「介護業界は退職者が多いって聞くけど、実際はどうなんだろう?」と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
介護労働安定センターの調べによると、介護士の離職率は平成29年度で16.2%でした。
厚生労働省が発表している平均離職率は14.9%なので、介護業界は若干離職率が高い傾向にあります。
では、なぜ介護業界は退職する人が他業界に比べて多いのでしょう?
この記事では、介護業界で多い退職理由から、転職成功のポイントを紹介していきます。
同時に、メリット・デメリットも紹介しているので、介護業界へ転職を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
介護業界はツライ?転職後すぐ辞める人が多い理由
介護業界は人の流動が激しいイメージを持っている人も多いですよね。
実際に、介護業界は過酷な労働条件を強いられている施設も多く、入職後すぐに辞めてしまう人もいるようです。
せっかく転職を成功したのに、なぜすぐに辞めてしまう人がいるのでしょう?
転職後すぐに辞めてしまった人は、以下5つを主な理由に挙げています。
主な退職理由
- 深刻な人手不足で過酷な労働条件だった
- 実際に働き始めたら労働条件と異なっていた
- 新人教育が行われない
- 人間関係のトラブルが起きた
- 実際の介護現場が想像と違った
これから介護業界で働きたいと考えている人は、退職理由を事前に知っておくことで対策ができます。
くわしく紹介していくので、一緒に確認していきましょう。
深刻な人手不足で過酷な労働条件だった
介護施設によって、勤務体制は大きく異なります。
3勤制や4勤制を取っている施設では、深刻な人手不足に陥っている可能性があります。
人手不足の施設では、勤務終了時間なのに引継ぎができずに残業時間が伸びてしまうことも多いです。
また、希望通りに休みをとれず、心身に疲労が溜まり退職する人も多いようです。
ポイント
3勤制・4勤制とは、勤務体制のことです。
3勤制は早番・日勤・遅番に、4勤制の場合は、早番・日勤・遅番・夜勤に分かれています。
実際に働き始めたら労働条件と異なっていた
求人に掲載していた勤務条件や、面接時に聞いた労働条件と、実際の仕事内容が異なり、転職後すぐに退職する人もいるようです。
たとえば、「施設職員として入職したのに訪問介護の担当になった」、「日勤を希望していたのに夜勤ばかり担当になる」などが挙げられます。
新人教育が行われない
介護業界未経験で転職した場合、新人教育が行われないと仕事に支障をきたします。
しかし実際の介護現場では、人手不足により新人教育を行えない施設も多いです。
介護職員として経験を積んだ人であっても、施設ごとに異なるルールを覚えるのに時間がかかります。
まったくの未経験者であれば、新人教育が行われないと、介護や施設のルールを覚えるのにより多くの時間がかかるのは想像に難くないですよね。
その結果、仕事ができないことで職場に馴染めず退職してしまうケースが多々見受けられます。
人間関係のトラブルが起きた
介護職の現場は職員同士の距離が近く、人間関係にトラブルを抱えることも珍しくありません。
とくに、世代や派閥による対立が起こることも多いです。
そのため、介護の仕事や利用者に不満はないが、職場の人間関係が悪く、耐えられずに辞めてしまうケースも多いです。
実際の介護現場が想像と違った
社会奉仕の気持ちで入職したけれど、実際介護の現場を目の当たりにして、想像と異なるため退職する人も多いです。
大半の利用者は、身の回りの世話をしてくれることに感謝してくれます。
しかし、利用者の中には、介護士を召使のように扱ったり、急に怒鳴ったりする人もいるのが現実です。
そのような、想像と現実の剥離に落胆してしまうと、長く続けるのは難しいかもしれません。
介護業界への転職を成功させるポイント
これまで、せっかく介護業界に転職したけれど早い段階で退職してしまった人の主な退職理由についてお伝えしました。
では、そうならないためには、何に気を付けて転職先を選べばいいのでしょうか。
介護業界へ転職を成功させるポイントは4つあります。
転職を成功させるポイント
- 優先順位をつける
- 求人掲載の頻度を確認する
- 職場見学に行く
- 複数の施設を比較する
上記のポイントに気を付けると、自分にとって最適な職場を見つけられます。
くわしく解説していくので、介護業界へ転職する際は参考にしてみてください。
条件の優先順位をつける
実際に求人を探しはじめる前に、希望条件を明確にして優先順位をつけましょう。
仕事への希望条件が明確になっていないと、自分に合わない転職先を選んでしまう可能性があります。
希望条件が多い場合は、優先順位をつけて、より条件に近い職場を探すことがおすすめです。
業務内容
一口に介護業界といっても、施設の種類によって業務内容が異なります。
介護業界の主な施設は以下の通り。
施設一覧
- 有料老人ホーム
- 介護サービス付き高齢者住宅
- 住宅型有料老人ホーム
- シニア向け分譲マンション
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養医療施設
- 軽費老人ホーム
- ケアハウス
上記以外にも、利用者の自宅に訪問して、必要な介助を行う訪問介護などがあります。
施設によって業務内容は大きく異なるため、どんな仕事を行いたいか明確にしておきましょう。
収入
介護業界に長く身を置く場合、収入面もしっかり確認する必要があります。
介護業界は他業界に比べて給与水準が低い傾向にあります。
労働時間に見合った給与がもらえるのか確認しておきましょう。
また、資格取得時や時間外手当の有無も確認する必要があります。
休日
休日が確保できないと、仕事の疲労が蓄積してしまいます。
休みは週何回取れるのか、有給休暇は取得できるのか確認しましょう。
また、介護業界の年間休日は平均110日といわれています。
平均年間休日を目安に、しっかり休みの取れる施設を転職先に選びましょう。
福利厚生
長く勤務を続ける上で、福利厚生が整っていることも重要です。
退職金制度や年金制度の有無、資格取得制度、育児や介護に対する支援制度の有無を確認しましょう。
また、女性の場合は育休制度が整っているか、過去取得者はいるのか確認することも大切です。
育休制度が整っていれば、将来子どもを産んだ後も仕事を継続できるでしょう。
スキルアップ
スキルアップ制度のある場合、人材育成に前向きな施設といえるでしょう。
新人研修やスキルアップ研修、資格支援制度が確立している施設なら、働きながら介護職員として成長できます。
とくに、資格支援制度がある施設で働くと、より上位の介護資格取得も目指せますよ。
上位資格を取得することで携われる業務内容の幅も広がり、給与アップが狙えます。
下記の記事では、介護系資格について解説しています。
資格取得を目指している人は、あわせて参考にしてみてください。
介護資格を取る方法とは?実際に取得した人の口コミやメリットからキャリアパスまで徹底解説
求人掲載の頻度を確認する
実際に応募を検討するときは、求人掲載の頻度を確認しましょう。
頻繁に求人を掲載している施設は、人員の流動が激しいことを意味します。
何らかの問題を抱えているケースが多いので注意しましょう。
なぜ求人を募集しているのか確認する
求人に応募するときは、なぜ求人を募集しているかもあわせて確認するのがおすすめです。
募集背景を知ることで、施設の方針や労働環境を明らかにできます。
たとえば、人手不足解消のための人員募集は、職員を増やすことで一人ひとりの負担を改善する目的があります。
上記のような募集背景がある場合、職員に寄り添った施設といえるでしょう。
しかし、退職者が出たことによる人員募集は、何らかの問題を抱えている可能性があるため注意しましょう。
職場見学に行く
事前に職場見学ができる施設は、応募前に参加するのがおすすめです。
職場見学をすると、利用者や職員の雰囲気が分かり、実際の労働環境を確認できます。
利用者や職員が明るくイキイキしている施設を選ぶのがおすすめです。
複数の施設を比較する
転職をする際は、1つの施設だけで決めてしまうのではなく、複数の施設を比較しましょう。
複数の施設を比較することで、施設ごとのメリット・デメリットが浮き彫りになります。
比較した結果、自分に一番合うと思った施設を選ぶのがおすすめです。
スムーズに介護業界に転職するコツ
スムーズに介護業界に転職するコツは3つあります。
スムーズに転職するコツ
- 資格を取得する
- ハローワークを活用する
- 転職エージェントに話を聞く
くわしく解説していくので、転職活動の参考にしてください。
資格を取得する
介護系資格を取得していれば、転職で有利になります。
介護系資格を取得していると、介護の基礎や技能を取得していると証明できます。
そのため、即戦力として迎えてもらえる可能性が高いです。
介護職未経験であっても取得できる資格があるので、余裕がある人は取得しておきましょう。
ハローワークを活用する
ハローワークは、担当者と相談しながら転職活動を行えるため、自分に合った施設を選べます。
現在の求人傾向を教えてもらえたり、希望条件に近い求人を紹介してもらうことも可能です。
また、ハローワークでは、大手求人会社では掲載していない企業の求人を多く掲載しています。
より多くの求人から、自分にとってベストな転職先を見つけられるでしょう。
ただし、ハローワークは利用者が多いと長い待ち時間が発生します。
ハローワークを利用するときは、時間に余裕をもって行きましょう。
転職エージェントに話を聞く
求人掲載情報だけで転職先を選ぶと、ミスマッチが起こってしまうかもしれません。
ミスマッチを防ぐためには、介護業界に強い転職エージェントに話を聞きましょう。
介護業界に強い転職エージェントは、施設の評判や状況をしっかり把握しているため、ブラック企業を防げます。
また、希望条件に合った施設を複数紹介してもらえるため、ミスマッチの可能性が低いでしょう。
下記の記事では、転職エージェントについて紹介しています。
転職エージェントの利用を検討している人は、あわせて参考にしてみてください。
介護転職エージェントを比較|おすすめのエージェントやメリット・デメリットを紹介
介護業界で正社員として働くメリット
次に、介護業界で正社員として働くメリットを紹介していきます。
介護業界への転職を成功させるためには、デメリット・メリットを理解しておくことが大切です。
まずはメリットについて解説します。
メリット
- 未経験でも正社員として採用されやすい
- パートやアルバイトに比べて給与が高い
- スキルアップを目指せる
未経験でも正社員として採用されやすい
介護業界は慢性的な人手不足に陥っているため、未経験でも正社員に採用されやすい傾向にあります。
利用者が増加しているのに対して、介護職員の少ないことことが理由です。
2025年には介護施設の利用者がピークになるといわれており、その際には30万人の職員不足に陥るといわれています。
パートやアルバイトに比べて給与が高い
介護業界の正社員とパートやアルバイトは、5万円以上給与に差があります。
男性正社員の給与は20万円~25万円が最も多いです。
しかし、男性のパートやアルバイトの給与は15万円~20万円といわれています。
同じ業務を行っていても、正社員とアルバイトやパートには大きな賃金差があります。
スキルアップを目指せる
介護職員として正社員で働くと、資格取得制度を利用できる可能性が高いです。
資格取得制度を利用すると、国家資格である介護福祉士の取得もできるでしょう。
また、正社員はより責任感のある仕事を任せられます。
そのため、より介護に関する知識や技能を習得できるため、スキルアップできるでしょう。
介護業界で正社員として働くデメリット
次は、介護業界で働くデメリットを紹介します。
介護業界で働くデメリットは以下の通り。
デメリット
- 他業界と比較して給与が安い
- 暦通りに休みを取れない
- 幅広い業務をこなさなくてはならない
デメリットについてもくわしくチェックしていきましょう。
他業界と比較して給与が安い
介護業界で働くデメリットとして、他業界と比較して給与が安いことです。
国税庁が発表している平均年収は461万円です。
一方、介護職員の平均年収は350万円になっています。
ほかの業界と比較して、介護業界は111万円年収が低いとわかります。
暦通りに休みを取れない
介護業界で正社員として働く場合、暦通りに休みを取れない可能性が高いです。
介護業界で正社員になると、人が足りない日時に優先的にシフトが組まれます。
そのため、パートの人が勤務できないことの多い土日や祝日は、休める可能性が低いでしょう。
幅広い業務をこなさなくてはならない
施設での仕事は利用者の介助だけでなく、企画の立案や会議、面接など多岐にわたります。
正社員として働くと、そのすべての業務を行わなくてはいけません。
大きな施設では、介護事務など専門の担当者がいますが、小さい施設では介護職員がそれぞれを分担して行います。
そのため、正社員として働く場合、幅広い業務に携わらなければいけません。
ポイントを押さえて介護業界への転職を成功させよう
介護業界への転職を成功させたい人は、介護業界のメリット・デメリットを知って、自分に最適な施設を選ぶことが大切です。
この記事では、介護業界への転職を成功させるコツや、スムーズに転職するポイントを紹介しています。
介護業界への転職を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。