介護業界の2022年問題をあなたは知っていますか?
この記事では「介護業界の2022年問題」について解説していきます。
結論、介護業界は人手不足が激しいため、ICTのような最新技術を導入することが重要です。
介護業界が2022年に直面する問題をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「介護保険法」の説明や、「有効求人倍率」「給与アップ」についても説明していますので、この記事を読んで介護業界の2022年を知っていただければ幸いです。
また「介護業界の将来性」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
介護業界の2022年危機とは
介護業界では「2022年危機」がずっと囁かれてきました。
一般の方にとってはあまり聞き慣れない言葉ですが、日本国民全員に差し迫った危機でもあります。
特に以下は喫緊の課題として長らく議論されています。
- 団塊の世代が75歳を迎える
- 少子化による支え手不足
- 介護保険制度の維持が難しくなる
それぞれどういったものか詳しく見てみましょう。
団塊の世代が75歳を迎える
2022年に団塊の世代が一斉に75歳を迎えます。
団塊の世代は第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた世代を指し、他の世代の人口よりも突出して多いのが特徴です。
彼らが一斉に75歳を迎えることで、介護を必要とする人が今後増える可能性が非常に高くなります。
75歳以上の高齢者が一気に増えるため、超高齢化社会の到来とも言われています。
少子化による支え手不足
少子化による支え手不足も懸念されています。
現在の介護保険制度は40歳以上が負担する仕組みとなっています。
しかし少子化によって支え手が減っている今、超高齢化社会を支える若手が足りません。
年金制度や医療制度と同じく、介護保険制度も支え手不足による危機が目前に迫っているのです。
介護保険制度の維持が難しくなる
介護保険制度の維持が難しくなっています。
先述したように支え手不足により介護保険制度の維持を疑問視する声が上がっています。
現在、自己負担額は1~3割ですが、全体の約9割の人が1割負担です。
そのため今後、自己負担額を2割に増やすか、介護納付金を増やすかといった対策が急務となっています。
介護納付金の年齢設定を40歳未満に引き下げる可能性もあるため、ますます若者への負担が増えるでしょう。
介護業界は2022年になってどう変わるのか
介護業界は2022年になりどう変わるのでしょうか。
20222年4月27日現在において、明確に判明しているのは以下の3つです。
- 有効求人倍率は高いまま
- ICT化が進んでいる
- 給与が3%(約9,000円)アップしている
それぞれ詳しく見てみましょう。
有効求人倍率は高いまま
介護業界全体で見た有効求人倍率は、3.68倍と高い水準を維持しています。
2022年1月時点での有効求人倍率で比較すると、全体の有効求人倍率が1.2倍なのから考えると非常に高いと言えます。
コロナ禍もあり2019年8月の4.43倍から比べると下がってはいるものの、依然として介護業界に就職したい方は仕事を選べる状況です。
しかし介護業界全体で見ると、有効求人倍率が高くとも人手不足は続いているといった状態でもあります。
ICT化が進んでいる
介護業界ではICT化が進んでいます。
人手不足なのもあり、パソコンやタブレット、スマートフォンを使ったサービスの向上が求められているためです。
- 文書の作成時間の短縮
- スムーズな情報共有
- データに基づく介護
- オンラインの会議
- オンラインの面会
- オンラインでの施設見学
以上のように、利用者とその家族へ感染対策をした上での施設案内もできます。
ICT化を進めることで、業務を効率化でき、人手不足による負担をある程度は軽減できるでしょう。
給与が3%(約9,000円)アップしている
2022年、介護業界の給与が3%(約9,000円)アップしています。
これは2021年11月の閣議決定によって実施された施策の1つで、2022年2~9月までの間、収入を3%(約9,000円)引き上げることを目的とした交付金が支給されているためです。
「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」は、10月以降も継続して給料の改善を予定しているため、限定的に引き上げられるわけではないと考えられます。
人材確保や定着のため低い給与を是正するのは課題の1つだったため、引き続き給与のアップは見込めると言って良いでしょう。
参照元:厚生労働省
介護業界の2022年はICT化に注目
介護業界のICT化は急務です。
人手不足により、介護業務の効率化が最も求められています。
そのため厚生労働省では、ICTを導入した介護事業者に支援を始めています。
要件さえ満たせば一部都道府県が費用を補助してくれる仕組みです。
2022年には全ての都道府県で介護事業者に対して助成が行われるため、ICTを導入することは大きなメリットとなるでしょう。
参照元:厚生労働省
介護業界の2022年における人材不足の解消案
介護業界はいくら業務を効率化しようと人材不足の状態を解決しなければ、今後ますます増えるであろう高齢者に対応できません。
そのため国は以下のような施策を打ち出しています。
- 処遇改善による人材の確保
- 介護ロボットやICTの導入促進
- 意欲ある高齢者の介護補助参入
- 外国人スタッフの受入
それぞれ詳しく見てみましょう。
処遇改善による人材の確保
処遇改善による人材の確保がまずは必要です。
介護業界全体で人手不足は問題となっており、どう改善するかが課題となっています。
国が人材確保に向けて行っているのは次のような施策があります。
- 介護に関する入門的研修の開催
- 認証評価制度を導入
- 介護の仕事の魅力を発信
以上を見ればわかるように、介護の仕事への不安を払拭することが目的です。
他にも給与をアップしたりなど、現職の介護職員への処遇改善も行っています。
介護ロボットやICTの導入促進
介護ロボットやICTの導入促進もカギとなってきます。
ICT導入における業務の効率化は先述しましたが、介護ロボットによる介護補助も有用です。
介護ロボットには様々なものがり、見守り・コミュニケーションができるものから立ち上がりの補助器まで多岐に渡ります。
介護は肉体仕事が多いため、そうした介護ロボットを導入することで肉体的・精神的な負担の軽減が期待できます。
意欲ある高齢者の介護補助参入
意欲ある高齢者(アクティブシニア)による介護補助参入も期待されています。
厚生労働省の調査によると、東京都市部の介護施設では70歳以上の職員が1割を占めています。
食事介助の補助やお茶・おやつの準備など仕事内容は補助的な部分となりますが、現場からすれば非常にありがたい人手です。
更に高齢者であることで以下のようなメリットも期待できます。
- 利用者によっては同年代のため話が合い、仲間のような感覚が生まれる
- 職員や利用者の輪と取り持てる
- 他年代との交流促進が期待できる
もちろん、適切な人員配置が必要です。
参照元:厚生労働省
外国人スタッフの受入
外国人スタッフの受入も検討されています。
介護福祉士を目指す留学生などの支援も実施されているため、介護業界に多くの外国人が来ることでしょう。
今後の人手不足への期待が持てますが、外国人を受け入れることへの不安があるのも事実です。
そうした問題をどう解決するかが今後の課題となっています。
介護業界で外国人を受け入れる際の注意点
介護業界で外国人を受け入れる際に気をつけたいポイントがあります。
特にそれらは日本人の従業員とは全く違うため、注意しなければなりません。
- 日本語能力に不安
- 外国人介護に抵抗を感じる人がいる
- 仕事の定着率が低い
- ホスピタリティへの不安
それぞれ詳しく見てみましょう。
日本語能力に不安
外国人の介護士を受け入れるにあたって一番問題となるのが、日本語能力です。
介護士の資格には様々なものがありますが、求められる日本語能力が少しずつ違います。
在留資格「介護」 | N1~N2 |
特定技能 | N3~N5 |
技能実習 | N4 |
EPA | N3~N5 |
基本的に在留資格「介護」は資格を取得するために高度な日本語が扱えるかを判定されるため、即戦力として期待できます。
それ以外は日本語能力検定の結果から見ても不安が残るため、仕事をしながら日本語を勉強するといったケースも非常に多いの現状です。
日本語能力が足りないことで起こるコミュニケーション不足によるストレスなど精神的な負担にもなるため、周囲のサポートが必要となるでしょう。
外国人介護に抵抗を感じる人がいる
利用者やその家族の中には、外国人介護に抵抗を感じる人が少なくありません。
中には外国人への偏見や、コミュニケーションが思うように取れないために起こるトラブルなどもあるでしょう。
同郷の外国人同志が母国語で喋っているだけでも、何か言われているのではないかと不安に感じる方もいます。
また利用者だけでなく同じ職場で働く職員も抵抗を感じる場合があります。
外国人だけでなく受け入れる日本人にも改善すべき問題点が多いのです。
仕事の定着率が低い
外国人の介護士は、仕事の定着率が低い傾向にあります。
例えばEPA介護福祉士候補生の場合、国家資格に落ちると強制送還されてしまいます。
他にも職場関係のストレスによる離職も非常に多いのが健常です。
様々な要因によって仕事の定着率が低い傾向にあるため、帰国の可能性は常に考えておかねばなりません。
ホスピタリティへの不安
利用者やその家族、そして雇用主が抱えているのが、日本人と同じ水準の対応ができるかというものです。
つまりホスピタリティを意識して働いてくれるのかという不安に繋がっています。
しかし実際に外国人介護士を雇用すると日本人では気がつかないような細かい部分に気がついてくれたといった場合が多々あるため、不安を覚えることはないでしょう。
不安な場合は、外国人介護士を受けている施設側が教育や研修を実施し、ホスピタリィの強化や重要性を理解してくれるようにフォローするのが一番です。
介護保険法は2022年もそのまま
介護保険法は2022年も改正なくそのまま履行されます。
というのも、介護保険法はこれまで3年に一度のペースで改正されているため、2022年はサイクル外だからです。
改正/施行 | 内容 | |
第1期 | 1997年交付/2000年施行 | 介護保険制度がスタート |
第2期 | 2005年改正/2006年施行 | ・予備重視型システムへの転換 ・施設給付の見直し |
第3期 | 2008年改正/2009年施行 | ・医療と介護の連携の強化など ・介護人材の確保とサービスの質の向上 ・高齢者の住まいの整備など ・認知症対策の推進 ・市町村(保険者)による主体的な取り組みの推進 |
第4期 | 2011年改正/2012年施行 | ・地域包括ケアの推進 ・介護療養病床の廃止期限を延長 |
第5期 | 2014年改正/2015年施行 | ・地域支援事業の拡充 ・地域ケア会議の設置義務化 ・自己負担引き上げ(2割負担導入) ・特別養護老人ホームへの新規入居者を限定 ・不足給付の見直し |
第6期 | 2017年改正/2018年施行 | ・自立支援介護の強化に向けた財政制度の創設 ・介護医療院の創設 ・自己負担引き上げ(3割負担導入) |
第7期 | 2020年改正/2021年施行 | ・自己負担割合が最大3割負担へ ・収入に応じた保険料 ・福祉用具のレンタル価格を適正化 ・地域共生社会の実現に向けた「共生型サービス」 ・新しい介護保険施設として「介護医療院」を創設 |
次回の改正は2023年となり、施行は2024年となるでしょう。
また介護医療院のように大規模な施設転換が必要なものは、施行日から数年間、以降までの猶予期間が設けられています。
介護業界は2022年以降も引き続き人員不足に悩まされる
介護業界は、2022年以降も引き続き人員不足に悩まされることとなります。
団塊の世代が一斉に75歳を迎えるため、ICTや介護ロボットの導入、外国人介護士の受入などを検討する必要が出てくるでしょう。
アクティブシニアと呼ばれる高齢者の介護補助も有効な手段の1つです。
介護保険法も3年に一度見直されているため、次回の改正では2022年危機を見据えた内容となる可能性があります。
国や自治体からの補助も得ながら、1人1人が要介護度の重度化を予防する行動が求められています。