EPA介護福祉士候補者がどのような人かは知っていますか?
この記事では「EPA介護福祉士候補者」について解説していきます。
結論、EPA介護福祉士候補者とは日本で研修をしながら介護福祉士の資格取得を目指すもの外国人のことです。
EPA介護福祉士候補者でわかりづらい「EPA介護福祉士候補者の概要」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「キャリアステップ」の説明や、「EPA介護福祉士候補者の在留期間」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んでEPA介護福祉士候補者について知っていただければ幸いです。
EPA介護福祉士候補者とは?
EPA介護福祉士候補者とは、EPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で就労と研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す外国の方々を指します。
現在、EPA介護福祉士候補者受け入れ国は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国です。
しかし、国籍を有していれば誰もがなれるわけでは無く、ある一定の条件を満たさなければなりません。
EPA介護福祉士候補者の受け入れは平成20年度から始まり、介護福祉士国家試験の合格者を毎年増やしています。
EPA介護福祉士候補者の資格要件
EPA介護福祉士候補者になるには、資格要件があります。
誰もが同じ条件ではなく、国籍(インドネシア・フィリピン・ベトナム)によって違うため注意が必要です。
ここでは、EPA介護福祉士候補者の資格要件を紹介します。
インドネシアの場合
インドネシアからの場合、以下どちらかの条件をクリアしている必要があります。
- 高等教育機関(3年以上)卒業+インドネシア政府による介護士の認定
- インドネシアの看護学校(3年以上)卒業
さらに日本語能力も問われるため、訪日前の6ヶ月間と訪日後の6ヶ月間の日本語研修を修了していなければなりません。
しかし、日本語能力試験N2の日本語能力がある場合は、日本語能力が一定あると認められて合計12ヶ月の日本語研修を免除されます。
フィリピンの場合
フィリピンからの場合、インドネシアからの場合とほぼ同様で、以下どちらかの条件をクリアしている必要があります。
- 4年制大学卒業+フィリピン政府による介護士の認定
- フィリピンの看護学校(学士)(4年)卒業
さらに日本語能力も問われるため、訪日前の6ヶ月間と訪日後の6ヶ月間の日本語研修を修了していなければなりません。
しかし、日本語能力試験N2の日本語能力がある場合は、日本語能力が一定あると認められて合計12ヶ月の日本語研修を免除されます。
ベトナムの場合
ベトナムからの場合、ベトナム国内における3年制または4年制の看護課程を修了していなければなりません。
日本語能力については、訪日前日本語研修(12ヶ月)受講後に日本語能力試験N3以上に合格している必要があります。
さらに訪日後2.5ヶ月の日本語研修と2.5ヶ月の介護導入研修を修了しなければなりません。
訪日後の日本語研修は、日本語能力試験N2の日本語能力を認められれば免除されます。
EPA介護福祉士候補者の在留期間とは?
EPA介護福祉士候補者の最長在留期間は4年間で、介護福祉士の国家資格取得を目的として滞在中に就労・研修が可能です。
そして介護福祉士の国家試験を受験して合格すれば上限なく在留資格を更新でき、介護福祉士として働き続けられます。
しかし、国家試験に不合格だと帰国しなければなりません。
ただし不合格でも4年間就労・研修をした人は、日本語能力や介護に必要とされる一定の水準を満たしているとみなされ、「特定技能1号」へ移行できます。
「特的技能1号」に移行できると在留期間の更新回数の制限がなくなり、最長5年間は介護施設などでの就労が可能です。
EPA介護福祉士候補者の在留資格
EPA介護福祉士候補者の在留資格は、日本とインドネシア・フィリピン・ベトナム2国間の経済連携強化を目的に設けられています。
日本の介護業界で働く外国人介護人材には現在、EPA以外にも「介護」「技能実習」「特定技能1号」があり、EPA介護福祉士から在留資格の変更が可能です。
とくにEPA介護福祉士から介護への変更は、一定要件を満たせば可能なので活用を検討するといいでしょう。
ここではEPA介護福祉から介護へ在留資格変更について説明します。
特定活動(EPA介護福祉士)から介護に変更?
令和2年4月1日法務省令改正によりEPA介護福祉士候補者として来日し、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格「介護」に変更できるようになりました。
ただし、「特定活動(EPA介護福祉士)」から在留資格「介護」に変更すると、当該介護福祉士はEPA制度の枠外で日本に滞在することとなります。
巡回訪問や資格取得者向け研修など、日本政府や事業団が実施している支援の対象外となるため注意が必要です。
EPAの目的は、介護福祉士の資格取得を行い、国際連携の強化を行うという点にあるため、日本国内の介護業界人材不足解消を目的とした制度ではありません。
もし人材不足を目的とした就労制度を利用する場合は、在留資格「介護」への変更を検討するといいでしょう。
「特定活動(EPA介護福祉士)」と「介護」の在留資格の違い
EPA介護福祉士は、介護福祉士の資格を持っていなくても問題ありませんが、在留資格「介護」の場合は資格保持が必須です。
また、EPA介護福祉士は学習支援を無償で受けられますが、「介護」の場合は有料で研修を受けなければならず、EPA介護福祉士の方がメリットがあります。
一方でEPA介護福祉士は在留期間更新時にオンライン申請を使用できませんが、「介護」ならば利用可能です。
EPA介護福祉士から「介護」の在留資格に変更すると、研修費用以外はメリットが多いので介護福祉士の資格を取得後、変更検討をしてもいいかもしれません。
EPA介護福祉士候補者の受け入れ要件
介護福祉士候補者の受入れ要件は、介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されており、介護職員の員数が30名以上であることが必要です。
また、常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有する職員であることも要件として定められています。
さらに過去3年間に経済連携などの枠組みによるEPA介護福祉士の受け入れで、虚偽の求人申請や二重契約、外国人就労に係る不正行為があると受け入れできません。
JICWELSは、マッチングが成立した受入れ希望施設と就労希望者双方に対して最終的な受入れ・就労の意思を確認し、受入れ希望施設側がマッチングした就労希望者の受入れ可否を選択できるため、自分たちの意志は尊重されます。
EPA介護福祉士候補者の人数とは?
令和元年8月末時点で、EPA介護福祉候補者の累計受入れ人数は、インドネシア・フィリピン・ベトナム3国併せて6,400人を超えました。
毎年何人でも受け入れられるわけではなく、国内労働市場への影響などを考慮し最大人数は3国それぞれ300人ずつとされています。
しかし、訪日前後の日本語研修免除者については、2018年度から年間の受入れ最大人数の枠外で受け入れられることとなりました。
EPA介護福祉士候補者が働くまでの流れ
EPA介護福祉候補者が働くまでには一定の流れがあります。
- 自国での日本語研修
- 日本での語学研修と介護研修
- 日本での介護実務
それぞれの内容について見てみましょう。
①自国での日本語研修
インドネシアとフィリピンからの場合は、6ヶ月の日本語研修を来日前に行う必要があります。
ベトナムからの場合は12ヶ月の日本語研修を来日前に行い、さらに日本語能力試験でN3以上を取得しなければEPA介護福祉候補者の要件を満たしません。
②日本での語学研修と介護研修
インドネシアとフィリピンの介護福祉士候補者は日本へ入国後6か月間、研修施設で宿泊しながら日本語研修と介護導入研修を受けます。
日本の生活に慣れるだけでなく、就労ガイダンスで施設担当者との打ち合わせや、これから働くための準備をしなくてはなりません。
ベトナムからの場合は、日本語研修と介護導入研修、社会文化適応研修を2.5ヶ月行います。
インドネシアやベトナムからの場合と比較して少ないですが、自国での語学研修は長いことが理由です。
③日本での介護実務
研修終了後、受け入れ施設で4年間働きながら介護の専門知識や技術の習得をします。
食事や排せつ、入浴の補助や身仕度の手伝いなどといった実務や介護日誌などの事務作業、さらに実際の現場で日本語の習得が主な内容です。
国家試験を受けるには3年以上が必要なので、それ以降の受験となります。
EPA介護福祉士候補者の介護福祉士国家試験の合格率
2021年に行われた「第33回介護福祉士国家試験結果」のEPA介護福祉士候補者の合格者は440名で合格率は46.2%でした。
年々合格者は増加の傾向で、7年前の第26回合格者から比較すると5倍以上の合格者がおり、合格率も36.2%から大きく上がっています。
EPA介護福祉士候補者が介護福祉士国家試験を受ける時の注意
EPA介護福祉候補者が介護福祉国家試験を受けるとき、試験時間が1.5倍に延長されます。
また、すべての漢字にふりがなが付記された問題用紙と、一般の受験者と同様の一部の漢字にふりがなが付記された問題用紙が配付されるのが特徴です。
実技試験もあるため、EPA介護福祉候補者だからといって特別扱いされるわけではないため、しっかり準備しておきましょう。
なお、日本人と同じように「実務者研修」や「介護技術講習会」を受講すると実技試験免除されますが、時間とお金に余裕がなければ難しいため、実技試験の対策を忘れてはいけません。
EPA介護福祉士候補者が試験に不合格になったらどうなる?
試験に不合格で4年間の在留期限が満了する場合は雇用契約も終了となり、母国へ帰国しなければなりません。
ただし、直近の介護福祉士国家試験において合格基準点の5割以上を得点しており、全ての試験科目で得点があれば、「特定技能」のビザを得られる可能性があります。
特定技能のビザを取得できれば、もう1年在留資格を与えられ、この間に介護福祉国家試験に合格すれば在留期間の制限を無くすことが可能です。
なお、最終年度の看護師及び介護福祉士国家試験合格発表において不合格であった場合でも、受け入れ施設との雇用契約は契約期間満了まで終了されないため、引き続き働くことは可能です。
EPA介護福祉士の課題とは?
EPA介護福祉士の課題として、以下3点が挙げられます。
- 日本語が不自由
- 施設側の配慮が必要
- 合格率が低い
それぞれの課題について詳しく見てみましょう。
日本語が不自由
日本語能力は提供するサービス業務の安全性と質の高さを確保するため,必要不可欠といえるでしょう。
とくにインドネシアとフィリピンからの受け入れには、自国で6ヶ月間の日本語学習しかEPA介護福祉士候補者の要件となっていないので、入国後の研修から本格的に学ぶ人もいるようです。
日本語でのコミュニケーションが取れれば解決できる問題もありますが、日本語の壁を大きいのですぐに取り払うことは難しいでしょう。
施設側の配慮が必要
EPA介護福祉士候補者を受け入れる施設側も費用と時間で配慮が必要になります。
厚労省の指針に基づいた労働関係法令を適用した就労、日本人と同等額以上の報酬と研修計画の策定、研修責任者や研修支援者の配置が必要であり、施設側の負担も大きいです。
候補者への支援体制もそれぞれの施設ごとに任されるため、日本語や国家試験対策に対する支援態勢は施設ごとに異なります。
候補者たちが日本語研修を受けているとはいえ、言語や文化の違いから現場で直接コミュニケーションを取るのが難しいケースもあり、施設に関係なく候補者に対して一定の教育を施す必要性があるといえるでしょう。
合格率が低い
年々、介護福祉士の合格率が上がっているとはいえ、全体の受験者全体と比較するとまだまだ低い状況です。
この原因は、候補者の日本語能力と受け入れ施設側の支援といわれています。
しかし、就労しながら日本語の試験勉強を行わなくてはならず、4年間の中でも受験の機会は限られており、合格率を上げるのは簡単ではありません。
施設側は介護だけでなく日本語研修も行わなくてはならず、人材確保が難しいことも背景にあると考えられます。
EPA介護福祉士候補者について知ろう
EPA介護福祉士候補者について解説しました。
決して国内における介護職の人手不足を解決する手段とは言われていませんが、介護士が不足している日本にとって今後さらに必要となる存在です。
ただし、まだ課題も多く残っており、候補者本人だけでなく受け入れ施設も負担がかかるため、誰もがどこでも就労できるものではありません。
環境整備などが進み、EPA介護福祉士候補者の介護福祉国家試験の合格率が上がれば、ますます活躍の機会が増えると予想されます。
将来的にも必要な存在となることは間違いないため、EPA介護福祉士候補者について知っておくといいでしょう。