介護業界は転職の多い業界です。他業界から介護士を目指す人と介護業界内で別の事業所へ移る人がいますが、どちらの場合でも面接において転職理由を聞かれます。
転職理由は人それぞれなのでつい正直に答えてしまいがちですが・・・転職理由によっては面接の評価を落とすことも。ときにはそれが原因で不採用となることもあるので注意が必要です。
そこでこの記事では面接時の転職理由について悪い例と述べるべき点をご紹介します。また「失敗しない仕事の選び方」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
介護業界の面接では転職理由が重んじられる
どの業界であっても面接において転職理由を聞かれることはよくあります。面接官はそれなりの意図を持って質問しているわけですが、こと介護業界に関していえば転職理由は非常に重要です。
その理由は、
- 離職率が高い業界だから
- 仕事に対するやる気を計りたいから
- 相性を確認したいから
という3つです。
離職率が高い業界だから
介護業界は離職率が高いので、面接官は長く働いてくれそうな介護士を求めています。その意味では応募者がなぜ前職を辞めたのかが気になるところ。
誰もが納得できるような理由でなければ、「この人を採用してもまたすぐに辞めてしまいそう」と思われてしまいます。アルバイトの採用ならそれでも良いかもしれませんが、正社員の採用となると長期の雇用が前提。
長期の雇用が見込めないのであれば、たとえ介護系の資格を持っている応募者であっても簡単には採用してもらえないでしょう。
仕事に対するやる気を計りたいから
介護士の仕事は精神的にも体力的にも辛いことが多いもの。なおかつ、給料は世の平均以下なので、高いやる気をもった人でなければ務まりません。
転職理由や志望動機はやる気をはかる上でとても参考になりますから、介護業界の面接官は根掘り葉掘り聞いてくるはず。
そのため応募者は前職を辞めた理由と応募した理由の2点に絞りつつ、いかにやる気があるかをしっかりアピールしなければならないのです。
相性を確認したいから
相性を確認したいというのも面接官が転職理由を尋ねる理由の一つです。例えばその事業所と前職が同じ経営方針や社風であり、応募者の退職理由がそれらを嫌がったからだとすれば、それは相性が悪いということ。
当然、採用してもすぐに退職されてしまうことが懸念されるため、面接官はマイナスの評価をつけます。(もちろん、逆のパターンもあります)
その他、予定配属先の部署にいる同僚・上司との相性や主な利用者との相性なども考慮されるので、応募者のスキルややる気とは無関係に不採用となることもあるのです。
転職理由の悪い例
ご紹介した通り、面接で転職理由を聞かれるのにはそれなりの訳があり、受け答えによっては大幅に評価を落としてしまいます。
とくに以下のような転職理由は評価を落としやすいので避けるようにしてください。
- 労働時間の長さが辛かった
- 給料が少なかった
- 職場の雰囲気が悪かった
- 上司と馬が合わなかった
- 事業所の方針に納得できなかった
- 様々な事業所で経験をつみたい
その1:労働時間の長さが辛かった
介護業界では残業が当たり前のように発生します。また、夜勤のある事業所では連続勤務になることもしばしば。このような状況になるのは慢性的な人手不足が主な原因です。
経営者としても長時間労働による社員への負担増は避けたいところなのですが、サービスの質を落とすわけにもいかず、介護士の長時間労働は避けられないのです。
ほとんどの事業所において状況は同じですから、「前の事業所は労働時間が長くて…」などと述べてしまうと、面接官から「うちも長いですよ、大丈夫ですか?」と突っ込まれてしまいます。
その2:給料が少なかった
給料の少なさに不満をもって転職を考える介護士は多いようです。転職サイトなどで求人票をみると「月給23~28万円」などと幅を持たせていることがほとんどなので、「転職すれば給料があがるかも」と期待することでしょう。
そのため転職理由に給料の少ないことをあげてしまいがちですがこれは大失敗です。なぜなら、どの事業所も給料の額はほとんど同じだから。
「月給23~28万円」などと幅があるのは、複数の資格取得者や管理職経験者も採用予定だからであり、無資格(あるいは初歩的な資格のみ)の応募者に提示されるのは前職とほぼ同じ額です。
その3:職場の雰囲気が悪かった
職場の雰囲気は働き続けていく上で非常に大事です。その雰囲気に馴染めなくて退職する人も多いことでしょう。それ自体は悪いことではないのですが、面接の場で転職理由として述べるには不適切。
職場の雰囲気を転職理由にすると「コミュニケーション能力が低い」と思われてしまいます。
面接官は「どんな雰囲気にも馴染める高い適応力をもった人」を求めているので、多少の嘘になってしまったとしても、「どんな環境にも適応できます」と言い切るべきです。
その4:上司と馬が合わなかった
コミュニケーション能力という意味では、上司と良い人間関係が築けそうかどうかもチェックされます。したがって、「前職の上司が最悪な人で~」などと語ってしまうのはNG。
採用する側は「上司は選べないのだから部下が適応すべきだ」と考える傾向があります。また、上司とうまくやれない人=素直さにかける人と捉えられがち。
たとえ正当な理由があったとしても、上司に対する批判がプラス材料になることはないのです。
その5:事業所の方針に納得できなかった
一昔前までは「会社からの指示には絶対服従」が当たり前でしたが、昨今では「自分が納得できない仕事はしたくない」と考える人が増えてきました。
そのため転職理由として「事業所の方針に納得できなかった」「もっと違うやり方をした方が良いと思ったので」と述べる人も多いようです。
大変ストレートでカッコ良く聞こえますが、面接官からの評価は最悪。「扱いやすい人材が欲しい」というのが雇う側の本音なので、「自分が納得できない仕事はしたくない」と公言するような一般社員はなかなか採用してもらえません。
その6:様々な事業所で経験を積みたい
同じ介護業界であっても事業所が異なれば学べることも違ってきます。そのため複数の事業所で勤務経験をもつと高い対応力が身に付きます。介護士としての将来を考えるとそれはプラス材料なのですが、だからといって転職理由に挙げるのはおすすめしません。
なぜなら「じゃあ、うちに入社してもすぐに別のところに移るのかな?」と突っ込まれてしまうから。
なんとかその場を言い繕ったとしても、「この人、すぐに辞めそう」という印象が面接官のなかに残ってしまうのです。
良い転職理由
転職理由によっては面接官に良いイメージを与え、採用に大幅に近づくこともあります。
そんな良い転職理由とは主に次の5つです。
- 介護に対する強い想い
- 長く働きたいという意欲
- 資格を取りたいという向上心
- 通勤のしやすさ
- 企業研究から分かる前職との違い
介護に対する強い想い
介護に対する強い想いを伝えれば、「少々辛いことがあっても介護業界から離れることはなさそうだ」と面接官に思わせることができます。離職率が高い介護業界にあってこの点は非常に高ポイント。
「なぜ当社なのか?」という問いには別の回答を用意する必要がありますが、転職理由の前半部分として語る分には大変効果的です。
とくに他業者から介護業界へ転職する人には必須のアピール内容ですので、実体験などを交えて「なぜ介護に興味を持ちどれほどの情熱があるのか」を語るようにしてください。
長く働きたいという意欲
単に介護業界を目指すだけでなく、「長く働きたい」という意欲を語ることも大事です。とくに女性の場合は結婚や出産、子育ての時期にどうするつもりなのかを問われます。
世の中は長期の育休を推奨する流れになっていますが、採用する側としては「できるだけ早く仕事に復帰してほしい」というのが本音。まして「結婚を機に退職予定」と言われてしまうと採用しにくくなります。
労働者側が権利を行使するのは当然のことですが、面接の段階では採用側への配慮も必要なのです。
資格を取りたいという向上心
資格取得に前向きな応募者は採用されやすくなります。これは資格を取得した介護士の方が上質なサービスを提供できるから。
さらに介護士福祉士を一定数以上雇用すると、事業所の報酬が加算されるという制度もあります。
実際、多くの事業所が資格取得支援制度を導入していますから、「御社の資格取得支援制度はとても充実していると評判なので」という転職理由は十分に成り立つのです。
通勤のしやすさ
「通勤時間が短くなるから」「自宅から一番近い事業所なので」なども立派な転職理由となります。介護業界は労働時間が長いうえに重労働なので、通勤に時間のかかる人はすぐに転職しがち。
どの事業所も経験則からそのことに気付いているので、「前職よりも通勤しやすい」という介護士のことは積極的に採用します。
「前職では楽しく前向きに働いていましたが、資格取得にむけて少しでも勉強時間を増やしたいので通勤時間の短い御社を志望します」と述べればほぼ満点の転職理由といえるでしょう。
企業研究から分かる前職との違い
企業研究の結果から分かった前職との違いを転職理由にするのも効果的です。
例えば
- 資格取得支援などの福利厚生
- 街の評判
- 正社員の多さ
- 事業規模
- サービス内容
など。
「もっと○○してみたくてそれが可能な事業所を探していたところ、御社の求人をみつけました」と述べれば、前職を退職したことに正当な理由ができ、なおかつ志望動機にもなります。
なお、前職との違いは応募先のホームページだけでは分かりにくいので、後述する転職サイトなどを使ってできるだけ多くの情報を集めるようにしましょう。
おすすめの転職サイト
面接にたどり着くにはまずは応募先をみつけ応募しばければなりません。良い転職を成し遂げるにはこの応募先探しが重要。
できるだけ多くの求人を閲覧して条件を比較して自分に合いそうな事業所をピックアップしていくのですが、その作業にもっとも適しているのが転職サイトです。
なかでも次の3つの転職サイトは非常に評判が良く特徴的なので、すべてに登録して存分に活用してください。
<おすすめの転職サイト>
- マイナビ介護
- 介護レポ
- きらケア
マイナビ介護:株式会社マイナビ
マイナビ介護の掲載求人数は業界最多クラスの約5万件。非常に掲載数が多いので、給料や福利厚生などの条件面で事業所を比較する際にはとても便利です。
検索機能も充実しておりこだわりの条件がある人にもぴったり。掲載求人数が多いわりには比較的簡単にしぼりこみができます。
なお、マイナビ介護に登録すると専任のアドバイザーがつき、求人の紹介はもちろんのこと給与アップやキャリアプラン、産休、取るべき資格などについての相談もできます。
*引用元:https://kaigoshoku.mynavi.jp/
介護レポ:株式会社repo
介護レポは応募先の情報が多いことで有名な転職サイトです。
公式ホームページには記載されていないような細かい情報も記載されているので、企業研究を行って転職理由に結びつける際にはとても役立ちます。
とくに教育体制や資格取得支援制度、職場環境などに関する情報が充実しているので、「キャリアアップしたくて御社に応募しました」という転職理由は作りやすいはずです。
*引用元:https://www.repo.co.jp/kaigolp/
きらケア:レバレジーズメディカルケア株式会
きらケアは面接対策を行ったりアドバイザーが面接に同席してくれたりします。転職活動の面接になれている人は少ないはずなのできらケアのサポートは大変役立つことでしょう。
また、職場の雰囲気に関する情報が多く、馴染めそうかどうかを入社前に判断できるというのもメリット。
この点を重んじている人にとっては絶好の転職理由になります。
介護業界への転職活動では転職理由が大事
この記事では介護業界を志望する人のために、面接における転職理由のコツをご紹介しました。
自身の本音を語るより、面接官うけを考慮した転職理由を語るほうがはるかに効果的であり、失敗が少なくなります。
したがって、悪い転職理由と良い転職理由はそれぞれ頭にいれておくべきです。
<悪い転職理由>
- 労働時間の長さが辛かった
- 給料が少なかった
- 職場の雰囲気が悪かった
- 上司と馬が合わなかった
- 事業所の方針に納得できなかった
- 様々な事業所で経験をつみたい
<良い転職理由>
- 介護に対する強い想い
- 長く働きたいという意欲
- 資格を取りたいという向上心
- 通勤のしやすさ
- 企業研究から分かる前職との違い
上記の良い転職理由を述べれば採用される確率が高くなりますので、面接の際はぜひ実践してみてください。