者を絞る厚生労働省の意向があるのかもしれません。
今後、さらに合格者を絞るために難易度が上がる可能性もあるので、これから作業療法士になりたい人は十分に試験対策をしましょう。
「作業療法士国家試験」の基本情報
作業療法士国家試験について、もう少し詳しく紹介しましょう。
特徴は、下記3つです。
- 国家資格である
- 養成校の卒業が必須
- 実技試験が課されている
国家資格である
作業療法士資格は、厚生労働省が主管する国家資格であり、「作業療法士国家試験」に合格しなければ取得できません。
作業療法士国家試験に合格すれば、「作業療法士」と名乗って仕事ができるようになります。
そのため、「作業療法士」を名乗らずに作業療法だけを行うならば、資格取得をしなくても可能です。
しかし、作業療法士と名乗れなければ、病院や施設への就職をできないと考えた方がいいでしょう。
そのため、作業療法士になりたいならば、「作業療法士国家試験」に合格することは必須です。
養成校の卒業が必須
作業療法士国家試験は、誰でも受験資格があるわけではなく、国や都道府県が指定する養成校で3年以上学び、所定の単位を取得して卒業見込となるか、卒業することが必要です。
ただ養成校に通えばいいわけではなく、国家試験に落ちると判断されると、受験資格も与えられない可能性もあります。
養成校でもしっかり知識とスキルを身につけなければなりません。
養成校では一般的な知識をつける座学だけでなく、臨床実習もあります。
受験資格を得るためにも養成校でしっかり勉強する必要があるといえるでしょう。
なお、「理学療法士」の資格を持っている場合、必要となる知識が一部重複しているので養成校での学習期間は2年に短縮できます。
実技試験が課されている
「作業療法士国家試験」は、筆記だけでなく実技試験も課されています。
実技試験の内容は、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法です。
基本的には養成校で習った内容と、実技や実習で培ったことが問われるものなので、過去問題を確認し、養成校の授業を通じで先生や仲間と協力しながら対策しておくといいでしょう。
作業療法士の資格「作業療法士国家試験」は通信でも取得可能?
作業療法士の資格を通信だけで取得したいと考える人もいるでしょう。
残念ながら、通信学習だけでは「作業療法士国家試験」の受験資格が与えられません。
養成校に通うことが必須なので、通信だけで作業療法士の資格を得られないので注意してください。
これは、筆記試験だけでなく実技試験があることも大きな理由です。
そこで、実技だけ養成校で学び、それ以外は通信でできないかを考える人がいるかもしれませんが、これも認められていません。
インターネットで「作業療法士 通信」と検索すると通信学習のサイトがヒットしますが、養成校に通いながら国家試験対策をするものと認識しましょう。
最短で作業療法士になるには?
作業療法士に最短でなる方法は、3年制の養成校を選択するといいでしょう。
「作業療法士国家試験」の受験資格が、3年以上養成校に通うことが条件となっているためこれ以上短くはできません。
ただし、4年間で学ぶことを3年間に短縮するのでカリキュラムは厳しいものとなります。
普段の授業をしっかり受けるだけでなく、国家試験対策も4年制養成校の生徒と比べると短くなるため、合格するためには日々の勉強が重要です。
社会人が作業療法士になる方法
就職してから作業療法士になりたい場合、どんな方法があるでしょうか。
一度社会人を経験する場合、大きな決断の下に作業療法士になりたいと考えるでしょう。
しかし、どのようにすればいいかわからない人もいるのではないでしょうか。
そんな人のためにここでは、社会人が作業療法士になる方法を2つご紹介します。
- 退職後に4年制大学に再入学する
- 働きながら夜間学校に通う
退職後に4年制大学に再入学する
就職した会社を退職し、4年制大学に再入学は1つの方法です。
3年制の専門養成校や短大と比べて、時間を掛けてじっくり作業療法士について学びたい人は、4年制大学を選択するといいでしょう。
4年制大学ならば、患者とのコミュニケーションに欠かせない一般教養や社会常識なども学習できます。
時間を掛けてでも現場に出るまでの基礎を築くために4年制大学はおすすめです。
働きながら夜間講座に通う
社会人から作業療法士を目指す場合、昼間は働いて、夜間学校に通う生徒も少なくありません。
働きながらなので、身体的には辛い面もあるでしょうが、夜間学校ならば同じ境遇の人もいるので刺激を受けられるでしょう。
給料も確保しながら作業療法士の勉強をできるため、「学費を稼ぎたい」「いきなり退職すると生活が苦しくなる」などの理由がある人におすすめです。
理学療法士と作業療法士どっちがいい?
作業療法士と理学療法士は、双方ともリハビリに関する仕事です。
調べていると一緒に出てくることも多く、違いをよくわからない人もいるでしょう。
実際の現場では、互いに連携して業務を進める場面も少なくありませんが、対象者に対する治療上のアプローチは違うものなので、しっかり違いを理解しておきましょう。
そこでここでは、作業療法士と理学療法士、それぞれに向いている人を解説します。
これから臨床の仕事に就きたい人は、ぜひ参考にしてください。
作業療法士が向いている人
作業療法士に向いている人の特徴は、以下3点です。
- 対象者と深く関わりたい人
- 精神障害者とも関わりたい人
- 道具や器具の製作で対象者を支えたい人
①対象者と深く関わりたい人
作業療法士は、対象者と深くコミュニケーションを取り、相手を理解しなくてはなりません。
なぜなら、対象者の多くは病気や事故により、これまで普通にできていた日常生活を急にできなくなってしまった人なので、身体だけでなくメンタル面のケアも求められるからです。
身体的には、食事や調理、洗顔や着替え、趣味など日常生活に必要不可欠な動作と心のケアと理学療法士に比べると手先や指を細かく動かすリハビリテーションが多いのが特徴。
対象者がどんな趣味を持っているのか、これまでどんな生活を送っていたのかを深く理解し、リハビリをしなければなりません。
身体的なリハビリのスキルだけでなく、相手を理解するコミュニケーションスキルも求められ、対象者と深く関わりたい人は作業療法士を目指すといいでしょう。
②精神障害者とも関わりたい人
作業療法士は、精神疾患の影響により心や生活に何かしらの障がいをきたした方々へのリハビリも行います。
これは理学療法士との大きな違いなので、精神障害者とも関わりたい人は作業療法士を目指すといいでしょう。
リハビリ内容は、手作業や全身的な作業、他者との交流を通じて精神状態や社会への適応能力に働きかける治療などとなります。
個別だけでなく集団での治療を行うこともあり、コミュニケーションや対人関係能力の改善も大きな仕事です。
③道具や器具の製作で対象者を支えたい人
作業療法士は、対象者が1人でできることを増やす器具を製作したい人も向いています。
高齢者や障害者など、体に不自由がある人の日常生活を補助する器具を製作する場合も作業療法士の知識があった方が、対象者に役立つものを製作できるからです。
対象者と直接向き合いリハビリを行うだけでなく、器具製作で対象者を支援したい人は、作業療法士の資格を持っておけば、活躍の道が広がるでしょう。
理学療法士が向いている人
一方で理学療法士が向いている人の特徴は、次の3点です。
- 機能回復に興味がある人
- スポーツなどほかの分野でも知見を活かしたい人
- 介護予防など機能保全や予防に興味がある人
①機能回復に興味がある人
理学療法士は、たとえば立ち上がる、起き上がる、歩く、寝返るなど、基本となる機能回復をメインとしたリハビリを行います。
そのため理学療法士が、障害の度合いによってリハビリのカリキュラムを考えなくてはなりません。
主に用いられる手法は、運動療法や物理療法です。
運動療法は、実際に「立つ」「歩く」といった運動を対象者が行い、関節の動きや筋力の回復を目指します。
物理療法は、外部から「温める」「冷やす」や電気刺激を与えることで、身体機能の回復や痛みの緩和などを目指す治療法です。
作業療法士に比べると大きな動作に関するリハビリになる点も大きな違いといえるでしょう。
②スポーツなどほかの分野でも知見を活かしたい人
スポーツトレーナーとして選手のコンディションチェックやトレーニングメニューの発案、障害予防などで活躍したい人も理学療法士に向いているでしょう。
理学療法士は作業療法士と違い、身体に障害のない人に対して指導をする場合、医者の指示を必要としません。
そのため、身体障害のないスポーツ選手の怪我予防や怪我をしてしまった選手のリハビリのために、理学療法士として知見を活かしている人も多くいます。
プロアスリートだけでなく、学生の部活動で身体機能の向上指導や治療をしたいなど、活躍できる場面は多数あるので、スポーツにプレイヤーではなく支援する立場として関わりたい人は、理学療法士を目指してください。
③介護予防など機能保全や予防に興味がある人
介護予防などの機能保全や予防に興味がある人も理学療法士に向いています。
身体に障害のない人に対して介護予防の技術などを指導する場合も、とくに医者の指示を必要としません。
今後、さらに高齢化社会が進んでいくといわれている日本では、身体機能の回復だけでなく健康維持や悪化を予防することもリハビリの目的の1つです。
とくに高齢者向けの施設では、体力低下の予防や運動能力の維持を目的にリハビリが行われています。
高齢者でなくとも、健康維持は誰にとっても大切なことなので、理学療法士の知見を活かして機能保全や予防に興味がある人、教えていきたい人は理学療法士の資格を取るといいでしょう。
作業療法士の資格をとって作業療法士として活躍しよう
作業療法士の資格を取るには、「作業療法士国家試験」に合格しなくてはならなず、「作業療法士国家試験」の受験資格は、3年以上養成校に通うことが必要です。
また、社会人からも作業療法士になることもできます。
仕事面では、作業療法士は理学療法士と違い、メンタルケアも大きな仕事の1つなので精神と身体の両面からアプローチができるのが特徴です。