看護師と聞くと多くの方が病院で働くイメージを持つと思いますが、それは全体の約7割ほどで実は病院外で看護を行っている人がいることをご存知でしょうか。
本記事では患者さんの自宅を訪れて行う訪問看護に焦点を当て、その年収事情についてご紹介します。
訪問看護に関心があるなら、一般的な病院に務める看護師と比較して給料は高いのか低いのか、どんなメリットやデメリットがあるのか気になりますよね。
訪問看護で働く看護師の1日を例に挙げて、一般的な看護師との違いを見ていきましょう。
この記事の前半では「訪問看護について」とその「年収事情」、後半では「訪問看護の魅力」や「訪問看護に向いている人はどんな人なのか」についても触れています。
これから看護師を目指す人や看護師になったばかりの人には、こんな働き方もあるという参考になれば幸いです。
また、「ホームヘルパーの年収事情」についてはこちらの記事で触れていますので、気になる方はぜひご一読くださいね。
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訪問看護とは?
看護師が利用者の自宅へ訪問し、主治医が作成した『訪問看護指示書』に基づいて療養中のケアを行うサービスです。
内容は利用者への医療処置からターミナルケアまで多岐に渡り、利用者だけでなくその家族の相談に対応するなどメンタルケアも欠かせません。
また、訪問看護サービスを受けるためには、以下に挙げる一定の条件を満たしている必要があります。
- 医師から『訪問看護指示書』を交付されている
- 65歳以上かつ要介護と要支援いずれかの認定を受けている
- 要介護および要支援の認定を受けている40歳以上65際未満で16特定疾病の人
一般的に訪問看護が必要な方は、他の介護サービスも同時に必要とします。
そのため多くの方が先に介護保険を申請して要介護認定を受けるケースが多いようです。
これは「要介護または要支援と認められた方は、医療保険より介護保険を優先的に利用するように」と制度により決められている他、介護保険の方が自己負担が少ないという大きなメリットがあるからです。
訪問看護の仕事内容
訪問看護サービスを提供しているのは、一般的には病院ではなく訪問看護ステーションです。
保健師または看護師が管理者をしている事業所で、「住み慣れた我が家で看護サービスを受けたい」と望む利用者の自宅へ看護師を派遣しています。
近年では病床数の削減や入院日数の短縮化を受けて、訪問看護部門を設けたり外来部門が訪問看護を兼任する病院が増えているようです。
訪問看護の主な業務内容は、健康状態の観察、病状悪化の防止及び回復、点滴や注射などの医療処置、それから療養生活の相談及びアドバイス、服薬管理などが挙げられます。
人生の最期を自宅で迎えたいと希望する人も増えており、そうした利用者のQOL(Quolity of life)を保つターミナルケアを行うのも訪問看護師の役目です。
訪問看護に必要な資格
まず大前提として、准看護師または看護士の資格が必須となります。
それから訪問看護ステーションか訪問看護を行っている病院やクリニックに所属していなければなりません。
また、医療処置から日常生活の支援、利用者家族からの相談応対などあらゆる業務を一人でこなす必要があるため、3~5年程度の臨床経験が必要とも言われています。
不足の事態であっても臨機応変な対応が求めらることから、最近では訪問看護師としての経験値を先輩との同行や各種研修でカバーするという教育環境の整備が進められています。
訪問看護で働く看護師の1日(例)
■9:00 出勤(仕事開始)
訪問看護で働く看護師の1日は、所属している訪問看護ステーションに出勤するとことから始まります。
■9:30 訪問看護先へ出発
自転車または車で訪問先へ向かいます。
■10:00 訪問看護開始
『訪問看護指示書』に基づいて看護を行います。
一般的には午前中に1~2件ほど訪問するケースが多いようです。
■12:00 昼食
■13:30
午後の訪問先で、引き続き『訪問看護指示書』に基づいて看護を行います。
■16:30 訪問終了
訪問看護ステーションに戻り、利用者の状態をカルテに記録します。
状況に変化があった場合は、主治医やケアマネージャーへの報告を行います。
■17:30 業務終了
訪問看護で働く看護師の年収
病院に務める看護師と比べて、夜勤手当がない分だけ年収が下がるのが一般的です。
しかし、事業所によっては24時間365日体制のところもあるので、そうした場合は夜勤手当に替わるオンコール手当が支給されます。
訪問看護で働く看護師の平均年収は350万円~450万円程度と言われていますが、働き方によってはこれ以上低くなることも、逆に高くすることも十分に可能です。
病院看護師より低い?
前述の通り、訪問看護で働く看護師には夜勤がありません。
そのため病院に務める看護師よりは40~50万円ほど年収が下がる傾向にありますが、訪問看護ステーションによって給与体系がさまざまなことも原因の一つとなっています。
また、訪問看護で働く看護師は正社員以外にも契約社員、パート、アルバイトまで幅広く活躍しており、どちらかというと年収より働きやすさを優先する方が多いようです。
地域や年齢によって異なる
訪問看護で働く看護師の年収は、地域によって大きな差があるのも特徴の一つです。
時給相場は1,500~2,000円ですが、低いところでは1,100円から高いところでは3,000円超の求人も見受けられるため、地域や経験値によって給与に幅があるということを覚えておきましょう。
とはいえ、業界全体における訪問看護で働く看護師の給料および年収は上昇傾向にあります。
これは病床数の削減や入院日数の短縮化といった「入院から在宅へ」の流れの促進を受けて、以前と比べて診療報酬が手厚くなった分が給料に反映されています。
訪問看護で働く看護師の手当
夜勤手当がないと記載していますが、訪問看護で働く看護師にもいくつかの手当があります。
- オンコール手当
- サブ担当手当
- 時間外緊急出勤手当
まず、オンコール手当についてですが、訪問看護には緊急対応が必要なケースに備えて、現場以外の場所で待機するオンコールと呼ばれる働き方があり、この当番になるともらえる手当のことです。
次にオンコール当番をメインとサブの2人体制で行う場合、サブ当番の人に支給されるのがサブ担当手当となります。
そしてオンコールを受けて緊急訪問・出勤となった場合につくのが時間外緊急出勤手当であり、その金額は実働した分の時給制の場合と定額制の場合があります。
訪問看護の魅力
同じ看護師として働くなら給料は高いほうが良いと思う方が多いと思いますが、訪問看護にしかない魅力というものが存在します。
担当する患者さんによって異なる病気や障害の状態、生活環境、そしてその家族との応対など、訪問看護で得られる幅広い知識は同じ病院やクリニックに長年務めていてもまず手に入りません。
いくつもの診療科を経験してようやく得られるものが、訪問看護にはいくつもあります。
一人ひとりと向き合える
訪問看護では一人ひとりに必要な支援を一人で行うため、責任とやりがいは病院勤務より大きいです。
医療保険を利用した場合は週3回(各30分~90分程度)まで、介護保険を利用した場合は4区分(20分/30分/60分/90分)の間で一対一で向き合います。
全てにおいて十分というわけではありませんが、一人に対してこれだけの時間をかけて手厚いケアができるのは、訪問看護ならではといえるでしょう。
夜勤がない
訪問看護には基本的に夜勤がありません。
病院勤務は体力的に厳しいという人でも、夜勤がない訪問看護ならどうにか頑張れるというケースが多いようです。
ただし、24時間体制の訪問看護ステーションではオンコール当番があり、待機中はある程度の自由があるものの、緊急時には訪問・出勤しなければなりません。
絶対に夜勤をやりたくない、夜はしっかり休みたいという方は、オンコール体制ではないステーションを選ぶか、当番をしないという条件で就業するようにしましょう。
時間に融通がきく
訪問看護で働く看護師は正社員からアルバイトまで幅広く、ライフスタイルに合わせた働き方が選べます。
パートやアルバイトであれば時間にある程度融通がきくため、小さな子どもがいる場合や要介護の親がいる場合などはとても有利です。
勤務時間が減ればもちろん年収も減りますが、働きやすさを優先する看護師にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
訪問看護に向いているのはこんな人
病院内の看護は医療処置がメインですが、訪問看護は療養中のお世話を含めたケアがメインとなります。
そのため看護へのこだわりが強い方や医療処置が好きな方、最前線で看護業務をやりたい方にはやや不向きです。
一方で責任感が強い、コミュニケーションが苦ではない、営業や経営に興味があるという方は訪問看護に向いているかもしれません。
責任感があって自主的に動ける
患者さん一人に対して一人の看護師がつく訪問看護の現場では、やりがいがある一方で様々な場面で責任がつきまといます。
また、先輩看護師や医師など相談できる人が身近にいないため、何事も自分で考えて行動しなければなりません。
頼まれた仕事はやりきる、何をすべきか考えて率先して行動できるという方は、訪問看護に向いていると言えるでしょう。
臨機応変な対応ができる
訪問看護の現場では相談できる人が近くにいないため、あらゆる事態に備えた判断力と行動力が求められます。
豊富な臨床経験がある、数々の現場を見てきたなど、経験と知識に基づいた臨機応変な対応ができれば理想的。
ただし、自分一人で判断できない場合や『訪問看護指示書』にない業務をどうしても行わなければならない場合は、まずは管理責任者に連絡をとって指示を仰ぐのが懸命です。
コミュニケーション能力が高い
看護を行うにあたって患者さんの自宅を訪問するわけですから、もしかしたら患者さんだけでなくご家族が同居しているかもしれません。
あいさつができるのはもちろんとして、マナーを大切にできる、患者本人やその家族ときちんと話ができる人は訪問看護向きと言えます。
もしも訪問看護ステーションの採用面接を控えているなら、コミュニケーションスキルが高いことを積極的にアピールしましょう。
体力に自信がある
訪問看護に夜勤がないとはいえ、一対一の現場ですからそれなりの体力は必要になります。
また、移動が多いので交通手段によっては、看護とは全く別のもっと基本的な体力が必要になるケースもあるでしょう。
将来的に訪問看護師として働きたいと考えている方は、今のうちから隙間時間を見つけては体力づくりしておくことをおすすめします。
訪問看護で働く看護師が年収をアップさせるには?
病院勤務の看護師よりも年収が低い傾向にある訪問看護師ですが、年収アップが望めないかといえばそうでもありません。
訪問看護にも手当はありますし、前述の通り地域や職場によって給料に幅があるため、行動次第である程度の年収アップはすぐに可能です。
オンコール当番を増やす
最も手軽な方法がオンコール当番を増やして手当を多くつけてもらうことです。
職場にもよりますがオンコール手当の平均額は1回3,000円程度であり、万が一緊急出勤することになれば時間外緊急出勤手当もプラスされます。
一月あたりの当番回数は7〜8回が一般的ですが、10回にすれば月々6,000円アップしますし、何の準備もいらないので「すぐにでも収入を増やしたい!」と感がている方におすすめです。
資格を取得する
職場によりますが、資格を取得することで資格手当が付く場合があります。
- 専門看護師
- 認定看護師
- 認定看護管理者
上記の資格は場合によっては1万円/月の手当がつくこともあり、転職にも有利なので可能なら取得しておきましょう。
専門看護師は“看護のスペシャリスト”、認定看護師は“現場のスペシャリスト”といったところで、実務研修期間が5年以上あるなら取得することをおすすめします。
待遇の良い職場に転職する
現在の職場に務めて1年以上になるなら、思い切ってより待遇のいい職場に転職するのも一つの方法です。
現在の職場で管理職を目指すのもいいですが、転職はオンコール当番を増やすのと同等のスピードと確実性があります。
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訪問看護はやりがいのある仕事!
病院勤務とは違った魅力とやりがいがある訪問看護ですが、今後は需要の高まりを受けて人員確保が課題となりそうです。
院内の人間関係に翻弄されていたり、日々の夜勤がつらいと感じているなら訪問看護へ転職するのもいいかもしれません。
年収は一時的に下がるかもしれませんが、自分らしい働き方を見つけるチャンスです。
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